特別展「鳥羽の漁村 小浜ー漁師の知恵、漁具の工夫、魚介の供養」■

■開催日時

2023年4月22日(土)~2023年6月25日(日)

■開催場所

海の博物館 特別展示室

■内容

三重県鳥羽市小浜町は、鳥羽市の最も北に位置する海辺の集落です。令和5年現在、戸数396戸、人口753人が暮らしており、鳥羽磯部漁業協同組合の正組合員13人、准組合員29人の計42名の漁師たちがタコツボ漁、釣り漁、刺網漁、ワカメ養殖、カキ養殖などを営んでいます。

大正10年頃(いまから100年前)の『三重県漁村調査』によると、小浜の戸数は189戸、うち専業漁業141戸、兼業漁業20戸とあり、総人口1077人のうち漁家人口が810人を占めていて、ほとんどの家が漁業で生計を立てていた「漁村」であったことが記録されています。

当時の小浜の漁業種類は「鯔建切網(ぼらだてきあみ)漁業」(1組)、「雑魚延縄(ざつぎょはえなわ)漁業」(150艘)、「雑魚釣(ざつぎょつり)漁業」(150艘)、他に「瀬建網(せたてあみ)漁業」(12艘)、「手繰網(てぐりあみ)漁業」(12艘)などで、鯛、蛸、黒鯛、鱸、鮃が多く捕れ、鮫、鰈、鰆も捕っていたことが明記されています。

 小浜地区は、旧海の博物館が立地していた場所から一番近い漁村です。従って、博物館が漁村資料の収集活動を始めた昭和45年頃から50年代には、小浜の漁家から、鯔建切網漁、鯛延縄漁、一本釣漁などに使われた数多くの漁具や漁具製作に使った資料を寄贈していただきました。

 今回の特別展では、小浜の漁家から寄贈され、文化財収蔵庫内で大切に保管している漁具やその製作道具類を中心に展示して紹介をします。これらの資料は、江戸から明治、大正、昭和の時代に天然素材を材料に手作りでつくられ、漁師たちに使われてきたものです。また展示場では、小浜の人々に伝わる漁や魚にまつわる小噺や言い伝えを紹介、古い写真なども展示します。そして、現在も済渡院(お寺)の境内に建つ「鯐」(すばしり)、「鯔」(ぼら)、「鰶」(このしろ)、「螠」(ゆむし)を供養する5つの石碑「南無阿弥陀仏鯐鰡供養塔」(2基)、「南無阿弥陀仏鯐鰡鰶供養塔」、「南無阿弥陀仏螠供養塔」(2基)について、その設立の年月日、碑文の記録などを紹介することで、小浜周辺の海で現在では考えなれないような「鯔の大漁があったこと」、また螠をとるための漁師の知恵と工夫が「鯛の豊漁に繋がったこと」などをお伝えします。

漁師たちの知恵や工夫がつまった多くの種類の漁具、大漁や豊漁の喜びと魚介を供養する漁村の暮らしなど、ひと昔前の鳥羽の漁村「小浜」を知っていただける展示です。