FM三重『ウィークエンドカフェ』2023年2月4日放送

東海道47番目の宿場町 関宿。
江戸時代から明治期にかけての町家が並びます。
今回は『伊勢茶問屋 かねき伊藤彦市商店』の伊藤ちなみさんがお客様です。

業は150年以上 伊勢茶があるから伊勢茶を扱う

150年以上前ですね。
1865年にお茶の商いをはじめました。
問屋としても大阪や日本茶専門店に卸をしています。
伊勢茶にこだわっているというよりも、この地でずっと商いをしているので。
伊勢茶があるから、ということで、伊勢茶を扱っています。
三重県はかなり昔から生産しておりますし、宇治茶の生産地として、宇治の近隣である三重県・滋賀県どれも良いお茶を作りまして、宇治茶として昔からみなさんの奥地に入っているはずです。
それだけ品質も良く、美味しいということで、たくさん出荷されています、今でも。
二度と同じ味のお茶には出会えないというくらい、お茶には多様性があります。
作り手や生産地、加工方法や、最終的に加工するお茶屋さんによっても味が違ってきますので、本当に多彩で無限だと思います。
自分の出会いになったお茶を、そのときだけの出会いと思って楽しんでいただけたら嬉しいです。

 

菜と同じようにその季節にしか味わえないおいしさがある

新茶は若葉の香りがとても特徴的でして、その『若葉香』というのが夏くらいまでに楽しむことができます。
それ以降はだんだん熟成されてきて、また違う味わいになっていくということで、山菜と同じように、その季節の、その時期にしか味わうことができないのが新茶です。
そのときに飲めば長生きができる…と言われ、珍重されてきました。
少し味わいとしてはキツイと感じる方もいると思いますが、山菜の苦味のような感じで、これは若い風味であると思って飲んでいただきたいですね。
かつては新茶珍重されて、早く早くという感じでしたが、桜前線と同じで鹿児島の方から始まって、徐々に芽が出てきます。
山の方はちょっと遅いですし、時期によって全然違いますが、私のところでは以前、4月の下旬に新茶を求めたいという人が多かったので、そのときは鹿児島の新茶を入れて『走りの新茶』として販売していましたが、今は、新茶と騒ぐ人も減ってきたこともあり、伊勢茶の新茶を、出てきた時期に提供させていただいています。

 

の勢いが弱ることなく100年以上たっても新しい芽を出す

お店には百年乃茶というお茶が販売されています。
樹齢100年を超える茶の木から採れた茶葉。
力強さが感じられるお茶です。

見た目は普段遣いの粗いお茶なんですが、木が150年前くらいにはすでにあったそうです。
木の勢いは弱っていくはずなのに、毎年普通に芽を出し、何煎でも飲めるお茶になるんです。
エネルギーを感じるお茶です。
どこまで出るんだろうと、何回も入れたくなります。
昔のお茶は『煎が利く』と言われて何回でも出ていたけれど、今のお茶は出ないのもあるという話もあります。
加工方法によって、何回も出すものでなく最初の一煎で成分を全部出すようなお茶もありますから、それはお茶それぞれの特徴です。
自分のお好きな味や煎れ方を探求すれば良いと思います。
もしくじはお茶屋さんで、こんな感じのお茶が好きだと言ってみれば、それに合うお茶を見繕ってくれたり、ウチでは置いていないけどここで買えますよ、とか、そういうお話が聞くことができると思うので、ぜひ専門店に来てもらって、お店の方とお話してもらえたらな、と思います。

 

と手間を惜しまずまろやかなお茶を淹れてもらいたい

お買い求めになられるのはお煎茶が多いと思います。
適度に冷ましていただくために、湯呑に一旦お湯を注いでから急須に注ぐということを一段階プラスするだけで、5度前後温度が下がります。
そのひと手間をすると、苦味の少ないお茶が飲めると思います。
お湯呑にお湯を入れることでピッタリのお湯の量を測ることができるので、お湯呑のお茶の量よりちょっと多めで淹れていただくと、茶葉がお湯を少し吸いますので、そのピッタリのお湯を急須に入れて、お湯呑に注ぎきってもらうと、また2回めにお湯を注すときに美味しく飲めます。
一煎目も二煎目も美味しく飲むコツです。
お店ではたった一杯のお茶を淹れて差し上げるときに、みなさんお写真を取ったり、とても癒やされるとか言われるお客様がたくさんいます。
たった一杯のお茶が身体を癒やしてくれたり、心を癒やしてくれたり、リラックスできたり、元気になったり…お茶碗いっぱいのお茶が、どんなに力があるかをお客さんから教えていただいています。
誰か、お茶を入れていただく人になりたい、と思っていただけるようなお店にしたいとですね。

誰かに淹れてもらったお茶は美味しいと思います。
お茶を飲む人を増やすというより、お茶を淹れる人を増やしたいと思い、お店をやっています。