FM三重『ウィークエンドカフェ』2022年10月1日放送

櫛田川の伏流水がうまい酒を造る。
今回は、明和町にある清酒 伊勢旭の醸造元 旭酒造株式会社の西山利之さんがお客さまです。
創業は明治8年、伝統を守り地酒を作り続けています。

米大吟醸は毎年1月から作っている

西山 9月から10月にかけて酒米ができます。
それからだいたい12月〜2月頃…私どもでは1月から『特定名称酒』という純米大吟醸を作っております。
なぜ1月かというと酒の『寒造り』と言いまして、一番寒いときに作るというのが基本でして。
それと、気温が低いと作りやすいんです。
だいたい酒母が発行する音頭は10℃前後です。
外気温が低くないとうまく発酵しません。
酒米を蒸すと100℃以上になります。
それを5℃まで下げないといけないんです。
ということは外気温が低くて、風を当ててお米を冷やさないと5℃まで落ちません。
そうなると1月2月が一番良い時期ですね。

 

植え、仕込みの手伝いを学生がしている。御田植祭などのお祭も神道学科の学生が行っている

旭酒造では『神都の祈り』というお酒も造っています。
これは、明和町と皇学館大学、そして旭酒造が連携して作っているお酒。
このプロジェクトを担当している皇学館大学 千田良仁教授に紹介していただきます。

千田 お米作り、そこからのお酒造り。
そしてできたお酒をみんなで販売しようということで、大学と酒蔵、農家さん、そして明和町の産学官で連携して、地元明和町の日本酒を作ろう、というプロジェクトが立ち上がりました。
明和町にある唯一の酒蔵が旭酒造ということで、こちらで作ってもらおうとお願いをしたところ、社長も喜んでプロジェクトに参加してくれました。
今年で始まってから6年目になります。
田植えから稲刈りもお手伝いします。
お米ができてから1月2月にお酒の仕込みが始まりますが、その仕込みということで、蒸したお米をみんなで冷やして発酵させるお手伝いをします。
あと、特徴的なのは、うちの大学は神道の大学なので、神主さんを目指している学生も多くいます。
そういった学生に参加してもらって、お祭りをやってもらっています。
田植えのときは『御田植祭』を、稲刈りのときは『抜き穂祭』をしたり、お酒を仕込むときにもお祭りをしたりします。
出来上がったら『神嘗祭』…1年に4回お祭りをしています。
毎年地元で穫れた『神の穂』というお米を使って、地元の旭酒造さんに作ってもらう、まさに地元100%でできたお酒を、少量ですが、毎年1500本くらい作っていただいております。

 

ができるまで自然の力、いろいろな人の協力があることを知る

千田 一つのお酒ができるまで、いろいろな人の協力や自然の力などがあってできるということで、ありがたみも学べます。
自分も米作りやお酒づくりに関わることで、できたお酒に愛着が湧くので、それを一生懸命みんなで飲んだり販売したりをしてくれています。
大学1年生のときからプロジェクトに関わっている子は1年生のときは未成年なので飲めませんが、自分たちが酒造りに関わった酒を、成人式に初めて飲む日本酒ということで、思い出や印象に残るそうです。
そういうのを求めて、がんばってくれている学生もいます。
毎年お酒を作ってきましたが、コロナがはじまってからお酒の販売も落ち込んだり、学生もなかなか活動ができないので、そういう状況でもなにかできないかということで、海外の日本酒のコンクールや品評会に出品させてもらっています。
そうしたら、毎回けっこうプラチナ賞とかゴールドとか立て続けに獲りまして。
これもひとえに旭酒造さんの技術が素晴らしいということと、みんなで祈り倒して作っていることの効果があるんじゃないかな、と思っています(笑)

 

口よりも米の味がする酒が求められている

西山 海外の人たちにも認めてもらった『神都の祈り』。
いろいろな賞をもらったので、それをもとに、インバウンド、海外進出みたいなものをしていきたいと思っています。
『神都の祈り』のプロジェクトで、飲んでもらって販売につながるようにフランスとイギリスに行ってきました。
まだまだ日本酒に対してあまり詳しい知識がないので、『日本食+日本酒』という形で、どんどん売り込んでいけるんじゃないかな、と思います。
ヨーロッパはワインが主流ですよね。
ですから、辛口のお酒が良いかなと思い、ヨーロッパに行ったところ、全然違いました。
辛いのはワインで充分だから、お米の味がするお酒を飲みたいと。
現地に行って、それがよくわかりました。
味口の濃いお酒、ウイスキーもそうですけど、そっち系のほうが向こうの方は喜ばれるようです。
というのが、よくわかりました。
それから日本酒のお酒の意義のようなものを『神都の祈り』にかけて、進めていきたいと思います。

いまこのコロナの時代で、なかなかお酒が動きません。
そこでいろいろアイディアを出しながら、お酒の販売や普及を進めていきたいと思っています。