FM三重『ウィークエンドカフェ』2023年3月25日放送

深い緑、清らかな水。
大台町栗谷(くりだに)地区に『和菓子カフェ奏笑堂』があります。
ここで和菓子を作っているの保木正志さんです。

域おこし協力隊で大台町にやってきた

一昨年の9月にコロナ真っ只中にオープンして、1年ちょっと経っていますね。
地域おこし協力隊でこちらに来まして、『事業承継』という和菓子屋さんを継ぐという形で修業していました。
もとととは家具職人でしたので、椅子などの家具を作るのは得意ですが、料理関係は全くでした。
若い頃アルバイトで居酒屋で働いていたくらいで、仕事としてやったことは一度もなかったです。
はじめは、和菓子屋さんだけでやっていまして、卒業間近になったときに和菓子屋だけだと難しいということがわかりました。
和菓子プラスαを考えたときに、やはりカフェを合体すると良いんじゃないかということでずっと探していました。
たまたま地元の方に紹介を受けて、居抜きでカフェも広げることができました。
自然も豊かで良い環境ですよね。
この建物も18年前に、この地区の住民の方たちが地域活性化のために立ち上げて、蕎麦打ち体験などいろいろな活動を行っていたのですが、その方たちも高齢になり、続けることが難しくなっていたという場所です。

 

礎的なものはYouTubeなども見て勉強 大切なのは水

普通に考えると1年は12ヶ月ですが、それを24とかいろいろと細かく区切っているのが和菓子の世界です。
私はそこまで細かくはできないので、月ごとに和菓子を変えていくことにしています。
3月は桜の開花をしているところもあるので、桜の和菓子です。
練りきりや桜あんを使った和菓子、春を連想させる和菓子を作っていこうと思っています。
お菓子を作ったことのない人間ですから。
うちの奥さんは…女性はお菓子を作った経験のある人が多いと思いますが、そんな中で私は何も知りませんでした。
メレンゲの作り方も知らなかったので、いまでも結構、「えっ?」となることが多いです。
そういうやりかたがあるんだ、って。
本当に、基礎的なものも自分でYouTubeやSNSとか本とかを見て学んできたので、その中で和菓子は水の加減が大切だとわかりました。
水の加減で餅の柔らかさも変わりますし、それで食感も変わってきます。
私自身が思ったのは、水のさじ加減が一番難しいと思いました。
大台町の水源からあまり離れていないところに店があるので、水が全然違いますね。
カルキはもちろん入っていますが、臭くないですし、ここの水は美味しいと思っているので、それであんこを炊いたり和菓子を作ると、柔らかさが違いますね。

 

分が食べておいしいと思うものを作っていく

鳥の鳴き声、鳥の種類もたくさんいます。
動物にしてもカエルにしてもいろいろな種類がいます。
虫もそうですね。
ここではいろいろな生き物が暮らしているので、それを身近に見られたりします。
ここに来て初めて、サワガニの群集を見ることができました。
サワガニってこんなにいるんだと、驚きました。
ホタルでもここではゲンジボタル、ヒメボタル、ヘイケボタルの3種類見ることができます。
それも地元の人が教えてくれて、案内してくれて、そういうところの楽しさはとてもありますね。
ここにいるといろいろな種類の生き物がいるので、調べるとどんどん知っている動物が増えていくという…普通に生活するだけで、いろいろな昆虫を見ることができて面白いですね。
こっちに来る前は、妻とバイクのツーリングが趣味で、旅先でいろいろな和菓子屋さんに寄ったりして、いろいろ食べ歩いていました。
昔から和菓子は好きでした。
だから自分が食べて美味しいと思うものを絶対に作ろうと、心がけています。

 

初は売れなくて、地域の人にも配るときがあった

最初に商品として売り出そうと思ったのが2年くらい前で、そこから何ヶ月かどら焼きを焼く練習をして、いろいろ工夫して、ときには和菓子屋さんに行って焼き方などを見せてもらったりしました。
その中で最初にできた商品がどら焼きでした。
最初は売れなくて、商品が余るくらいで、それを捨てるのがもったいないから、地域の人に配って食べてもらったりしました。
この地域は商店さんが1軒しかないので、飲食店で一年中お店をやっているのはここしかないと思います。
もうちょっと戻ればフォレストピアとかありますが、大台町の奥で一年中営業しているのはうちだけです。
夏でしたら清流茶屋とかありますけど。
都心に住んでいるときは田舎に遊びに行っても、「あ、ないんだな」くらいな気持ちでしたが、実際自分がここで店をすることになって、この田舎の奥地で店をすることの凄さを改めて感じましたね。
このあたりにも峠を越えたところにパン屋さんがありますが、本当に山奥なんですよ。
うちらにとってはとても助かります。
田舎でお店をやってもらっていることに、感謝の気持を強く感じます。

自然の中で仕事ができるのは、とても幸せだと思います。