FM三重『ウィークエンドカフェ』2022年3月19日放送

豆腐にみそだれをつけ、香ばしく焼いた伊賀の郷土料理、豆腐田楽。
江戸時代からこの地で親しまれてきました。
『田楽座(でんがくざ)わかや』は1892年の創業。
11代目の吉増浩志さんは、200年以上続く老舗の味を守り続けています。

レの日のごちそう『豆腐田楽』は、貴重なたんぱく源だった

江戸時代はこのあたり、外堀で堀の中だったんです。
ですからその頃は『鍵屋の辻』というところで、田楽茶屋をしていたそうです。
明治時代に入ってから、こちらに移転してきました。
『ハレの日』のご馳走だったんですね。
伊賀は海がなくて盆地に囲まれています。
いわゆるタンパク源をお味噌やお豆腐にもとめていたという歴史があります。
流通がないですからね。
文化的なことや風習を非常に大切にしていました。
朱色の田楽の箱に串を並べて、冠婚葬祭のハレの日のご馳走として、郷土料理としておよそ200年間以上、江戸時代から続いてきました。
ところで「味噌を付けた」という言葉を知っていますか?
ネガティブな意味で、人間関係で「この話に味噌をつけやがったな」みたいな感じで。
なんとなくわかります?
味噌というのは服に付いたりするとなかなか拭えないので、この味噌を焼き払う厄落としということで、お葬式のあるときなんかでも、厄落としの料理として、もてなしてきたものです。

 

ーリングストーンズのように新しいものを取り入れながら変わらぬ味を

有機栽培の大豆で作られた豆腐は串に刺され、炭火でじっくりと焼き上げます。
焼きあがっていく豆腐にまろやかな味の味噌が塗られます。

江戸時代の様式など、真っ先になくなるはずのものです。
それが未だに、特に若い女の子から『可愛い』『素敵』など、非常に新しいものとして捉えられています。
古いものではなく、もっとも新しいものとして認識する必要があります。
古く見せないよう、いつまでも魅力的に見せるにはどうしたら良いのかを、常にずっと考えて悩んでいます。
僕はずっとバンドをやっていて、『ローリング・ストーンズ』になりたかったんです。
50年間同じ音しかだしていないんですよ。
音は同じでも、空気を変えているんです。
だから第一線でがんばれるんですよ。
常に最新のプロデューサーを起用して、同じ音をいかに魅力的に見せるか。
田楽も同じです。
江戸時代の様式を、いかに新しいプロモーションをして、いかに素敵に見せるかというのを、ずっとやっています。

 

の微生物がおいしい味噌を作る

1月の終わりの大寒の日に味噌を仕込みます。
それを3年間寝かせたものを使っています。
微生物が作ってくれるんです、味噌って。
3年間寝かせても給料もいらないし、厚生年金もかかりません。
勝手に作ってくれるので、ありがたいですよ、本当に。
蔵に微生物が住み着いているんです。
麹菌と言っても何千種類もあります。
だから『手前味噌』って言うじゃないですか。
その家の、味があるんですよね。
住み着いている菌が、味噌を美味しくしてくれるんです。
減塩すると3年間持たないんです。
なので減塩はできないのですが、3年たつと、かなりまろやかになります。
減塩はしていません。
味噌のベースはそれなんですが、味は変えているんですよ。
現代人の舌は、中華も食べるしフレンチも食べるしで、『美味しい』の感覚が日々変わっているんです。
それに合わせて最先端の味付けにして、なおかつ自分が美味しいと思えるような、味付けをしています。
微妙ですが、ずっと変えています。
伝統的に春は『木の芽味噌』といって木の芽を擦り込んだ味噌。
秋は柚子味噌です。
提携している高知県の農家から柚子を仕入れて、それを柚子味噌として出しています。
年間で2パターン変えています。

 

ロナ禍も地元のみなさんが支えてくれた

コロナ禍で三重県の地元の人には本当にお世話になりました。
一時期は売上が9割減。
そんな、どうしたらよいのかなと思っていたときに、地元の人がわざわざ訪ねてきて、「今日はお前の顔を見に来たんや、お店を開けてくれてありがとう」と言ってくれて、本当に三重県の人からはどれだけ勇気をいただいたかわからないですね。
おかげさまで、コロナの前は毎日行列で調子に乗っていたので、コロナがあって本当にいろいろ考えることになりました。
このお店の重要性、地域への貢献もあるので、何か地域の皆さんに貢献できればということで、いろいろなことを見直す機会となりました。
わかやのコンセプトを保ちつつ、料理をもっと充実させていきたいですね。
今は、伊賀肉のステーキコースをお出ししています。
ウチのシェフが厳選した伊賀肉を田楽と合わせて。
そうやって、どんどん組み合わせてコラボレーションしていく中で、『メイドイン伊賀』『メイドイン三重』など、県内の海と山のものをどんどん提案し、美食の三重県を日本一にしたいと思っています。
三重県は美味しいものばかりですからね。

まさにブルースです。
伊賀に帰ってきて、魂が震えました。
嬉しくて。
それほど何か、伊賀は自分にとっては特別な場所で、伊賀に住んでいることを誇りに思っています。