FM三重「ウィークエンドカフェ」2022年6月18日放送

ずっと大切に、永く使いたいと思う服を作る。
今回は、いなべ市にアトリエを構える『toi designs(とわでさいん)』の加藤友美さんがお客様です。
小さなころから洋服を作るのが大好きな女の子でした。

ジロックフェスティバルから環境のことを考えるようになった

お料理を作っていてもそうですが、何をしていても使わない部分が出てくるじゃないですか。
服を作っていると、布の使わない部分がとても溜まります。
若いときは『作る』という発散する制作が多かったのでひたすら作っていました。
私は音楽が好きなので、FUJI ROCK FESTIVALの環境ボランティアというゴミの分別促進するボランティアに20歳くらいのときに参加したときに、初めて環境問題に直面しました。
ゴミがこれだけ出るのだから、再生できるものはしないと地球は1個しかありません。
人がゴミを生み出した、発明したと言われていて人がいる限りゴミは増え続けるので、なんらかの形で減らす心がけを人間がしないと…との思いから、自分の作る服から出た要らない部分をなんとか生かさなくてはいけない、と思ったのが始まりです。

 

・地球博のパビリオンで麻のすばらしさを知る

FUJI ROCKと『愛・地球博』が同じ時期に行われていて、地球博でも環境問題のことをいろいろ取り上げたパビリオンがありました。
そこのスタッフのお兄さんに、「服を作っているならこの本を読むといいよ」と言われて、ヘンプ…麻、大麻(おおあさ)の素材の本を勧めてもらいました。
それで、麻という素材が石油の代わりになると知って、繊維にもなるしオイルとして使うこともできると。
そこからいろいろあって、ヘンプを素材とした服を作ろうとなりました。
そうしたら、『ヘンプショップ』が名古屋の大須にあると知り、これまでしていたアルバイトを辞めて、私働きます!と、扉を叩きました。
しかしあいにく募集をしておらず、しょんぼり帰りましたが、そのあといろいろあり、自分が担当できることになりました。
そこで、店長になって、麻素材から始まる
麻は農薬なしで育つのですが、もともと農薬を使わないオーガニックコットンも扱っていたので、そこの知識が高まり、自分が作る服もオーガニックコットンや、もともと農薬を使わない麻のいろいろを扱うようになりました。
その後に作り方はどうなんだろうと考えました。
シャツもズボンも曲線でできていて、そうすると布の要らない部分がたくさん出るんですよ。
四角を並べると何もあまりが出ません。
四角のパーツを集めた服を『四角衣服』と呼んでいます。
四角いパーツばかり。
そういった直線裁ちをベースに考えると、布を捨てるところが少ないということが、第1段階です。

 

め直したり、リメイクした服を次の人が着る。旅する洋服

自分は基本的にアナログな動きが好きなので、職人の手染めや、人がミシンを踏んで作ったもので最小限できることをしています。
それが四角衣服を作ることや、すべて天然素材で作れば、土に戻るよねとか。
また、うちの服を愛着を持って着るとか。
うちの服は回収もしています。
回収して、何らかのアレンジをすることで一点物になったものをまた、お客様にお渡しして。
旅する服、と呼んでいます。
持ち主がどんどん変わっていって、別の人がその服に愛情を持って一緒に暮らして、また戻ってきたら、「これはあのときにつくった服だ!」とか自分も楽しいです。
こんな風になったんだね、おかえり…と、迎えて、また行ってらっしゃいと旅に出てもらって。
ホームですね。
繕いにどんどん力を入れたいですね。
新しいものをどんどん生み出すというよりは、できた服をもう一回迎えて直して…そっちがワクワクしますね。
新しいものもワクワクしますけど。

 

山のべんがら染めはこだわりがたくさん

岡山出身の方に大阪で出会いました。
自分の出身地で『べんがら染め』という、世界で一番最初に赤色を染めた村があるよ、と紹介してもらいました。
すぐに行ってきました。
山の中をずっと行くと、赤いものが見えてくるんです。
ここだ!と。
町というか集落の壁も赤いんです。
そこで気の合う職人さんに出会うことができました。
今は女性が一人で染めていてくださっています。
べんがら…土とか鉱物から染まる色です。
それを抽出して、染料を作って染めています。
その職人さんは手仕事しているので、手のエネルギーみたいなものを大切にしていて、ウチの服を染めるときは、自分のお家からちょっと離れたところの湧き水をわざわざ汲みに行って、それで染めてくださいます。
最後は神棚みたいな場所に染め上がったものを置いてから、私たちのもとに送ってくださっています。
それもやはり、そのお話をお客さんにお伝えします。
珍しい染め方で染めてくださる方がいるんだよ、岡山にも行ってみてね、って。
そういう話、全部お話したくなっちゃうんです。
説明の多い服屋さんになっちゃっていますね。

いただいている、という気持ちが大事。
いただいて、プラス人が何かを加工して、私たちの暮らしが成り立っているということに支えられながら、今も生きていますね。