FM三重『ウィークエンドカフェ』2023年7月29日

国道23号線沿いに『手打ちうとん』と書かれた大きな看板。
今回は、鈴鹿市にあるうどん屋さん、『四国大名』の富田有紀さんがお客様です。
オープンは昭和52年、富田さんのお父さんが開いたお店です。

客様をお待たせしないように注文が入ってからではなく入店と同時にうどんを切る

この8月で、開店して46年になります。
最初の頃はすべて手で、水と粉を捏ねて、足で踏んで包丁で切っていました。
そういう店舗は鈴鹿に他にあったのかな・・・おかげさまで当時は、松阪・桑名・四日市・菰野あたりからも来ていただいていました。
途中からは麺をたくさん食べてもらえるよう、機械打ちに変わりました。
当店はお客さんを待たせないために、お客さんの顔を見てから切るのではなく、お客様が来店されたら数を見て麺を切っていきます。
お客様をお待たせさせずに良い状態のうどんを出したくて、30〜40年前から、時間ごとでおうどんを茹でて、出なかった分は処分していました。
これをやっていたお店は、当時はあまりなかったと思います。
顔を見て、このお客さんは蕎麦、このお客さんは3玉食べる人だ・・・と、だいたいわかりますね。
お客様の顔を見てから、お客様のために切るのも素敵なことだと思いますけど、そんな敷居の高い食べ物ではないような気がして。
お客様をお待たせせずに、楽しく食べてもらうのが一番ですね。

 

どんの語源は『うんとん』だったことから初心を忘れないように『うとん』

とにかくお客さんに笑顔で帰ってほしい。
先代から、
「この仕事はお客様に自分の作ったものを食べていただけて、さらに『ありがとう』と言って帰っていただいて、さらにお金までいただくという、とても素晴らしいお仕事なんですよ」
と、教えられていました。
お客さんに笑顔で帰ってもらえることが一番大切だと思ってやっております。
当時から来ていただいているお客様が、お孫さんと食べに来てくださるようになったり、息子さん世代が別の家族を作って、別々に食べに来たり・・・そんなあたたかいお客様ばかりなのでこちらも続けられています。
うどんの語源が『温飩』『混沌』という説がありまして、その説を聞いた先代が、いつまでも初心を忘れないように濁点を抜いて『うとん』と、創業当時から名乗っています。
小さなお子さんのお客さんからは時々、「点々が抜けてるよ〜」なんて可愛い声も聞こえてきます。

 

玉まではどの量でも同じ料金で食べることができる

おうどん屋さんて、昼間しか営業していないところが多いんですけど、きちんと仕込むとそうなってしまうというお店が多いんですね。
うちは常に、営業中にも仕込みながら、おかげで長いことしているので、だいたいこのくらいで出るだろうと予測しながら、出汁や麺を常に作り続ける感じにしています。
気温によって麺の水分量や出汁の濃さを調整しながら、その時期に一番美味しく食べていただけるように作らせてもらっています。
寒くなるとおうどんやおでんを食べたくなるかなと思われがちですが、実は冷たい季節のほうが注文数が多くて、やはり「食べられないけどうどんなら食べられるかな」というお客さんが多いのかな、と思います。
暑い時期のほうがツルツルっと食べたくなるもんですかね。
当店では1玉・1.5・2玉・3玉まで同一料金となっています。
ちなみに、お客様の最高は9玉です!
一気に。
3玉食べて、3玉食べて、また3玉。
先代がはじめたサービスです。
いやなことがあっても、とりあえずお腹がいっぱいになったら元気が出るし、悩み事もお腹いっぱいのときは一瞬で幸せになれる。
とにかくお客さんに満腹になってもらって笑顔で帰ってほしいとの思いから、このサービスをはじめたそうです。

 

母さんが亡くなった月になると訪れてくれるお客様がいる

学生時代から手伝っていましたが、「また食べに来たよ」と言ってもらえたり「美味しかったよ」と言ってもらえるのがとても嬉しくて、で、そのまま私はおうどん屋さんになろうと思いました。
小さな頃から今までを思いかえしても、特に「おうどん屋さんになれ」とは言われたことはありませんでした。
母は若い頃に亡くなってしまったのですが、私の目標とする人ですね。
いまだに、亡くなった月の頃になると、どなたかが母の話をしてくれます。
母は私以上にお客様に愛がある方だったので、そんな母のようになるのが私の目標です。
今まで考えたことがありませんでしたが、言われてみると、母の姿、ですね。
父が丁寧に作ったものを、母がお客様に気持ちよく食べてもらえるよう努力していたので、その気持ちがみなさまに伝わるように、継いでいきたいです。

私に関わった方が、すべて笑顔になってほしいですね。
そのためにスタッフさんに気持ちよく働いてもらうにはどうしたら良いだろう、もっと笑顔で帰っていただくにはどうしたら良いだろう・・・いつも考えて努力しています。