FM三重『ウィークエンドカフェ』2023年3月11日放送

粋な縞柄の木綿の織物。
今回は『松阪もめん手織り伝承グループゆうづる会』の伊藤訓子さんがお客様です。
江戸の人を魅了した松阪もめん。
その技術を伝えていくため一本一本の糸に思いを込めて織っていきます。
厳しい基準を通った手織りの木綿。
そのすばらしさを多くの人に知ってもらいたい。
22名の仲間と一緒に様々な活動に取り組んでいます。

発な活動についていけるかなと思いながら15年続けてきた

今から40年前に、途絶えてしまった松阪もめんを復興させようと立ち上がった、『松阪歴史民族資料館』の初代館長、故・田畑美穂のもと、誕生しました。
私は55歳までフルタイムで働いていまして、これからの人生、このままで良いのかな、仕事をやめてしまうだけでよいのかと考えていたところ、新聞の広告にちょうど『ゆうづる会』の会員募集が載っていたので、そこに手を上げました。
これは付いていけるかな、というのが正直な感想でした。
とてもハードな会でした。
松阪もめんの会なので、『織る』ということはもちろん、それからいろいろな活動がありました。
小学校に藍染に行ったり、糸紡ぎに行ったりと、広報活動に忙しくて、染のことやいろいろなことを勉強しようと思うと、とても自分には務まらないのでは…と思いながら、約15年たっていました。
私たちは8期生ですが、1期生はだいたい80歳くらいの方で、もう辞められています。
現在は22名。
年齢的に40代前半から70代後半の女性たちです。

 

に1つしかない柄が手織りの松阪もめん

松阪もめんは手織りと機械織りがあります。
私たちはもちろん手織りですが、手織りの肌触りの良さ、松阪もめん独特の藍の濃淡でいろいろなバリエーションがあります。
機械織りの良さもあります。
たくさん世の中に広めるためには手織りだけでは足りないので、機械織りも必要です。
私たちの手織りの分は、一緒のものは織らないので、一点物となっています。
そのあたりを広めていきたいですね。
肌触りも良いし縞のバリエーションも豊富ですし、木綿は丈夫で長持ちします。
そのあたりが松阪もめんの特徴ですね。
一応、決まりがあります。
色糸も使えますが、松阪もめんは藍の濃淡が主になっているので、色糸は全体の30%以下です。
色糸もすべて化学繊維は使わないし、草木染です。
1cmに横糸が何本入っていないといけないという、厳しい基準もあります。
それをクリアしないと、なかなか良い反にはなりません。

 

の地域の子供たちに伝統文化を伝えていきたい

(お仲間の声)

手作り、ものづくりが大好きなので、機織りをぜひしてみたいと思い応募しました。
自分で柄を決めてデザインを決めて、それまでに準備も大変です。
でき上がったときは楽しいですが、工程の最中はなかなか大変な部分もあります。
でも自分の手に戻ってきたときには、良かったと思います。

松阪の子どもたちには、松阪の特産である松阪もめんがまだまだ知られていません。
それを知ってもらうことで種まきをして、その子たちが、自分の生まれた町にはこんな特産物があるんだということを、今度は自分の子どもたちに発信してもらえたらありがたいですね。
そういう、糸紡ぎや染などの、『種まきと』いう活動も『ゆうづる会』では行っています。
白いハンカチを藍で染めてもらうのですが、白がパッと染まった瞬間が子どもは嬉しいようで、声が上がります。
やっていて、こっちも良かったなと思う瞬間です。

 

日1メートル織れたら早いほう。時間をかけて織っていく

この幅は880本あるのですが、それをどういう縞柄にしようかなと考えるのも楽しいです。
織っていても、一目飛び目するということがあったら大変です。
さっきも言ったように、1cmに何本入っていないといけないとか。
重なったり、そのときの気分でパンパンとすると勢いよく入ってしまうし、緩かったらゆるいで、よく見ると斑になってしまいます。
織るまでにいろいろな工程があります。
ここで間違ったと思っても、次の工程で直すこともできますが、基本は一つずつの工程を正しく間違わないようにきちんと織るのが、綺麗に仕上がる秘訣でしょうね。
準備して織り上げるのに手間も時間もかかります。
ここの機に乗せるまでに作業をしないといけないので、織るだけならば1日座って、1mいったら良いところですね。
なので20日くらいはかかるでしょうね。
準備なども含めて、早い人は一ヶ月に一反織るという人もいますが、稀ですね。
1年のうちに、二〜三反織れたら、私たちは良いほうかな。

無心になって織らないと…そういうことができる自分が幸せですね。
40年歩んできた会の歴史を受け継いで、50年、60年と新しい縞を紡いでいきたいと思います。