FM三重『ウィークエンドカフェ』2022年10月15日放送

伊勢、宇治山田駅近くの外宮いざない通り。
ここに創業73年の靴屋さん『はしもと靴店』があります。
上級シューフィッターとしてお客様の足に合った靴を提案しているのが店主の橋本薫さん。
歩くことが楽しくなる靴が並んでいます。

ラフィックデザイナーからシューフィッターへ

私はまず、グラフィックデザインの勉強を東京でしていまして、ある日母に、「ちょっと手伝ってよ」と言われて、東京と三重を行ったり来たりをするようになりました。
そうなると、どんどん靴の奥深さに気付かされて、どっちつかずではいけないということで、靴の方をしっかりやってみようと思い、伊勢に帰ってきました。
勉強としては、まず3年間、靴のことを学んでから『シューフィッター』の資格を取る権利を得ることができます。
それでまず『シューフィッター』の資格を取り、次に『上級シューフィッター』の資格をまた取りました。
シューフィッターが何をするかというと、まず、靴を合わせることをします。
自分の足がどうなっているか、何cmなのかも、けっこうみなさんあやふやだったりするんですよ。
そういうときに、そのまま靴を履いてしまい、それが原因で身体を壊してしまったり、姿勢が悪くなったり、本当に調子が悪くなる方を見る機会が多くありました。
足を合わせるということは、割にみなさん、簡単なことと思っていて、学んだことなどありませんよね。
例えば子どもの頃に「かかとトントン」とか、そういうくらいじゃないですかね。
しっかり考えると、どういうふうにして履いていたかを理解していなかったと思います。
自分自身も、ちょっとあやふやな状態だったところがあるので、『シューフィッター』という学べる場があると知りまして、資格をとっていくうちに、足と靴は奥が深いな、と。
今も学んでいる状態です。
みなさんに快適な靴で歩いてほしいと思いながら、日々精進しています。

 

幅がせまいとこけやすい。大きすぎる靴はいい歩幅であるけない

歩幅が小さなことが転びやすい原因の一つなんです。
歩幅は肩幅くらい開けて歩いていただけると転びにくい歩き方ができます。
しかし靴が大きすぎたりすると、なかなか良い歩幅で歩くことができません。
ちょっと怖くなっちゃうので、つま先だけでシュシュシュと歩いている方もたくさんいらっしゃいます。
それって、見た感じも健康そうに見えません。
見た目ってけっこう健康に比例しているんですよね。
ですから、最近姿勢が悪くなったとか、ちょっと足が重いとか足の筋が痛いと感じたら、靴を疑ってみるのも一つのポイントかもしれません。
そうすると『未病』といわれる、頭が重いとか方が凝ったなどの、何気ない調子の悪さが改善されることもあります。
そのくらい靴って大切なので、みなさんに良い靴を選んでいただきたいなと思います。

 

は筋肉。きちんと履けばくっと締まる、いい加減だとゆるゆる

靴というのは『筋肉』だと思っていただきたいです。
例えば、踵をトントンとして、紐を結んでキチッと履いている状態だと、クッと締まった感じになりますよね。
でも反対に、まあいいかと思って、ゆる〜くタラ〜ンと履いていると、筋肉が弱い靴、そんなイメージになります。
なので、履くときに気にしていただきたいのは、この靴ちゃんと筋肉あるかな、ということ。
そういう見方をしてもらうといいかもしれません。
間違っていると筋肉トロトロで歩くことになります。
筋肉トロトロで、自分の足が疲れているときに緩めて歩いちゃうと、余計にトロトロになって疲れてしまうんです。
だから足が疲れているときは、意識して締まった靴を履くと、ちょっと疲れが和らぎます。
みなさん元気なときは締まった靴、疲れたときはゆるい靴と反対のことをしてしまいます。
が、足の大きさと靴を見ていただいて、しっかり『筋肉のある靴』を履いてほしいですね。

 

先はゆったり、甲の部分はしっかりと紐を締める

なんとなくで靴を選んでいらっしゃる方が非常に多いです。
たとえば、中敷きを取ることができる靴があったら、一度取ってみて、その上に立ってみてください。
靴屋さんは嫌がるかもしれませんが、でも、自分の大切な相棒を探すことに必要なことなので。
中敷きを踏んでみて、踵をちゃんと合わせて、自分の指先が人差し指1本分くらい開いているくらいの大きさのものを選んでもらいたいです。
もちろん、甲の部分がきつすぎるとしんどいと思います。
でも、きつい靴をオススメするわけではないのですが、指先はゆったりしていつつ、甲の部分はしっかり締めてあげないと、アーチが崩れやすくなっちゃうんです。
足は3つのアーチからできていて、そのアーチが崩れることで、足の不具合がとても出やすくなります。
アーチをしっかり締めることによって、合った靴を履いていただくと、アーチが立ち上がります。
アーチは土踏まずと、足の外側、それから親指の大きな骨の部分と小指の小指球を結ぶ、横のアーチがあります。
そこがしっかりとアーチ状になっていると、足がしっかり前に進むことができます。
しかし、それが崩れていくと外反母趾やタコができたり、角質が多くなったりします。
それはちょっとアーチのズレが出てきている方が多かったりします。
靴をしっかり足に合わせるということは、とても大きなことで、足を守りながら自分の足を仕上げることで、身体が良いことをいっぱい起こしてくれるので、それを楽しみにしてください。

最初の土台である足…家でいう『基礎』ですよね。
自分の体をちゃんと立てる、そういう意味でも、靴をきちんと考えてほしいと思います。

『素敵な靴は、あなたを素敵な場所に連れていってくれる』
イタリアのことわざです。