紀北町『海人』の橋倉太一さん、竹谷卓さん(カフェ)

FM三重「ウィークエンドカフェ」2012年11月17日放送

今日のお客様は、橋倉太一さんと竹谷卓さん。
海の人と書いて『かいと』。
これが橋倉さんと竹谷さんの魚屋さんの名前です。
漁協の職員だった竹谷さんが社長となり、紀伊長島で魚屋になりたいという夢を叶えたのが2年前。

朝、紀伊長島で水揚げされた魚を夜には食卓で食べてもらおうと「新鮮な魚」を届けるために、毎日頑張っている2人です。

魚に対する思い、これからのふるさとの漁業に対する思いをお2人に語っていただきました。

左:竹谷卓さん     右:橋倉太一さん

■『海人』の立ち上げと、『海人』ならではの売り方!

橋倉
僕たちは、幼稚園から同級生。
もちろん、紀伊長島生まれの紀伊長島育ち。
まあ、いい意味での腐れ縁ですね(笑)

竹谷
ケンカもいろいろしたしね。
腕っぷしは僕のほうが強いけど、口が立つのはこいつ(笑)

橋倉
最初は何もわからず、どうしたら良いのかもわからないままヨーイドン、という感じ。
紀伊長島の魚市場で、魚を買える権利を用意してもらって。
仕入れがあり、売り先があれば、とりあえず商売が成り立つので、最初はちょこちょこ買いながら、魚をお客さんに見せながら営業したりしていました。

初めの頃はスーパーや、居酒屋をメインに営業をしていたんですけど、基本的に三重県の中部の方は、松阪市三雲にある中央市場で買い物をされていることが多いんですね。
魚屋さんが何軒もある中で、生き残るには、やはり『差別化』を考えないと。

『海人』の売りは、その日、漁師さんがとってきた来た魚を直接お客さんに届けること。

松阪で売っている魚は、漁師さんたちがとってきた魚を出荷業者さんが松阪に出荷して、次の日に売るので、やはり一日経った魚なんです。
さらに出荷業者さんは中央市場に送るためにコストがかかるんですが、僕らはその分値段を安く、しかも一番新しくて新鮮なものを提供できる、というスタイルができるんです。

それに2人でやっているので、時間的にも限界があるんですよ。
お店屋さんが魚を欲しいと思う時間は、みんな一緒なので。

市場のスタートは、冬場は7時半からで、日が伸びてくる夏場などは7時。
なので今は、6時ぐらいから準備して、魚を見て、お客さんとのやり取りをして・・・今日はこんな魚がこのぐらいの量揚がっていて値段はこのくらいで・・・というお客さんのニーズを聞いて、競りに挑むわけです。



■漁師さんも魚屋さんも、みんながいい関係になるように

橋倉
紀伊長島は地元なんで魚屋さんの知り合いもいっぱいいますし、逆に漁師さんの知り合いも何人もいます。
難しいのが、安く買えれば良しではないところですね。
あまり安く買われたら漁師さんたちは売上が下がってしまい、商売が成りたたなくなってしまい、やめることに・・・なんて事になったら困るし、長い目で見て漁師さんたちにも儲けてもらわないと。
難しいですよね。
みんながうまくいく、上手な関係ができると良いのですが。

2人で初めて始めた商売なので、最初の頃はお客さんも少なかったため、魚が売れ残ったら怖かったです。
おそるおそるで、安い魚しか買えなかったりとか。
欲しい魚があっても、例えば僕らでは10匹しか売れないけど、30匹が1ロッドだった場合は買えなかったわけです。

それでも自分たち的には、お客さんのためにいっぱいいっぱい動いてきたつもりなので、信用の方も1年経って徐々についてきて。
一応展開が広がって、最初の頃より沢山の魚が買えるようになったので、ええ感じですね(笑)

竹谷
最初はトラック一台で始めたんですよ。
なるべくお金をかけないでやりたかったので、そういう形になりました。
サラリーマンだったのを辞めてチャレンジしたわけですが、周囲の人の反応は、意外に応援してくれる人が多かったですね。
逆に身内の方から「難しいんじゃないか」と言われて。
だからこそ逆に「意地でもがんばろう」と今、2人で、ここまできました。


■魚の本当の味を知ってもらいたい

橋倉
紀伊長島は本当に魚種が多く、釣り場所としても、かなり良いゾーンです。
紀伊長島の魚として、まず挙がってくるのが『カツオ』ですね。

竹谷
伊勢海老も、紀伊長島ではとても深い場所で獲るので、色が良いと評判が高いんですよ。

橋倉
紀伊長島の伊勢海老は深いところにいるためか赤い。一目瞭然です。
『海人』でも伊勢海老には力を入れていて、水槽も自分たちで作って市場の前に倉庫を立てています。
伊勢海老の本場の伊勢や鳥羽の方からも、紀伊長島の伊勢海老を、かなり気に入ってもらっているんですよ。

今の時期は海老網漁が始まったので、海老と一緒にかかってくる魚もたくさん揚がります。
底に住んでいる魚なのでいわゆる『そこもの』と言うんですけど。
いろんな種類がいっぱい揚がってくるので、これからの鍋シーズンに向けて、ちょうど良い魚がたくさん出ますよ!

取り扱いが難しいけど、美味しいのは、なんといってもサバ。
刺身で食べたらサバほど美味しい魚はないと思うんですが、そもそも普通の人の感覚としては無理ですよね。
でも僕らは生きているサバが手に入りますから・・・普通の人はあまり、生きているサバって見る機会がないでしょ?
『海人』はその、新鮮な状態の仕入れができるので、いつも食べている魚でも、ホントはこんなに美味いだとビックリしますよ!
紀伊長島のものをもっと、安く美味しく食べて欲しいですね。



■今まで食べなかった食材にも挑戦!

竹谷
最近食べたので美味しかったのが、コバンザメです。
ほとんど見ない、超レアな魚です。

橋倉
レアすぎて値段の付かない魚の一つなんです。
で、食べてみようという話になって、お寿司屋さんに「あんたも食べてみ」と渡したところ、翌日、握りにして持ってきてくれたんですよ。
一瞬引いたんですけど、食べてみたら・・・それこそ、「なんじゃこりゃ!」というくらい美味しい!
コバンザメは大きなサメの下にくっついて、その吸盤が小判の形をしているから『コバンザメって言われているんですけど、よくよく調べてみると、コバンザメはサメ科ではなく、スズキ科らしいんです。
スズキといえば白身の上品な味わいなわけで、そう考えると、コバンザメも美味しくて当たり前なんですね。
中国では薬膳として評価が高く、珍重されていると聞きます。
まあでも、紀伊長島でコバンザメを食べたのは、僕らが初めてなんじゃないかな(笑)

でもお客さんにも食べてもらったんですよ。
「めちゃくちゃ美味しいから食べてみ」と
そうしたら、食べた人、みんなハマりました。
「次揚がったら、絶対持ってきて!」って。
死ぬまでに一回食べたほうが良いです(笑)。

今までは要らないのに穫れてしまい、漁師さんにとっては何の価値もなかったものが、いくらかになる。
お金に変われば、漁師さんにとっても、僕たちにとっても、お客さんにとっても良いこと・・・三方良しですね(笑)


橋倉
この商売をしていて、人に囲まれて、まず「楽しく」というのを持ち続けたいし、そのお客さんに対して、もし規模が大きくなっても、今と変わらぬキチンとした対応をしていけば、潰れることはないと思います。

キチンとした対応をしつつ、広められるだけ広めたいですね。

最終的には『海人』という名前で、一貫生産というか・・・魚や海産物を総合的に扱いたい。
そうなったら、居酒屋さん、定食屋さん・・・紀伊長島の魚を使ったお店を出しても良いですよね。
可能であれば、「紀伊長島を元気にさせたい」という意味で、ウチの代表に少々お金が溜まったら、紀伊長島の町にも水産センター的なものが作られれば面白いんじゃないかなあ、と。

夢ですね。
調子にのらず、驕らず(笑)