三重テレビ『ゲンキみえ生き活きレポート』2023年10月15日

四日市市采女町の『うつべ農園』は、60ヘクタールの農地を耕作する大規模農園。
若手のメンバーが中心となって農業を営んでいます!
一方、地域の様々な活動団体と連携して、自然保護活動や環境保全にも取り組んでいる。
番組では『うつべの森』での自然体験活動や、ホタルの飼育や保全に取り組むグループを紹介!
テーマは『ふるさとの自然』です!

四日市市采女町は、は四日市でありながら、多くの田畑がまだ残っている地域です。
しかし後継者不足などの問題から、耕作放棄地が目立ちはじめています。
地元を大切にする。
耕作放棄地を生み出さない。
若手農業者を育成する。
…そんなコンセプトを掲げて稲作や野菜づくりをするのは『うつべ農園』のみなさん。
現在の耕作地は60ヘクタール。
東京ドームの12.8個分。
若手のメンバーを中心に、農業に取り組んでいます。

 

采女町で農業を始めたきっかけを、『うつべ農園』会長の上麻里さんにお聞きしました。

「13年前に主人がどうしても農業をしたいということで、農業経験ゼロ、農機具ゼロ、農地ゼロで、この田んぼをスタートしました」

 

「今、見えているこの辺りは、ほとんどが耕作放棄地といって森のようになっていました。
そこをお借りして整備し、キレイにしていったところ、地元の方たちから信頼を得ることができ、60ヘクタールほど集まって来ました」

ご主人のふるさと四日市市で農業を始めた上さん。
その後、ご主人が他界され事業を引き継ぐことに。
広大な耕作地を管理するため農業機械や大規模な施設を導入
会社を立ち上げ、若手社員とともに再スタートを切りました。

 

「実は農業をやりたい若い方たちは意外と多くいるんです。
しかし、そのスタートが分からないという人が多いので、彼らを応援できるようにと考えています。
なによりも若い人たちの感性はとても豊かで、今までにない農業の発想であったりとかいろいろな目線が広がっていて、とても素晴らしいと感じています」

と、上さん。
とはいえ、8月末で主食米の収穫は終わっていて、その他の農業作業も終わっている状態だそう。
といった状態です。

「私が行っているのは農業だけではなく、森の活動とか自然保護活動などもあります。
今日はそのメンバーと子どもたちが森でいろいろな活動をするので、そちらをご紹介します」

 

こちらが活動を行っている『うつべの森』。
2019年に上さんたちが、自然を感じながら大人も子どもも楽しめる場所を作ろうと森を整備。
現在は内部地区の活動団体『ブック オブ ネイチャー クラブ』が管理を行い、自然体験教室など、さまざなイベントを開催しています。
最初は鬱蒼としていた森を、地域の地主さんからお借りして、ひとつひとつ木を伐って開拓して子どもたちが遊べるようにしました。

 

森の整備に当たったメンバーのひとり、寺田卓二さんに案内していただきました。

「ここは間伐した時に出てきた木をチップにして敷いたチップロードです。
ふわふわで柔らかくて気持ちいいんですよ。
小さい頃。ここで遊んだという体験の記憶を残しておいてほしいですね。
成長してから『あそこはどうなったのだろう』と思って来てくれることを期待して活動しています」

 

この日は、四日市市内のサークル『おはな』の子どもたちがバーベキューを楽しみにやってきました。

 

木の枝を選び、のこぎりで切ってバーベキュー用の焚付にします。

 

「意外とみなさん寛容で、子どもたちがいつも来るのも面白いと言って下さいます。
いつも人が集まっていて楽しそうねと言ってくれるので、おそらく地域の方たちも人が集まるということは楽しいことなんだなと感じています」

と、上さん。

 

場所は変わって、今度は内部地区です。

『うつべホタルの里を育てる会』の藤田稔さん。

「内部東小学校の子どもたちに内部のホタルを見せてあげたいと思い、3〜4年前、学校の敷地内に15人ほどでホタルの池を作りました」

 

ホタル池は元々あった溝を拡張して利用。
専門家のアドバイスでホタルの生育に適した土砂を川から運び入れ、水が汚れないよう循環ポンプを設置。およそ1年かけてメンバーが作りました。
初年度に別の場所からホタルの幼虫を譲り受け飼育。
その年、数十匹のホタルが確認されました。
小学校でホタルの学習会も開催し、保全活動に取り組んでいます。

 

ホタルのエサとなるカワニナ。
外側の貝が欠けやすく、再生するためのカルシウム補充を促すために牡蠣の殻を川に入れています。

 

「『ふるさと』というのはもう一度帰ってきたい、もう一度見てみたいというのが一番大事だと思います。
その心を植え付けるためには自然環境を残していくこと。
ホタルの里が自分たちのふる里という、そんな形でまた、来てもらえればと思っています」

と、『うつべ蛍の里を育てる会』の諸戸靖さん。

 

「各団体さんが本当に楽しく、前向きに活動していて、それを苦労と思っていないのが素晴らしいです。
私自身が何か大きなことができるわけではありませんが、問題が出てきたときに、それをクリアーできるような案を出したりお手伝いをさせてもらうのが、私の役割かなと思っています」

と、上さん。

 

『うつべ農園』は、農業を通じて地域のみなさんと連携。
子どもたちに農業の大切さや収穫の喜びを体験してもらおうと、地元の有志のみなさんと農業体験会を開催。
小学校の授業で食や農業の大切さを伝えています。

 

地域を大切にする。
耕作放棄地を生み出さない。
若手農業者を育成する。
その難しい課題を、上さんたちは地域のたくさんの人を巻き込み、実現しようとしています。