FM三重『ウィークエンドカフェ』2023年6月10日放送

香り豊かな尾鷲ヒノキ。
今回は、尾鷲ヒノキの手作り雑貨『えびすや』の大形あかねさんがお客様です。
コースターやアクセサリー、キッチンツールなど端材を活かした商品が作られています。

姉さんが工房で作品を制作、あかねさんがデザイン

お店自体は13〜14年前から営業していますが、それより少し前から受注いただいたり、お仕事としてやらせていただいています。
お祖母ちゃんが駄菓子屋と食堂をしていて、その屋号をそのままもらって、姉と二人で木工屋さんを切り盛りしています。
姉が一人ではじめて、私がお手伝いで入ったという感じですね。
姉は木工の作業をする職人というか、工場長というか。
私はデザインを描いたり、注文を取ってきたりの裏方の作業を全部やっています。
尾鷲自体がヒノキの街ということもあり、えびすやは尾鷲ヒノキだけを使って作業をしています。
触れる時間が長かったので、どんどん入っていったという感じですね。
もともと私が建築士をやっていたので、木に触れることに抵抗はありませんでした。
尾鷲ヒノキというブランド材自体が、尾鷲市と紀北町で採れたものの総称です。
尾鷲が雨が多く、急な山というか、崖っぽいのが多いので、そこでたくさん雨に打たれたヒノキが香りが豊かで粘りが強いのが特徴です。
他の木曽ヒノキとか、奈良のヒノキ、伊勢のヒノキよりも粘りが強くて香りも良くて、建築材に向いています。
見た目は特に変わらないのですが、割ったときに赤い部分と白い部分がクッキリ分かれているのが、尾鷲ヒノキの特徴です。
木曽ヒノキは黄色できれいな木目が見えるのが特徴なんですが、尾鷲ヒノキは木目の中に色の濃淡があります。
一緒に楽しめる商品づくりを心がけています。

 

初に作ったのはアクセサリー。年月が経てば色が変わりその変化もおもしろい

私が最初にしたのは、アクセサリーです。
建築士をやっていて、たまに実家に帰ってきたときに、『こういうのを作って欲しい』と。
自分用のものをずっと作ってもらっていて、で、それを友だちが見て『私もほしい』と言ってくれて、じゃあ商品化しようとなりました。
デザインをしっかりと描いて、自分の好きなものというよりは、こういう人にこういう型を付けてほしいとか、こういう格好の人はこういうのが似合うな、とか、そういうのを考えていろいろデザインして、今、40種類くらいを作っています。
最初は香りがするんですけど、だんだん薄くなってきて、手で触っていると飴色でツヤツヤになってくるので、その変化も楽しんでほしいです。
日本人的に顔が映えるというか。
尾鷲ヒノキは色が明るいので、顔が明るくみえるというか。
あとは軽いのも特徴なので、イヤリングとか、耳に穴が開いていない方でも付けてもらいやすいと思います。
あとは年齢層も問わないですね。
10代から60代くらいまでの人たちが付けてもらえるようなデザインと加工にこだわっています。
加工に時間がかかるのは、やっぱりカトラリーとかキッチンツール。
スプーンとかが一番時間がかかると思いますね。
イケという、スプーンの口に入れる部分を半分くらい掘らなきゃいけないので、そこに時間がかかりますね。
やっぱり口当たりとかもあるので。

 

ザイナーが自分たちを成長させてくれる

コースターとか鍋敷きは慣れているということもあり、加工しやすいですね。
でも、もっともっと細かい細工を注文してくるデザイナーさんもいます。
これで作ってくださいとお願いされたときに、『こんな細い線!?』みたいなことも言われたりするので、それをやることによって、ウチの技術もどんどん上がっていくみたいな。
デザイナーさんのおかげで。
知っている分やらないことってあるじゃないですか。
『ここまでいくとヤバイよね』みたいな。
デザイナーさんは知らないからこそ、『もっとここまでできるでしょ!』と言ってくれて、初めてやったらなんとかできたよ、みたいなことが何度もあります。
そういう意味ではデザイナーさんと共同体というか。
できるできる!と軽い気持ちで後押ししてもらって、こちらとしてはどうかなと思いつつも、やったらできたね、みたいな。
それにプラスして、専門家として、木目の向きはこうが良いよとか、こっちのほうが強くなるよ、みたいな話はさせてもらいます。
全部が全部、デザイナーさんに言われたとおりではなく、やってみた結果ここまではできるけど、それ以上は無理とか、この木目だったらこういうふうだったらできるとか。
木目の木の取り方によって、強度がぜんぜん変わってくるので、それも含めてアドバイスしたりお仕事させてもらっています。
向こうが提案してきたデザインに対して、こういうのだったらできるよ、とかはよくあります。
最初はレーザーカッター自体、丸い板を切るだけの作業だったので、ここまで細かい作業ができるようになったのはデザイナーさんのおかげです。
最初の2〜3年くらいは機械が来てからも遊びというか、チャレンジしなかったです。
そこからいろいろな人から、こういうのできるよと言われて、やってみようと作り出した感じですね。

 

品を輸出したい。湿度や管理、輸出方法を考えている

海外向けの輸出にチャレンジしたいと思っています。
コロナ禍前は東京に行ってみたいというのがありましたが、コロナで東京に進出するのがダメになりました。
そのことがあり、東京を飛び越えて世界に進出しようと。
田舎にいても輸出とか海外に発信できるような取り組みを、専門家の方と一緒にやっていきたいと思っています。
木工製品自体、うちで作っているのがとても繊細なものなので、飛行機だったら何時間耐久できるか、船便だったらどれくらいのコンテナで、どれくらい湿度が上がって、季節的にいつがダメとかいうのも、実験してみないとできないことが多いので、その辺を一緒にやりつつ買ってもらって、興味を持ってもらえるなら、どこでも良いかなとは思っています。
尾鷲ヒノキ自体を知ってもらって、尾鷲ヒノキで家を建てたいとか、尾鷲ヒノキを使った何かをしたいという、きっかけ作りになるお店にしたいと思っています。
尾鷲ヒノキで家を建てるって、尾鷲の人にしてみたらとても簡単なことなんですが、外に持っていくという技術がないというか、今のところ。
じゃあ名古屋で尾鷲ヒノキの家を建てようとなったら、運搬費がいくらかかるのとか。
この材料を尾鷲で買ったらこんなに安いのに、それが10倍になっているよ!…みたいな感じになってしまうので、それのきっかけになって、どんどんどんどん外に出していけるような道筋を作ることができれば良いですね。

本当にきっかけの一番最初になれば良いかなと思っています。
その辺りを頑張っていきたいですね。