FM三重『ウィークエンドカフェ』2023年6月24日

天保11年創業、今年で183年目を迎える呉服屋が多気町にあります。
今回は『すかや呉服店』の綾野勝敏さんがお客様。
三重県の伝統文化を大切にしたオリジナル商品を作っています。

重県で盛んな木綿文化と伊勢型紙とコラボレーション

三重県は木綿文化がとても盛んであった地域で、『松阪もめん』『伊勢木綿』があります。
また、世界に誇ることができる『伊勢型紙』という文化も非常に奥深い…和装業界の根本となるような伝統的な技術です。
なにかそれらを使ったものづくりができないかということで、津市の臼井織布さんで伊勢木綿の白生地を織っていただいて、それに我々がオリジナルでデザインしたものを伊勢型紙の職人さんに彫ってもらい、伊勢木綿を伊勢型紙で染めるという『伊勢型もめん』というブランドを立ち上げようと、作り上げた品になります。
当然、お着物としてもそうですし、もっと身近に使っていただけるような小物にして、みなさんに地元のものを手に取ってもらいたいという思いで作ったのが『伊勢型もめん』というブランドになります。
小物などは観光客の方々に伊勢らしさをお持ちいただくのに、結構な数を動かさせてもらっています。
あとは着物に染めた物、浴衣に染めたものもありますが、そういったものはおかげ横丁のおはらい町の場所をお借りして、三重県の伝統布を羽織っていただき、それでお伊勢参りをしたり伊勢の街を散策したりしていただいています。
私どもで伊勢型もめんの衣装をご用意させてもらっているので、それもたくさんの方からご愛顧いただき、袖を通してもらっています。

 

から地域資源を使っての伝統工芸を支える事業に参加、お花の先生が使っていた杉を使った

県の方から、三重県の地域資源を使って、伝統工芸を活性化させるための補助事業がありました。
私どもの店頭にいつもお花を生けてくれる先生がいまして、その先生が花展をするときに材料として御山杉を使っていたことがきっかけで、伊勢の材木屋さんをご紹介いただき、なにかものづくりに繋げられないかということで、神宮で育ち、自然災害等で朽ちてしまった御山杉を使い、染色に取り入れさせていただきました。
そこから商品の幅も広げることができ、茶道をされている方、また、関東エリアからもこの商品にご理解いただき、ご注文いただいています。
常に新しいものづくりをさせていただいています。
我々、着物の世界は、植物を染料に使うことがけっこうありますが、この杉においては、特にこの御山杉は、他の杉に比べても油分が多いんです。
一度白生地に染めて、あとは化学染料も混ぜるのですが、油分が多いため水分を弾きやすく、染ムラがとても出ました。
しかし職人さんと試行錯誤を繰り返しながら、なんとか商品化につなげました。
普通の下染めをしない、御山杉を使わない染めに比べると、色合いが柔らかく染め上がるのが特徴です。
そういった部分がリピーターの方の心を掴み、ご注文をいただいています。

 

リジナルの伊勢型もめんで着物をつくりたいというお客様が増えた

今はお客様のグループから、自分たちでオリジナルの着物を作りたいということで、それぞれのグループがデザインしたものを職人さんに彫っていただき、それを染めさせていただく、というご依頼があります。
この三重県下においても、我々以上に三重県の文化を繋げていこうというグループがありますので、我々にとってはとてもありがたいです。
一緒になって、和の文化、衣服の文化、三重県のより良いものを繋げていき、一つでも発信できたら嬉しいなと思っています。
ありがたいご縁があって、我々のほうが教えていただくことがとても多いです。
呉服屋という立場にありながらも、ご興味ある方、思いが強い方は、我々以上に掘り下げたものを求めていたり、探求したりしていることが多いので、そういった方々とのお付き合いから、いろいろな刺激をいただき、背中を押していただく部分もありまして、こういったものづくりができているのかな、と思います。
また、それらを受けてくれる職人の方々も、本当に快く賛同してくれています。
そういったことに助けられながら、我々も商売をさせてもらっているのかな、と思います。

 

いは装いから。主催者の想いを大切にしてほしい

式服だけではなく、普段着として着物を着てほしいとも思います。
しかし式服のある意味素晴らしいのは、式を開催する…結婚式であっても仏事であっても、主催者として発信するときは、やはり非常に行事を重んじてされるわけです。
入学式であったり卒業式であったりすれば、またそれはそれで主役になる方がいます。
『想いは装いから』という言葉を、我々はよく教わります。
やはりその立場にあってふさわしい装いがあるということと、そこに『想い』が付いてくるということがあります。
大切な人を思い浮かべながら参加するということは、和服は時間もお金もかかりますが、その想いが相手に対して礼を尽くすという意味合いになると思います。
そこをしっかり理解しながら、装いをしてその席に立つべきだと、私に指導してくださった方がいます。
我々も呉服屋として、それを伝えることのできる立場となり、普段着の着物、礼装の着物…意味合いと想いを一緒に伝えていけるようにあり続けたいなと思います。

いろいろな方の知恵を借りながら、みなさんのお手伝いをしていけるような呉服屋でありたいですね。