FM三重「ウィークエンドカフェ」2022年6月4日放送

志摩の自然の力を活かし、サトウキビを作る。
今回は志摩市『よこやま株式会社』の西村悦子さんと西村昌人さんがお客様。
自然農法にこだわって、手間ひまかけた農産物と加工品を作っています。

業経験はないけれど10年前からサトウキビを作っている

悦子さん 10年ほど前からサトウキビを栽培しています。
それを黒糖蜜に加工して『情熱のさとうきびシロップ』として販売しています。
あたたかい地方の沖縄や九州の離島などが本場ですが、三重県の志摩地方あたりでも60年70年前までは、サトウキビを畑の隅っこで、子どもがおやつとして食べるような感じで作られていました。
その話を年配の方から聞き、温暖化も進んでいることだし、ちょっと作ってみたいよね、ということで10年ほど前にスタートしたのがはじまりです。
農業経験自体が主人と私、共にまったくありませんでした。
主人の父親がちょうど10年ほど前に亡くなり、農地を相続したことがきっかけとなりました。
農地があると何か作らないといけないかなあ、と考え、農業経験がない私たちが葉野菜などを作ると、とても見栄えが悪いんですよね。
ましてや自分たちも食べるものですから、農薬や化学肥料も使いたくありませんでした。
そうすると結局、葉野菜だと無残なものが出来上がるので、人と比べても見劣りしないようなもの、と二人で考えて、サトウキビに挑戦しよう、一回作ってみようとなりました。

 

℃以下になるときは、畑に毛布を敷いて育ててきた

昌人さん サトウキビは結構強いものなんです。
1年目はどんな風に育つのか知りたかったので、試しに植えてみました。
やってみてわかったのが、力強い植物であり、放任しても大きくなっていくということ。
あれにはビックリしました。
すべて独学です。
伊勢志摩であっても0℃以下になることも多いですから、冬の越し方が最初の難しさでしたね。
石垣島や沖縄や奄美は、16℃以下になることがほとんどありません。
伊勢志摩地域は0℃以下になる日が何日か続きます。
サトウキビは一度植えると5年位は同じ株で出てきます。
ですから一度植えれば、5年間は植える必要はないわけです。
それを継続的にしていこうと考え、次の年度はどうやって大きくしていこうかを考えることから、サトウキビを切り落とす部分を利用して、畑全体に毛布をかけるように、保温材の代わりにして育てることを最初に思いつきました。
それがうまくいったので、伊勢志摩にサトウキビを復活させることができるのでは…という考えに至りました。

 

年目にようやく情熱のシロップが完成した

悦子さん サトウキビはとても硬いものなので、齧ってチューチュー吸うという利用法しかないんですよ。
年配のお客さんも見えるので、懐かしさで買っていただくこともあります。
ママさんたちは子どもに食べさせようと購入してくれたりしますが、1〜2回買うともうその後はそんなに必要ないようなんです。
ちょこちょこ売れ残りが出るので、このまま作っていっていいのかなと思うようになりました。
加工するにも量が足りないので、2年目に栽培する量を増やして。
売れないけどどうしよう、やめようかな、どうしよう…と考えつつもう1年がんばって作って、3年目にようやく絞って加工できる量になってきました。
サトウキビを絞る専用の機械を買って、加工してみようかなと。
作り方も独学とネットで調べたりして、食用石灰を入れない方法でシロップを作ろうとなりました。
普通は黒糖を作るときに食用石灰というのをジュースに入れて、それで黒糖に固めてゆきます。
しかし、うちの畑は農薬や化学肥料を使わず、有機肥料とサトウキビを絞ったカスを入れて土作りをしているので、極力何も加えたくないとの思いから、食用石灰を入ませんでした。
そうすると固まらないんですよね。
そこでシロップを作って、これを販売したいと。
みなさんが買ってくださるかどうかわかりませんでしたが、3年目から商品にしました。
最近ではサトウキビシロップを使ったプリンも完成しました。
シロップを使ったレシピ集は、地元の高校生たちにも協力してもらっています。

 

作放棄地のこと、低炭素社会のこと、志摩の丁寧な暮らしを大切に

昌人さん サトウキビは『C4植物』と呼ばれていまして、二酸化炭素の吸収率が高いんですよ。
葉っぱが大きくて長い。
低炭素社会と言われる昨今の社会の中で、『増やすことによって地球に優しくなる』ということで、耕作放棄地をなくしていくのも良いことだと思います。
日本の食品の自給率を上げていくことも、残された僕たちがやっていかなければならないことだと思います。

悦子さん 志摩市で農業をされている方も高齢化が進んでいて、担い手も少なくなってきています。
志摩は特にそうなんですが、一次産業に携わっている方は丁寧な生活をされています。
加工されている方も含めて、手作業で・手仕事で…という丁寧な仕事をされていると思います。
これからもそういう風にやっていきたいと思っています。

糖分というのは幸せな気分になりますよね。
うちのシロップはわりとガツンと甘くて濃厚でコクがあります。
少し摂って、幸せで楽しい毎日を過ごしていただきたいなと思います。