FM三重「ウィークエンドカフェ」2012年11月3日放送

大紀町阿曽に、新鮮野菜を販売している『四季の店 旬彩』というお店があります。
ここは54名の組合員さんと5つの団体で構成されています。
その『四季の店 旬彩』の代表が近都明夫さん。
その前の代表が村田凱己さんでした。
営業日は週に3日。
たくさんの人が集まって、にぎやかに運営しています。

(左)近都 明夫さん (右)村田 凱己さん       

■二人の出会いは『四季の店 旬彩』

近都 
僕はもともと、毎日釣りがしたくて、大阪から阿曽に引っ越してきました。
知り合いが一人もいないところに来て、とりあえず最初に始めたのは『あいさつ』。
人に会ったら、頭を下げて、「こんにちは」とか「おはようございます」とか。
ここに来てから、一番気をつけてしたことです。

何回かしているうちに、地元の人が向こうから声をかけてくれるようになってきて。
そうするうちに話題が広がっていって、知り合いも増えてきたんです。

村田
僕が近都さんと付き合うようになったのは、この『四季の店 旬彩』なんです。
立ち上げの時に、データなどを全部入れて、管理してくれる役を引き受けてもらったんです。

近都
サラリーマン時代に培った技術を活かせて良かったですよ。

村田
『旬彩』は今年で5年目かな。
お店ができても、パソコンで売上管理のデータを入れてくれないと、いろいろ振り分けができないでしょ、今の時代は。
メンバーは年配の人が多く、70歳近い人が多いかな。
だから、畑で作物を作るのはプロでも、パソコンなどの管理はみんな苦手でね。
だからこそ、近都さんが来てくれて良かったし助かりました。

今では、何かというと「近都さん、近都さん」て。
近都さんという人は、阿曽では知らない人はいないくらい有名なんですよ。

近都
僕も『旬彩』があったから、大紀町の中でうまく生活できているなあ、と思います。
もしなかったら、ひょっとして、もういっぺん大阪に戻っているかもしれませんでした。
『旬彩』は苦労もあるけど、でもそれがあったおかげで、今があるというかね。


■それぞれの野菜づくり

近都 
実は、今まで、全然野菜を作ったことがなかったんですよ。
『旬彩』を始めたから、野菜作りを始めたんです。
それまで全然、クワなんか持ったことがなかった。
釣り用の竿は持っていましたけど(笑)
実際は興味もありませんでしたが、友達が2人でやろうというここで。

やってみると、けっこうキツイもんですね~。
まず、クワ持って畝を作るのが、コシが痛くなる。
それと、草の守り・・・畑でも何でも、手をかけなかったら、すぐ草が生えてきますね。
その管理が大変です。

村田
野菜作りは、実は僕も5年目。
同じく『旬彩』を始めるようになってからなので、『現代農業』を読みながら、いろいろ勉強している最中です(笑)
例えばゴボウにしても、タテに育てるものを、斜めにして収穫しやすいよう育てられる・・・と『現代農業』に書いてあったので、去年から取り組んでいるんだけど。
2~3本はできるんだけど、出荷するところまではなかなか辿り着かないね~。

販売する以上は、品質が良くないといけない。
みんなのと比べられるわけですからね。

近都
お客さんはよく見ているので、同じ値段だったら絶対見た目が良い方を買っていきます。
そして美味しかったら、袋に貼られている生産者の名前を見ますね。
そしてまた、同じ生産者のを買って行きます。
「あの人の作るものなら間違いがないから買っていこうか」と。

村田
今、お客さんが名前を見て買っていく生産者は、88歳の名人。
野菜ではNo.1の売上ですね。
「この野菜」だからではなく、「この人の作ったものだから」・・・と買われていくんですよ。

村田・近都
僕らもそうなりたいねえ。

村田
まだまだ初心者の僕らが、野菜の種をまくのは、その名人がまいてから。
何故かというと、今の時期、このタイミングで何の作物の種をまいたら良いのか、名人のを見ないとわからないからなんですよ。
やっぱり経験というのは大事だねえ。

近都
名人は、いつ何をまいたかというのを、ノートに記録してると言っています。
研究熱心なんですよ。

村田
名人がずーっと書いているのよね。昨日今日書き始めたわけじゃなくてね。
そんなん僕らがすぐにできるはずがないよねえ。


■野菜が売れるのが楽しい!

村田
僕が初めて野菜を作ったのは、『旬彩』を立ち上げるという話が出た時から。
開店の日にあわせて、野菜を出荷しなきゃならなかったんですよ。
それで出したのがチンゲンサイ。
これは良いのができました!
ただしそれが(成功した)最初で最後。
でもそれで、野菜作りの楽しさを知ったんです。
野菜を作っていると、ゲンキがもらえます!
なっ?

近都
うん

村田
昔は草取りしてくれと家内に言われて、いやいや取っていたのに、今は楽しいです!
やっている作業は同じでも、売るための野菜を作るためなんだ、と思うと、気持ちが全然違うんです。
今までは3本草引くと腰が痛くなっていたけど、今は全然平気(笑)
プロの生産者になってきたのかなあ。
僕の名前で、野菜が売れるような。

近都
名前で売れるのが一番いいんですけどね(笑)

村田
それでもやはり、難しい野菜もありますね。
根菜の、人参、ゴボウ、大根。などの長いタイプ。
これらは下手すると割れるんです。

近都
また割大根とかね。
未発酵の有機物を入れると割れるようなんですよ。

村田
根菜は掘ってみるまで見えないからねえ。
でも、みんな野菜作りに燃えていますよ。
なんたって目標がいますからね。名人が。
みんなの憧れですよ!
『旬彩』に出荷に来ると、いろいろ教えてくれるんです。
でも、ようよう実行できない(笑)

地域にはそういう名人がいて、こういう時はこういう肥料をやるとか、こういう時は土をかぶせるとか、経験でいろいろ知っている。
僕らは知らないから・・・奥が深いなあ。


■イベントを開催して『旬彩』を知ってもらい、メンバーになって欲しい!

村田 
土地の人が持っている田んぼは、みんなで協力し合いながら、なんとかやっているんだけど、阿曽地内に住んでいない、大阪とか名古屋の方が持っている田んぼが荒れています。
やっているやっていないで、荒れ方が全然違うんですよ。

近都 
外から来た僕は、そういう畑を借りてやっているんです。もっと僕のような人が増えて欲しいんですよね。

村田
そのためには、まず知ってもらわないと、ということで、今度の11月25日にイベントを開催し、芋掘り体験をしてもらうことになってます!
その中で参加者といろいろと話し合いしながら、できたら、遊休の農地を畑にしてもらえたらな・・・と考えています。

畑をしたい思っている人と、畑をして欲しいと思っている人の、マッチングの場所としたいので、とにかく、たくさんの人にイベントに来て欲しいですよ!

近都
目標はメンバー200人。
そうしたら今までの倍以上の野菜を作ってもらえる。
そうなったら、今は土日と木曜日、週に3日営業の『旬彩』も、毎日営業できるようになりますかね。
野菜が採れる時期・・・特にキュウリなどはいっぺんにバァっと採れてしまうので、3日営業だとかえって残ってしまい、もったいないんですよ。

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近都
最初、大阪から阿曽に来た時は、10年間だけは絶対いようと思っていたのに、いつの間にか10年過ぎてしまいました。
今は結構楽しいですね(笑)

村田
近都さんを一番頼りにしています。信頼できるからね。
近都さんがこの地域に入って来られたのは、無欲だったからだと思いますよ。
人に尽くせる人なんだよね。