FM三重「ウィークエンドカフェ」2022年7月30日放送

JR宮川駅。
駅前に『えほんと童話の店 みやがわ書店』があります。
オープンは今から65年前。
絵本の専門店になって25年になりました。
今回は、みやがわ書店の店長 橋村孝子さんがお客様です。
みやがわ書店には、エリック・カールさん、かこさとしさん、
まついのりこさんなど多くの絵本作家が訪れています。
いろんな絵本に触れたくて、おはなし会にはたくさんの子供たちが集まってきます。

癌になったことがきっかけに絵本専門店にした

私が59歳から60歳になる頃に癌になったんです。
それまで、絵本の専門店をするという夢を持っていました。
でも、子供の仕送りがあるから、本意ではない週刊誌や本も販売していました。
ちょうど子どもたちが社会人になって巣立ったときに癌になったのがきっかけで、今、自分の夢を実現しないとと思って、テナントに出ていたのに、思い切って自分の家に来ました。

両親が開いたお店をギャラリーにしてあったので、ここで絵本の専門店をオープンすることにしました。
名古屋から戻ってきたけど、名古屋に勉強に行ったり、絵本を私に教えてくれた立派な先輩たちがいたので。
その一人が『メルヘンハウス』の三輪さんでした。
だから、名古屋に行くということは、絵本の勉強をしに行くことと、自分を鍛えるために通っていました。
せめて5年でもできたら良いと思っていたのが、気づいたら25年もたつんです。
60歳ではじめて、今、85歳です。

 

争を体験しているから平和を伝える本がとても大切

私が今一番勧めている絵本は、『ごんぎつね』を描いている黒井健さんが『すずばあちゃんのおくりもの』という本を描いているんです。
発売されたばかりです。
このばあさんは戦争を体験していて、近所の人たちに優しくいろいろなつながりがあるんだけど、戦争のことが心の中に残っているんです。
そういう時代が来たらいけないということを周りの子どもたちに話していきます。
すずばあちゃんの生活そのものが平和なんです。
私自身、戦争を体験しているので、平和を伝える本をどうしてもすすめます。
あと、これご存知ですか、『ベイビーレボリューション』という絵本。
いま地球上で起こっているけども、世界中の赤ちゃんがハイハイしているんですね。
この絵本の素敵なところは、黒人も白人も黄色人種もいるのですが、小さな赤ちゃんがハイハイしてどこに行くのかな、と思ったら、青い空の下を這う、30万人のベイビー。
それがどんどん増えて、3000万人とかに増えていくんです。
どこに行くのかと思ったら、戦場に行くんです。
赤ちゃんがハイハイしていく、30億人のベイビーがみんなの憎しみを消していくんです。
ベイビーレボリューション。
たった一人のベイビーが。
みんなの憎しみを消していく・・・大人にこの文章を読んでほしいなと思っています。
こういう本は滅多に出ません。
赤ちゃんから訴えているんですね。

 

い本を読むとその年齢なりに想像を働かす

本当に良い本を読むと、0歳の子どもでもジッと見てくれるんですね。
訳わからなくても絵を見て、大人の言葉を聞きながら、その年齢なりの想像を働かせます。
だから絶対に赤ちゃんでも絵本は言葉を聞いて、その子なりの想像ができるから、心の栄養になります。
私は、絵本を楽しむための6か条を作っています。
一番はじめに1つは、子どもは絵本の絵を見て喜びます。
だから何回でも同じ本を詠んでほしいと言ってきます。
私が一番申し訳ないと思ったのは、昔息子に、「また今日もこれ?」と言ってしまったこと。
「また今日もこれ」ではなく、「今日も、これを読んでほしい」だと。
今日はどこの絵を探検しようか。
この絵とこの絵はすごく僕好きなんだ。
・・・そんな思いが子どもにはあるのに、大人はそういうことを知らずに、「今日もこれなの?別のにしようよ」と言っちゃうんですね。
本を読んでいる最中に、感想を聞いたり。
自分で読めるでしょう、もう自分で読みなさいよ。
・・・などと、いろいろ親は条件をつけて、なるべく自分で早く読ませようとするんですけど、そうじゃないんですね。
親が読んでくれる絵本の時間は、子どもにとっては至福の時間なんですね。
一番幸せな時間。
その時間を、1日の最後の寝る前でも良いから、ちょっと読んであげると心が穏やかになって眠れるのに、「また今日もこれなの?」「時間割合わせてからね」など、いろいろな条件をつけてからでないと読んであげない親でした。
それはいけないことだったのね。
のちのちわかって、今はお母さんたちに、無償の愛で無条件に読んであげてくださいと話しています。

 

本は個の感性を磨く。紙芝居は共感の世界

絵本を開くでしょ。
一人で読んでいるのは『個』の世界です。
聞き手も読み手もみんなここに入ってくるでしょう。
だから絵本は『個』の感性を磨くということ。
これは絵本作家のまついのりこさんに教えてもらいました。
対して紙芝居は3面開きの舞台があって、作品が中に入るでしょう。
抜いて演じて、お客さんが対面になるでしょう。
これは『共感』の世界なんです。
だから紙芝居は舞台があって、作品を抜いて中に入れ、抜いては中に入れ、そして演じ手がこちらにいる。
対面で観客と話し合っていく。
これをひっくるめて『共感の世界』。
『個の世界』と『共感の世界』があって初めて、両輪がうまく行けば心の発達にもなり、感性の発達にもなり、いろいろな発達につながっていきます。
ですから私は引き続き、絵本と紙芝居の両輪で、このお店で子どもたちに伝えていきたいです。
年も年ですし、あまり遠くには行けませんが、このお店の中でできることは、やっぱりやっていきたいですね。
紙芝居と絵本、両輪だよ。
両輪をうまく回していくためには軸がいりますよね。
軸が錆びたら、錆びた内容しか届けられませんから、軸となる自分が光っていないといけなんですよ。
大人はやっぱりちゃんと心を磨いてほしいですね。
磨き方としては、今度のいわさきちひろの原画展とか、お芝居とか、クラシックとか、そういうのですね、
磨いて、常に光っているものにしておきたいです。
それが両輪をうまく回して、子どもたちに良い文化を届けられるのではないかな、と位置づけています。

絵本とは、心の栄養になるものです。
平和でないと心の栄養は取れない、ということを言いたいですね。