三重テレビ『ゲンキみえ生き活きレポート』2022年9月18日

『あかりプロジェクト桑名』はろうそくを使って阪神淡路大震災や東日本大震災で追悼のあかりを提供
2014年から『伊勢湾台風のつどい』を襲来した9月26日に桑名市にある城南河川防災ステーションで開催しています!
未曾有の大災害となった伊勢湾台風を語り継いで行こうと、『伊勢湾台風語り部の会』も組織。
伊勢湾台風の経験者が桑名市内の小学校などに出向き、災害の大きさや防災への意識を語り継いでいます!
63年目を迎える伊勢湾台風。伊勢湾台風の不忘碑や殉難の碑も訪ね、災害を語り継ぎ、備えていく取り組みをレポートします!

左手には揖斐川、右側には町屋川がある場所。
この田畑が広がっているこの地で、伊勢湾台風時にはどのような被害があったのでしょうか。

「一面、湖というか水ばかりでした。
家が数軒散在しているような状態でしたけど、当時の家で残っているのはあの三角屋根の家です」

 

「あの窓の上ぐらいまで水が来ました。
みんなであの二階へ逃げられて助かったというような感じです」

 

と、語るのは、『伊勢湾台風語り部の会』の伊藤淸文さん。
今から63年前、この地を襲った伊勢湾台風を10歳の時に体験しました。

「当時の思い出としては一面、湖だったのと、一晩、水の中で過ごしたっていうのと、畳の上に乗って首だけ出して助かったかなという感じでしたね」

 

1959年9月26日。
和歌山県の潮岬(しおのみさき)に上陸した台風15号は、紀伊半島から東海地方を中心に甚大な被害をもたらしました。
死者・行方不明者の数はおよそ5000人。
明治以降、最大級の自然災害となりました。

 

『あかりプロジェクト桑名』代表の川瀬みち代さん。

「『あかりプロジェクト桑名』という団体は、ろうそくを作っている団体です。
阪神淡路大震災、そしてまた東日本大震災の方へ追悼用としてろうそくを提供させていただいている中で、63年前に起こった大災害の伊勢湾台風というのを次世代の子どもたちにつなげるということを、これからやっていかなくてはいけないと思い、『伊勢湾台風のつどい』を開催しています」

 

被災された人の気持は同じ・・・。
被害者やその家族の少しでも励みになるように・・・。
そして防災のためにも、忘れず、次の世代へと伝えていくために・・・。
『あかりプロジェクト桑名』のみなさんの取組のひとつが、伊勢湾台風がこの地を襲った9月26日に開催される『伊勢湾台風のつどい』。
想いをつづったコップや竹に明かりを灯し、伊勢湾台風で亡くなった人を追悼。未来へとつなぎます。

 

夏休み中の8月、『桑名市福祉センター』で学童保育の子ども達を対象に、伊勢湾台風を知る講座が行われました。

まずは伊勢湾台風の怖さ、被害の大きさを映像で知ってもらいます。
自分たちが住んでいる町の様子なだけに、子どもたちも真剣に見入っています。

 

『伊勢湾台風語り部の会』石川雅己さんによる、伊勢湾台風の体験談。
石川さんは被災当時、小学校4年生でした。

「その日は一旦登校しましたが、大きな台風がくるというので家に帰されました。
雨の音が強くなってきましたが、子どもですから寝ていました。
すると突然枕元で、『水が来たよ!』と母の声が。
母に連れられて近所の家に逃げていく途中、私の姉が荷物を手放してしまい取りに行こうとしました。
しかし、横の田んぼの水がすでに深くなっていたため、母は取りに行こうとする姉を止めました。
そのまま行っていたら、流されてしまっていたかもしれません…」

 

語り部石川さんの話を聞いたあと、感じたこと、伊勢湾台風で被害にあった人たちへの想いをプラカップに描きます。
これらは、9月26日開催の伊勢湾台風追悼イベントで灯される予定です。

 

伊勢湾台風は知っていましたか?

「知りませんでした。
今回、初めて知りました。
『台風で死んでしまった人たちが天国で幸せに暮らしていますように』と書きました」

「改めて、備えと準備が大事だなと思いました」

 

語り部の伊藤さんに案内してもらったのは、伊勢湾台風の『不忘碑』。

「桑名市全体で199名方が亡くなられて、2人まだ行方不明だと言われています。
その人たちの不忘碑として昭和37年度に建立されました。
毎年9月の26日には催しが行われています。
催しの際に遺族が集まりますが、やはり台風の話というのは、口が重いというか…。
みなさんそれぞれいろいろな思いがあるようです」

伊藤さんもこれまで伊勢湾台風のことを語らずに生きてきたといいます。

「当日、うちに私より1歳ぐらい年下の子が遊びに来ていました。
しかし台風がくるというので帰らせました。
あくる朝、おくどさん(かまど)の中に、その子が被っていた黄色い帽子が見えました。
あの日、帰らせたほうが良かったのか、家にいたほうが助かったのか…。
いずれにしても、その子の家は、一家全滅されました。
それがトラウマとなり、語り部も辞退というか、あんまり人にあまり話さずにこれまで生きてきました」

 

伊勢湾岸道がすぐ近くに見える場所に、伊勢湾台風『殉難の碑』があります。

「『導流堤』と言われるのが、海岸、木曽川と町屋川の間に造られていました。
その工事に携わっていた、当時の建設省、今の国土交通省の職員の方がここに常駐していたのですが、職員とご家族も含めて12名が亡くなられました」

 

「お母さんがご遺体で発見された時に、自分の体を手で囲むようにしていました。
中には子どもはいませんでしたが、すぐ近くに一緒に発見されたので、子どもを守るためにこの体勢を崩さなかったと言われています」

 

この特徴的な形には、そんな意味が込められています。

「まあ大丈夫だろうと、堤防が切れるわけがない。
そういった考えから、行政も避難誘導をしなかったのかもしれません。
しかし結局は被害が大きくなり、伊勢湾台風全体として5098人が亡くなりました。
これからは堤防も何もかも過信せず、まず逃げるということをみなさんに、お伝えしたいと思っています」

語り継ぎ、忘れず、備える。
それがあかりプロジェクト桑名の取り組みです。

 

「伊勢湾台風から55年の時に初めて『伊勢湾台風のつどい』を開催した時に、小学校6年生でここへ来てくれた子たちが、ここのこの場所で竹にメッセージを入れたりしました。
今度私たちがやって10回目の時に、当時のメッセージを書いた子供たちを主にして出てきてもらって、この子たちに担ってもらう伊勢湾台風の集いをやりたいと思っています。 
来年こそ、本当にしっかりと形に変えてでもやりたいと思っています」

と、川瀬さん。

『伊勢湾台風のつどい』は、例年と同じ9月26日に開催します。

 

伊勢湾台風のつどい 語りつなごう 伊勢湾台風63
開催日 2022年9月26日 
開催時間 18:00~20:00
開催場所 揖斐川城南河川防災ステーション 
※参加費無料
実行委員会事務局 090-6570-6580