「ふれあい」Vol.38 2012年11月号

大紀町の緑深い中に尾鷲ヒノキの間伐材で作った打楽器『カホン』の陽気なリズムが響きます。
楽しさと笑顔、音楽とともに楽器を通して、三重の山の現状と国産材の利用の大切さを伝えます。

『ひのき工房 K’s factory』代表 越仮裕規さん

■尾鷲ヒノキを使った打楽器『カホン』を学ぶ『音創塾』

カホンは、木でできた箱のような打楽器です。
楽器の上に跨がり、その打面や縁を素手で叩くため、様々な音色・リズムを奏でることができます。
奏でるたびにヒノキのほのかな香りがして癒され、気持ちいいですよ。
『音創塾』で月一度開催しているカホン教室には、地元はもちろん、遠くは鈴鹿・伊賀から、多くの皆さんに参加いただいています。
より多くの世代に演奏を楽しんでもらえるよう、カホンのレンタルもあるので、初めての方も気楽に参加してほしいですね。


■『カホン』から広がり繋がる仲間たち

『ひのき家(旧グランビル滝原)』のオープニングイベントで堀木さんがカホンを演奏している姿をお見かけし、その際、私が製作したヒノキのカホンや、木に関するお話をしていくなかで、意気投合したことがきっかけですね。
それから、堀木さんと「林業に対して何か自分たちでできないか」と話し合う中で、『ひのき家』のスペースを使った新たな切り口として、音楽を通じた仲間が集う場所をつくろうということになり、『音創塾』が生れました。



*カホン*


■身の回りに尾鷲ヒノキ製のものを。これが私のライフワーク

身近にあったヒノキが好きだったこともあり、子どもの頃の私の夢は大工でしたね。とにかく木に触れていたいという思いが強かったです。そこで木工に専念するため、1998年に一念発起して『ひのき工房 K’s factory』をつくりました。今でも「ヒノキで作られたものに囲まれたい」「ヒノキの良さを多くの方に知って欲しい」との思いは変わっていませんね。
工房では尾鷲ヒノキの間伐材を活用したカッティングボードなどの木工品を製作しています。加工者としてはっきり言えますが『尾鷲ヒノキ』は素晴らしい高級木材です。
間伐材だからといって質は変わりません。



*ヒノキ製カリンバ*


でも間伐材は、実際にはあまり使われておらず、放置され荒れた所が多くなりました。
それらの問題の解決には、まず間伐材の有効活用が大切だと考えました。
間伐材を活用したものを商品化し、その価値を高めることで木の価格を高めることができれば、少しでも森林が良くなるんじゃないかと考えています。

カホンもそういう思いで作っています。
楽器として製作・販売することで、他の加工品よりヒノキの価値を高めることができます。
だけどその分、完成度というかハードルは間違いなく高くなりましたね。
楽器製作が初めてで、試行錯誤の連続でしたが、この活動の中、最近、ようやく自信の持てるカホンを作れるようになってきたと実感しています。

『音創塾』を通してたくさんの方にホンモノのヒノキを感じてほしいですね。
ヒノキならではの音がしますので、実際に触って体感してください。


『HINOKIYA STOVE』店長 堀木元木さん

■大紀町をヒノキの町へ 森の町として情報発信をしていきたい!

山に入ると、木は切り倒されたまま腐っています。捨てるぐらいなら売ればいいのではと思いますが、そもそもの木の価値が低下したことにより、運搬費用が賄えないのが現状です。以前はその間伐材も多くの場面で活用されていましたが、間伐材の使い道が減ったうえ、安い外材の輸入により、植林された山がどんどん荒れてしまっています。
やはり、木には使い道があり、活用される場面が増えればそこに仕事が生まれ、このシステムができれば、間伐材の利用が増え、山はどんどんキレイになると思います。
そのためにヒノキの間伐材の利用情報を発信し、地域の皆さんはもちろん、都会の皆さんにも知ってもらうことが大切です。
これまでも『ひのき家』では道の駅に来る観光客の皆さんに気軽に集まってもらえるようにミニコンサートを開催したり、様々な工夫をしてきました。今後も引き続き、ヒノキの香りを感じてもらったり、カホンを叩いてもらったりして、「日本の木」をPRしていきたいですね。「音創塾」をはじめ、この『ひのき家』をコミュニケーションの場として楽しんでもらえる拠点にしていきたいです。


『竹田製材有限会社』代表取締役 武田誠さん

■国産材の利用方法を知って欲しい

親子3代続く製材所を営んでおり、約60種の木材を取り扱っています。
日本は木材需要量が減少していますが、この風土にはやはり国産材がいいですね。
 木材は、色・香り・質感など個性があります。
杉は気分を落ち着かせ、ヒノキには頭をすっきりさせる覚醒効果があるのです。
木の特性に合わせたいろいろな使い方ができるんですよ。
そんな中、越仮さんや堀木さんが尾鷲ヒノキの間伐材をカホンなどの楽器へ活用しようとする活動に出会いました。
木の活用策としての新たな試みには感謝しています。
私も林業の新たな可能性を感じたので、これからも皆さんと一緒に活動していきたいですね。


『親子バンドRAMO』 垣内章伸さん

■国産材の楽器の良さを伝えたい!

今のギターはほぼ外材で作られています。昔から材料がある程度決まっているうえ、木によって完成度が変わるイメージがあり、なかなか他の木を使うことがありません。
初めて尾鷲ヒノキを活用した越仮さんのカホンを見た時、ミュージシャンとして完成度の高さに驚きました。
音がいい。
カホンを叩く度にヒノキの香りがするのもさらにいいです。
ぜひ、ヒノキを活用した楽器の良さを知ってもらい、新しく国産材を使った楽器づくりにミュージシャンとして参加していきたいですね。

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音創塾 ~カホン教室~
【場 所】 『ひのき家』 三重県度会郡大紀町滝原870-34
【問合せ】 0598-86-3709 『ひのき家』
【参加費】 500円(カホンをレンタルされる方は+500円)
【ご案内】 今月は11月16日(金)19時から開催します