三重テレビ『ゲンキみえ生き活きレポート』2023年4月9日

伊勢型紙。
和紙を加工した型地紙(かたじがみ)に、様々な文様を彫刻刀で彫り込み、着物の生地を染めてきた伝統工芸。
およそ1000年。
鈴鹿市で、その技術が伝承されてきました。
しかし、生活スタイルや衣類の文化が代わり、型紙業者も激減。
歴史ある地域の伝統の技を、どのように守っていくのか。
伊勢形紙協同組合の取り組みをご紹介します。

穴の開いた板の上に紙を置き、垂直に突くように前に彫り進む。
この技法を「突彫り(つきぼり)」といいます。

 

花びらなど、職人自らが刃先を作り、その彫刻刃で、色々な文様を彫り抜く「道具彫り(どうぐぼり)」。
文様が均一で、かつ、多様な形が表現できるのが特徴です。
この道具彫りで、伊勢型紙を彫る・今坂千秋(いまさか・ちあき)さん。
この道48年、道具彫りを代々家業としてきた家に生まれた彫師。
祖父の代から100年、その技を受け継ぐ三代目です。

「『米寿格子』という図柄は私が考案しました。
着物に使う型紙です。彫刻刀2本で、米という文字を表しています。
実際、自分がこういう世界に飛び込んで、色んな文様を彫る中で、他の産業には類の無い『技術』、それと『文様』。
何万、何十万という数の文様がある。
道具彫りだと、その中の少しなんですが、他の職人さんたちから、色んな図柄を見せていただくと、図柄の多さ綺麗さというか、そこに型紙の魅力があるのだと思います」

 

伊勢型紙。
和紙を加工した型地紙(かたじがみ)に、様々な文様を彫刻刀で彫り込み、着物の生地を染めてきた伝統工芸。
およそ1000年。
鈴鹿市で、その技術が伝承されてきました。
しかし、生活スタイルや衣類の文化が代わり、型紙業者も激減。
歴史ある地域の伝統の技を、どのように守っていくのか。
伊勢形紙協同組合の取り組みをご紹介します。

 

『鈴鹿市伝統産業会館』の『伊勢形紙協同組合』理事長(伊勢形紙 伝統工芸士(引彫り)
小林満さんです。
伊勢形紙 伝統工芸士(引彫り)でもあります。
実は9年前、2014年4月13日に鈴鹿市白子・寺家地区のお菓子屋さんが、お菓子の模様や包装紙に伊勢型紙を使って、地域の伝統文化『伊勢型紙』を盛り上げるという取り組みを紹介しました。

 

「9年前は4軒にご協力いただいて使っていただいたのですが、その内、2軒がまだそのまま。カステラの模様の種類を増やして使っていただいているところと、その内2軒は、そのまま事業としてつながっている状況です」

 

「伊勢型紙職人の数は、後継者養成などの取り組みがあって、それほど人数は9年間で変わりは無いと思いますが、『伊勢型紙の』販売に関わる人数は、若干減っていると思います。
着物の需要はかなり減っているため、業者としては 数は減っています。
ですから、新しい分野を考え、『伊勢型紙の』新しい使い道が発見できればというふうな形で進めてきたいと思っています」

と、小林さん。

 

『伊勢型紙の新たな挑戦』ということで、『鈴鹿市伝統産業会館』のギャラリーを紹介します。
伊勢型紙は、元々、“二次製品”で一般の方の目にとまる機会がありませんでした。
このギャラリーでは彫刻職人をはじめ、伊勢型紙に関わるみなさんが新しく開発・考案した様々な商品が展示販売されています。

 

こちらは立体作品。
『伊勢型紙』は穴が開いているので、光を通します。
透け感もあり、とても細かいということがわかりますね。

 

こちらは『印伝』。
『印伝』とは、鹿の皮をなめして柔らかくして染めたものに、主に、漆と型紙を用いて文様をつけた革製品です。
『伊勢型紙印伝の名刺入れは、
*ハナショウブ(三重県の花)
*カモシカ(三重県の獣)
*シロチドリ(三重県の鳥)
*神宮スギ(三重県の木)
【三重の四彩】の模様となっています。
この他にも、打出の小槌、宝珠、巻物、宝鍵など、おめでたい道具を寄せ集めた縁起柄『宝尽くし』のペンケースなどもあります。

 

みなさんの挑戦は、商品開発だけにとどまりません。
協同組合でオンラインショップを開設。
新たな顧客層へ向けての発信も始めました。

さらに、伊勢型紙の体験ワークショップのメニューもパワーアップ。
これまで定番だった、しおりや色紙を彫る体験に加えて、LEDライトの飾りを伊勢型紙で彫る体験、型紙を使った『染め』を体験できるメニューも増やしました。

 

「体験ワークショップを増やした理由として、『自分の身の回りで使えるものを増やしていきたい』という気持ちがあります。
染めたり、彫ったり、あと、飾るなど『伊勢型紙には』いろいろな機能があるので、技術とか、その役割を知っていただければと思って、体験ワークショップを用意しています」

と、彫刻職人(突彫り)の大平峰子さん。

 

それでは、新メニューの中から、自分で彫った伊勢型紙で「ポーチを染める体験」を。
まずは、8種類ある図柄から、好きなものを選び、彫っていきます。

 

型紙を彫り終えたら、続いては、「染め」。
用意されたスタンプインクから色を選んで、彫った型紙を、無地のポーチの上に置いて、
その上から刷毛で染めていきます。
完成!

「地元だと、彫る職人さんばかりなので、型紙は彫って飾るものと思っている方がとても多いのです。
本来、型紙は染めるために作っているものだということを、もっと知っていただきたくて、身近に感じていただけるために、染めの体験というのを、前よりもご用意するようにしています」

と、大平さん。

ポーチ染め体験(染型彫刻+染体験)
¥2,000(税込・講師料別途) /
要予約 / 所要時間:約2~3時間

 

伊勢形紙協同組合では、伊勢型紙を未来へつなぐため、伊勢型紙彫刻職人の後継者養成にも取り組んでいます。
研修生(錐彫り)の金子仁美さん。

「今、研修4年目で、そろそろ5年目に突入します。
もともと何かを作ったり、書いたり、図工や美術が大好きで。
たまたま、高校生の時に、テレビで伊勢型紙が取り上げられていて、それを見てやりたいと思って、鈴鹿に来ました。
やはり、人の手で、こんなに細かいものが作れるという、そこに魅力を感じています。
丸自体が小さい物だったりすると、『こんなに細かいの彫るのか…』っていう気持ちになりますけど、やはり、そこまで彫れないと師匠のようにはなれないので、どんどん精進していくしかないいう気持ちです」

 

「高度な技術があってこその『伊勢型紙』です。
1つは後継者を作っていかないと後世につながりません。
もう1つは、その後継者として活躍していただける方が、十分に生活していけるだけの収入が得られるように考えていかなくてはいけない。
『伊勢形紙協同組合』は、販売業者の集まりですので、職人さんだけではなくて、その販売業者の後継者も育てていかないと、将来につながりません。
新しい使い道を何とか探して、将来のために生かしていきたいと思っています」

と、小林さん。

伊勢型紙を見たい、体験したい方は『伊勢形紙協同組合(鈴鹿市伝統産業会館内)』でご確認ください!