FM三重『ウィークエンドカフェ』2023年5月13日放送

『アトリエ・ちきゅうの道』絵地図作家の植野めぐみさんが、今回のお客様です。
熊野古道、スペインの巡礼の道、サンティアゴ・デ・コンポステーラを歩いてきた植野さんが絵地図作家になりました。

を多くの人に知ってもらうツールは絵地図を作ることだった

歩き旅や自転車旅が大好きだった、あのときの思いから全てがつながっています。
歩いて旅をすることで、刻一刻と人の速度で変わる変化を表すツールは、写真でも文章でもなく、ブログでもなく、私の場合は絵地図という形に落ち着きました。
この表現方法として、絵地図作家という形になりました。
自分なりのやり方といろいろな方を見て学んだものを、合わせた結果ああいう形になりました。
やはり自分の中では、柔らかさの中に地形のこととか、過ぎ去った景色の何気ない空気感を、惜しみなく表現したいと思っています。
よく言われるのが、「柔らかいけど緻密ですよね」ということ。
非常にめちゃくちゃ細かいねと言われます。
クライアントさんによって、スケールの正確な部分を求めてこられる方ですとか、逆に縮尺はあまり重要ではなく、地域の山深さと一押ししたい施設をピックアップするかのように、周りは小さくても良いからここをちょっと大きくしてくれというクライアントさんもいます。
その都度タッチを変えてはいますが、自分のオリジナルとして作るものとしては、スケールに関しては同一スケールで描きつつ、山の部分をめちゃくちゃ強調して、とても険しく高く、困難なところを同一スケールで描くのは非常に難しいところでもあるのですが、そんなときは色の力を使って、高いところをとても濃く描いたりしています。

 

野古道センターで原画コピーの展示をしている

実は、スペインの巡礼道のサンティアゴ・デ・コンポステーラの地図が、このたび出来上がりまして、尾鷲市向町にある『三重県立熊野古道センター』で、全編に渡る原画コピーと、挿絵の原画を展示しております。
歩いて取材した時期は10年前になるのですが、その間に活動したりいろいろしていたので、本当にこれを形にしようと思い立ったのは、コロナが始まった頃です。
かねてから仕上げようと思っていましたが、コロナを機に、制作する時間ができたのもあり、そこから集中的に作業に入りまして、足掛け2年半で描き上げました。
実は6年前に半分まで描きかけていたんですけど、当時は私も道も生きていたので、半分まで来ると、その期間たった3ヶ月であっても微妙にタッチが変わってきてしまうので、当時の私は変わっていくことを許容できず、これもダメ、また1からという感じで。
こんなことをしていたらいつまで経っても仕上がらないんじゃと思っていたのですが、そのときはタッチが変わっていくことに納得できなかったので、一旦頓挫していました。
けれど、道もですが、道も調査していたら、1年前はここで景色がよく見えたのに、今は草が伸びてきたとか。
逆もありまして、以前は景色が全然見えなかったのに、ものの一年できれいに伐採されて景色が見えるようになったとか。
道ってやっぱり変わっていくものだし、私もやっぱり日々色々なもの見て経験していると知らぬ間にタッチが変わっていくんです。
それも全部作品だと思えるようになり、今回、このような形で完成することができました。

 

道のぬりえを作り、歩いたところを塗って楽しんでいる

今回は、このたび初めて自分が描いた『塗り絵地図』を作りました。
熊野古道のあとで色を塗っていくということで、白黒の地図になっているのですが、それを私と一緒に塗りながら歩こうというツアーを組んでくださっているところがあります。
今現在、そういったツアーもしています。
絵を描くのが初めてという方もいらっしゃるので、下絵が付いていると描きやすいですよね。
そのときのツアーが横垣峠と通り峠でした。
横垣峠は本当に熊野古道の初心者コースで、横垣峠を一通り歩いて、色々見たあとに、そのこのツアーを主催しているところが所持している施設がありまして、そこでお昼ご飯を食べたあとに、白黒の横垣峠の地図を開いて、「ここさっき歩いた峠だ!」みたいな感じで、午後は色塗りタイム。
3回開催しましたが、本当に好評いただきました。
横垣峠を歩いたことのない人がいきなり絵地図を…となると、色は塗れるけど、淡々とした感じになると思います。
午前中、身体を使って歩いて、この峠から見える景色を見てもらい、ここにあるお地蔵さんの由来を一通り私がお話したあとに、午後塗ると、「自分が旅した道が絵本になった」と言ってくださった方がいました。
私が狙っているところでもあったので、とても嬉しい言葉でした。
アニメの世界を旅しているとか、絵本になった気分だったとか、そういう言葉をいただきました。

 

山を5日間かけて上っている

地図作家と同時に、『歩き旅アドバイザー』としても活動していまして、ライフワークとして年間に数ヶ月、歩き旅をすることがあります。
これは、学生時代のように余暇を使ったバックパッカーではなく、ひとつのこの歩き旅を次の制作活動につなげるという。
また、たまに歩き旅そのものが取材になったり、これ自体を今後、本にしていくとか。
そういった計画込での歩き旅をしています。
おそらく10年前より歩く速度などはめちゃくちゃ強くなっていますね。
日本三大霊山のひとつ『白山』という山が私は好きなんですけど、白山は登山道はとても整備されていて、登山センターもあるくらいです。
でも実はまともに歩くと5日間ぐらいかかる道があります。
岐阜県の美濃市なんですけど、去年はそこを出発して、5日間かけて白山まで行きました。
白山の登山道まで行くと、休日になるとたくさんの登山客がいるのですが、当然そこに至るまでは旧道だったりするので、白山の山に今から行くという人には、一人も会いませんでしたね。
でもこういった白山という山がある背景には、遥か離れたところから神社があって、修験として歩いた…そういったものがあっての白山を、ゆくゆくは絵地図で伝えたいというのがあって。
そうなると登山口から日帰り、ないし1泊で行く方にも、「この山って、こんなにすごい山なんだ」と、ただ景色が良いだけじゃないんだという、気づきを与えられたらなと思います。

自分の目で見て、足で歩いて、地域の匂いを嗅いで、肌で感じたことしか描けないということがあるので、作品の地図としては必ず自分で行ったところを描くようにしています。