FM三重「ウィークエンドカフェ」2012年10月6日放送

今回のお客様は、『南島豊漁太鼓』のリーダー、小山康成さん。
『南島豊漁太鼓』は平成4年、町の活性化を目的として結成されました。
そして、太鼓が大好きなメンバー30人が集まりました。
年齢はバラバラ。経験者も少ない・・・。
長野県の御諏訪太鼓に基礎を学び、太鼓でのオーケストラを作った人と言われている小口大八(おぐちだいはち)先生から指導を受けました。
ここから南島豊漁太鼓が始まったのです。

■太鼓を始めたきっかけと、楽器としての太鼓

僕は音楽が好きで、中・高・大と吹奏楽部でラッパを吹いていたんです。
そして卒業してこっちに帰って来て、音楽に携わりたいなあと思った時に、南島には何も音楽がなかったんですよ。
祭りのお囃子さえも。

当時はフォークが流行っていた時期で、友人みんなでバンドを結成し、僕はドラムを叩けたので、ドラムを担当したんです。
そうしたら、ちょうどその頃、和太鼓のチームを結成するという話があったので、それに飛びついたわけです。

笛などの管楽器は、最初から音を出すのは難しいでしょう。
でも太鼓はとりあえず、バチを持って打てば、音が鳴りますよね。
一番簡単な楽器なんです。

まずは太鼓とバチに慣れるため、最初は太鼓の打ち方を習いました。
手首を必ず上手に使うことと、腱鞘炎にならないような叩き方。
手首を上手に使うと、とても太鼓も良い音がするんですよ!

最初は、和太鼓といえば叩き方などはお構いなしで、がむしゃらに叩くというイメージがあったんですが、全然違うんですね。
しかし練習すると、血豆、水ぶくれ、皮がめくれる・・・そんなことがすごく続きました。
そうやって続けるうちに、
「小指の近くに水ぶくれが出来る人は、だいぶ上手になってきた証拠だよ」
と言われたのを覚えています。
今思うと、本当かどうかわかりませんが(笑)


■1000人大鼓から『南島豊漁大鼓』へ

『南島豊漁太鼓』のメンバーがまず目指したのが『まつり博三重』への出演でした。
『林英哲1000人太鼓』のメンバーに入り、本当にいろんなことを学びました。

1000人が集まるって本当にスゴイですけど、練習の時はそんなに集まらないんですよ。
やっぱり、働いている人がほとんどなので、なかなかタイミングも合わないですしね。
なので各チームの代表数名が集まってくるんですけども、その時はうまくまとまるんです。

しかしいざ本番の前になってきて、みんなで集まってリハーサルをしたら、大変でした。
1000人もいると端から端までで、音がずれてしまうんですね。
視覚では一緒に見えるんだけど、音は遅れて聞こえるので、とても苦労していました。

正直『まつり博三重』が終わったら解散するかな、と思ったんですが、メンバー同士の交流、他のチームとの交流関係ができてきて、深みにハマった感じですね(笑)

『南島豊漁大鼓』を始めてから、あちこちで色々と経験をして、地元はもちろん町外からも声をかけていただき、太鼓を発表する場を作ってもらえて本当にありがたいです。

しかし、「なんや、10年前と何も変わってないな」と思われても悲しいですよね。
じゃあ太鼓の何を突き詰めて行くのかというと、曲の持っている『曲想』というのを、見ている人にも少しでもわかってもらえるようにすることだと思うんです。
そのために叩き方とか、所作とかを勉強しています。

あるいは小口先生から作っていただいたオリジナル曲を、
「ここでは声をあげよう」
「ここでは手を挙げよう」
など、少しづつアレンジをしたり。

先程も触れた『曲想』についてですが。
例えば小口先生の曲の曲想だと、

「便利な世の中にはなりましたけど、大昔から自然に逆らいますと、地震やらの自然災害を受けますよ。だからちゃんと、海や山の自然の恩恵を感謝しなければならないよ」

というような感じです。
これは海に関係する曲なので、叩き出しは海のイメージ、波が荒い、または凪いだ海のイメージ・・・などを表現することで、曲想に近づけます。


■呼吸を合わせ、バチ先に集中する!

僕は大太鼓をやっているので、普段はお客さんにお尻を向けています。
一方の中太鼓は、お客さんの方を向いているんですね。
自然への感謝を伝える『ゲントウ』という曲は、波のような音のゆっくりとしたスローなテンポから入るので、そこがもう阿吽の呼吸というか・・・お互いを見ずに合わせるのが、まず大変です。

練習の時も、外を見て、誰とも顔を合わさず、目をつぶって練習・・・なんてこともあります。
そうやってメンバーの打つタイミングを合わせていくんです。
でも、みんなでタイミングを合わせようとすると、必ず遅くなるんです。
待っちゃうから。
だからリズム感のないような太鼓の出だしというのは、とても難しいです。
特に大人数でやる場合は、すごい緊張感ですよ。

大太鼓でドーンで始まるのは、本当に緊張します!
太鼓はバチの先で叩くでしょう。
大太鼓の皮部分はそれこそ2m近くありますけど、バチ先は一点。
バチ先に自分の神経とかパワーを集中させて、その一点で大きな太鼓の皮を叩く!
・・・それはとても深い意味があるような気がしますね。

僕は上手な人の太鼓の音を、頭の中でいつもイメージしているんですよ。
そういう太鼓のイメージで叩くと、すごく良い感じでできるんですが、やっぱりどうしても音が広がらない時もありますね。
太鼓の皮は牛の皮なので、雨の湿気の多い時、天気の良い時で、音が全然変わってしまうんです。


■「あの音は小山さんの音」・・・そう言われるように頑張りたい!

良い太鼓を見て、良い太鼓を聴いて、それを自分のものにできたら良いなあ、と思い、結構あちこちの演奏を見に行っています。

今年は林英哲さんのコンサートにも行って来ました。
彼は今年で還暦なんですが、あのステージを見たら、僕らなんてまだまだ・・・という感じ(笑)

太鼓と出会ったおかげで、本当にいろんな人と知り合うことができました。
最近では熊野の方から出演依頼があったり、年に一度の『響鼓in熊野』にも参加させていただいたりしています。
そこのチームでまた交流ができたり、楽しいですね。

熊野の方もけっこう太鼓が盛んですね!
『寄せ太鼓』といって、一つの太鼓で二人がそれぞれアドリブで打つというものがあるんですが、それがまた太鼓打ちにとってはすごく魅力的で・・・『寄せ太鼓コンテスト』なんてのもあって、僕も参加したことがあります。

尾鷲の『ヤーヤ祭り』で打つ太鼓も似ていますね!
一つの太鼓を順番に打っていくんですが、かなりその人の個性が出ます!
打ち方や、身体の使い方や所作など・・・見ていて楽しいです。

太鼓はとても深くて、大人も夢中になる楽器です。
「いいおじさん」が太鼓を叩いているのが、良いイメージというか、ホントの太鼓打ちのようなイメージを持って欲しいですね。
例えば古い映画では『無法松の一生』・・・あれの太鼓を叩くシーンも良いですねえ。
その太鼓を聞いている近所の人が、
「あの太鼓は誰が叩いとるんや」
「あの太鼓はあいつにしか叩けない」
とかね、渋いんですよ(笑)

僕も是非、そういう、僕にしか出せない音を出す『太鼓打ち』になりたいですね。