FM三重『ウィークエンドカフェ』2023年2月25日放送

今回は、津市にある『坂井田・世界の凧博物館』の館長、坂井田茂さんがお客さまです。
126か国を訪れ、そのうち105か国、およそ1700点の凧を集めました。
凧に魅せられ44年が経っています。

学校の美術の授業で凧を教材につかったのがきっかけ

元・中学校の美術教員をしていまして、美術の授業のときに立体凧という、箱の形をした凧を生徒と一緒に作りました。
中学生は「こんな凧揚がるのか?」と、半信半疑で作っていましたが、実際に揚げてみるとものすごく空高く揚がって、子どもたちも本当に喜んで美術の授業で作品を作りました。
で、凧というのはなかなか教材として使えるなと思い、それから自分で凧に関する調査や研究、さらに凧を作っている人のところへ、日本中、あるいは外国にも出向いて、凧の研究をしていこうと思ったのがきっかけです。
東南アジアでシンガポールへ行けば、いろいろな商品が集まっているから、行ってみようと。そこでお値段でいうと1つ50円くらい。
とても安いのですが、手作りの凧を見つけました。
非常に嬉しかった思いがありまして。
外国に行けば、また日本と違った凧があるのではないかと思い、中国や韓国、タイやマレーシア、いろいろな国の中で、まず東南アジアを制覇するように行きました。
東南アジア・南アジア・アメリカ…みなそれぞれに特色がありまして、宗教というのも関係しますが重要な要素は、『竹』が取れるかどうか。
東南アジアは熱帯雨林でたくさん雨が降る気候なので、たくさん雨が降ります。
凧の材料になります。
それから日本のように和紙があるところ。
和紙がなければ『グラシン紙』という半透明の紙を使います。
紙もなければヤシの葉っぱで作ったり、それぞれ、その地域の中の凧になる材料というのがあり、その特徴を生かした凧を見つけることができました。

 

本は、子どもの成長、厄除け、南米は死者を弔う。魚釣りに使う国もある

日本の場合ですと、子どもがすくすく健康に育つように。
それから厄除け。
東南アジアへ行くと農耕、お米がたくさん取れるようにという願いを込めて揚げるところもあります。
変わったところだと、魚釣りに使うところもありますね。
キリバス諸島などでは、凧に釣り針じゃなくて紐を海面に下ろして、そこに蜘蛛の巣を付けて餌代わりにすると。
そうすると、口の尖ったガシのような魚が餌と間違えて食いつくと、ネバネバして離れられなくなるんです。
それを引き寄せれば魚が釣れるという、凧を使った漁法もあります。
中米や南アメリカでは11月2日が『死者の日』。
日本で言う『お盆』のような日に、今年亡くなった人を偲んで凧を揚げます。
天と地と結ぶという意味でね。
特にグアテマラではお墓の中で揚げます。
日本だったらそれこそ不謹慎な話なんですが、お墓の中で大きな凧を揚げてお祝いするというような風習があります。
ですから凧には骸骨などのデザインもあり、非常に楽しい凧揚げ大会となっています。

 

はどこにあるのか?どこで売っているのか?聞きまくる

世界の凧を求めてたくさんの国を旅してきました。
中でもブラジルは思い出深い国の1つです。
事前の情報一切なしで、飛び込みで、そして空港を出てからホテルの従業員の方、民宿の従業員の方とかガイドさんとか、そういう方に聞きまくって、凧はどこにあるか、どこで買えるか、どこで作ってもらえるかを訪ね歩きながら。
行き着いたときは本当に嬉しかったですね。
ブラジルのサンパウロに行ったとき、日系の旅行会社がいまして、その方に凧があるところを調べてくれとお願いしたら、たしかにありました。
ところがファベーラ(貧民窟)とまではいきませんが、非常に貧しい人たちが住んでいて、危険な地域だったんです。
そのガイドの方が、
「坂井田さん、あの地域だけは勘弁してください。絶対に行くなとおじいさんに言われています」
しかし、そこに行かないと凧は見つからんわけです。
頼むから一緒に行ってくれとお願いして、行ってもらいました。
その方はこわごわ付いてきましたが、私はそんなこと気にしませんので、凧、凧と言って入り込んだら、みんな良い人ばかりでした。
凧を作っている場所に5ヶ所くらい行きました。
1ヶ所で、10,20,30と、たくさん買いました。
その中の1軒は、
「日本からこんなに遠いところまでよく来てくれた」
と、20くらいタダでくれました。
感激してくれまして。
しかしタダでいただくのもなんなので、近くの料理屋で一緒に食事をしました。
そこで話は終わらず。
のちのちガイドさんが言うには、
「今まで自分は危ない地域だと差別的に見ていた。しかし自分が実際にこの地域に入ってみれば、良い人ばかりがたくさん住んでいる。
自分の国の国民を差別的に見ていたけど、一緒に凧探しをしたことがきっかけで、自分の国を見直すことができた」
と、感謝されたのが、非常に記憶に残っています。
最後に『ありがとう』とハグしてね、日本に帰ってきました。

 

界の子どもたちが凧を揚げているところが見たい

世界中の地域の凧は、大まかこれでわかりました。
が、子どもが揚げている姿を見る機会がなかなかないので、それぞれの国で子どもたちが凧揚げを楽しんでいる様子を見たいです。
そのためにかつて訪れた国ももう一度訪れてみたいなあと思っています。
昔から絵を描いたり物を作ったりが大好きでした。
自分が凧のことで海外に行くことによって、その国の文化や言語など…自分で凧を手に入れるにはどうしたら良いかという、目的を達成するためには語学も勉強しないといけません。
語学とか文化とか、いろいろなことが現場に行って初めて身につく、初めて知ったということが多くて、書物やインターネットで調べるだけでは、その国の風がどういうふうに吹いているのかとか、風の匂い。
国民がどういう遊びをしているのかを目の当たりに見るのがやはり、自分にとっても仕事上、非常にプラスになりました。
だからこそ続けてこられたんだなと思います。

空に吸い寄せられるように揚がっていく…その感覚を子どもたちにぜひとも経験してほしいと思います。