FM三重「ウィークエンドカフェ」2012年10月20日放送

今回のお客様は『里の駅 ないぜしぜん村』の代表、山出公一郎さん。
『ないぜしぜん村』では、南伊勢町でできた海のもの・山のものが所狭しと並べられています。
地元の人も観光客も、ふらっと立ち寄れる・・・そんな場所です。
裏の山にはみかん畑。
ないぜみかんは、お店の人気ナンバー商品なんですよ!

■美味しいみかんを作るために

美味しいみかんを作るためには、みかんの気持ちにならないと。
「美味しくならなければ出荷しない」・・・そういう気持ちで、生産者は一生懸命みかんを作っているんです。
『ないぜみかん』の他『五ヶ所みかん』『マルゴみかん』などもあるんですけど、消費者の方に対して美味しいみかんを届けたい、その思いで、手間ひまかけて栽培しています。

みかんも生き物ですから、たくさんなると実の調整をしなければなりません。
白い花が咲くとキレイですが、その調整のために余分な花をちぎることもあるんですよ。
摘花して、実を出させる必要があるんです。
みかんの葉と実のバランスがあるので、最終的には葉が30~40枚に対して、実が一つなるくらい。

実の多さの調整によって、大きさや色はもちろん、味も変わるんです。

みかんは炭水化物を光合成で作るので、たくさん光を供給することによって味が良くなるんですね。
もちろん葉っぱも、バランスよく必要です。
新しい葉ほど光合成が多く、炭水化物をたくさんつくる。
ザックリした話ですが、果実はほとんど炭水化物で作られているんですよ。

今年も『みかん狩り』が10月27日から始まりますよ!
ここの果樹園は、車椅子の方も楽しんでもらえるよう、バリアフリー化されています。
家族や友達と青空の下、美味しいみかんを食べに来てくださいね。

美味しいみかんの見分け方は、重くて下に下がっているのがオススメです。
最初は上を向いているんですが、重くなると下がるので。
それからヘタが付いていない方の、お尻のオレンジ色が濃いみかんが美味しいですよ。
あとは、ツルツルしているみかんを選んで下さいね!!


■『里の駅 ないぜしぜん村』について

『里の駅 ないぜしぜん村』を始めてから、もう15年くらいになります。
地元に『道の駅』的な、情報を発信する場がなかったものですから、国や県、町からの補助金を受けまして。
また、高齢化によって、景色の良いみかん園が廃園になる危惧がありましたので、観光農園をしながら、地場産の物を発信する基地にしようかな、と、友だちとスタートしたのが始まりです。
つまり、地産地消と自然体験ですね。

『里の駅 ないぜしぜん村』で扱っているアイテムは30~40種類ほど。
地元の人に、「長持ちするもので良い物はいつでも持って来てくだいさいよ」という姿勢で、南伊勢町産のものを9割以上販売する方針で店を運営しています。
地元にあって、おじいちゃん・おばあちゃんが昔から作っていたものを商品化したい気持ちが、常にありますね。

15年前から変わらず置いているのは、友達が作っている国産はちみつと、私が自分で漬けている梅干しです。
梅干しに関しては、梅を作って加工もして販売もするという、第六次産業の最初だったわけですね。
それからジュース、みかんと五ヶ所小梅です。

最近はスーパーさんでも地産地消のコーナーが増えてきましたので、そこへ商品を出し、PRしながらがんばっています。

普段自分たちが口にして美味しいと思うものでも、商品化にあたっては苦労もありました。
この辺りで食べられている梅干しは、塩分が18~20%なんです。
しかし、市販されているのはだいたい10%。
なので、僕が美味しいと思っても、美味しいと思ってくれない人もいるわけです。
でも、おじいちゃんおばあちゃんが食べているような、昔からの味を好む人もいます。
だから今は、2つに分けて、『うすしお味』も作っているんです。

お客さんに勉強させていただきながら、モノづくりを進めているという感じですね。



■捨てられてしまうものを商品化したい!

今手がけているのが、捨てられるものを何とか商品にしようということ。
梅干しの汁、梅酢が身体に良いらしいということで、殺菌して商品化したり、摘果された青いミカンをジュースにしたり。
高いレモンを買って絞るよりも、ちゃんとジュースにして殺菌したのを使ってもらえばええんじゃないかと思いまして。
一度、居酒屋さんに持ち込んでみたところ、かなり好評でした!
『セミノールサワー』という感じで、徐々に需要が伸びてきています。

そうそう、みかんの品種の一つである『セミノール』、実はこの町で開発されたんですよ!

今では全国に広がってますけど、もともとは地元の方が開発して生まれた品種なんです。
こういう物語があると、自慢できますよね(笑)
スダチなど、他の柑橘でもジュースは作れますが、主婦価格で売ろうとするのなら、安くないと。
農家の方も、拾う手間はかかっても、捨てるつもりの物を持って来てくれたら、おこづかいにはなると思いまして。

「もったいない」の意識でやっています。


■自家製ブランド米『鶴路(かくろ)米』!

高齢化が進んで、基盤整備もできず、草だらけになっている耕作放棄地を見るのは忍びないです。
父が土地改良的なことを手がけて残したものですから、その思いもあり、米作りを始めました。
でも普通の米を作っているだけでは、とてもじゃないが生活ができません。
そこで、自分独特のネーミングと栽培方法でどれだけ収入が上がるか・・・と思って始めたのが、有機栽培でした。
鶏糞など、地元の有機肥料を使いまして。

でも、それだけではだめですから、品質評価値(食味値)が70ポイント以上の米を『鶴路(かくろ)米』と名付けようと。
三重県には『伊賀米』『一志米』とかありますけど、個人が米に名前を付けても良いのでは・・・と思ったのです。
最近では、地元でかなり有名になりまして、贈答品に使っていただいたりしています。
これもひとつの新しい農業の方法でしょうかね。

『鶴路米』の『鶴路』は地域を代表したいという思いから、この地域で有名な山の名前です。
その山からの川や伏流水や渓水を採って米を作ったので、ネーミングに生かしたほうが物語が見えるかな、と。

『鶴路山』に『鶴』の字が入るのは、お年寄りの話によると、鶴が稲穂を運んできてこの地区の平地へ稲穂を落とした事から、この地で稲作が始まった・・・とされているそうなんです。
その下には神社があるんですが、そこを中心に穂原地区ができたと訊いています。

『鶴路』は山の名前なんだけど、そもそもは鶴が穂を落としたことから生まれた名前。
『鶴の穂』と『鶴路米』がお米によって話が繋がるんですよ。
物語を感じるでしょう!

ちなみに『鶴路米』と名乗れるのは、僕が作ったお米だけです。
やっぱり自分のブランド米を作りたいじゃないですか、農業をやっているんだったら(笑)

しかし農家も、一本だけでやっていくには厳しい時代になりました。
ウチも長男が農業を継ぎ、「森のアイスクリーム」と言われる、『アテモヤ』という果物を作り始めました。
なんとか、規模拡大できるぐらいの消費の開拓をしていきたいですね。