FM三重『ウィークエンドカフェ』2023年10月28日放送

名張、一の鳥居をくぐりぬけ参道を歩いていくと『古書からすうり』があります。
築130年の古民家を改装した古本屋。
今回は、店主の中田俊昭さんと茂美さんにお話を伺います。

屋さんだった場所で古本屋を開店 ひと箱古本市が楽しくて開店を決意

俊昭さん もともとここはお薬屋さんだったんですよ。
それで僕ら店を探していたんですけど、旧町、名張の古い町の方でm,伊勢を開きたいと思い、ずいぶん探していました。
たまたま持ち主の方に古本屋をやりたいと話したところ、本が好きな方でとても喜んでくれて、ご厚意で譲っていただくことができました。
以前、岐阜市内に住んでいたときに『一箱古本市』というのがありまして、一般の人が本を持ち寄って本を販売するという、一般人参加型の古本マルシェがありました。
そこに僕らで出店して、それがとても面白かったんです。
僕らが出している本を、「この本面白いね」とお客さん同士が話し合ったり、随分探していた本がたまたま僕たちが出品している中から見つけて、「本当に買っていいの?」というおじさんがいたり。
その体験がとても面白くて、「古本屋しかないな」と思うようになったんです。

茂美さん 全然経験はなくて、近くの古本屋さんにまず話を聞きに行こうとなって、奈良にある古本屋さんに相談したところいろいろ教えて下さいました。
伊勢の『ぽらん』さんにも話を聞きに行ったらここでもいろいろ教えて下さいました。
最初は『古本屋』というと、ちょっと気難しい人が多いのかなと思っていたのですが、実はそうではなく、親切な人たちにいろいろ教わって開業できたという感じです。

 

分する前に本を見せてほしい。図鑑や大全集は出回りすぎて価値が低い

 例で言うと、大きな本で立派な装丁で何十巻とあるような美術全集というのは、きっと価値があるに違いないと思って、残していて、みなさん僕のところに依頼がかかります。
しかし残念ですが、そういう大きな立派な本、つまり重たくてかさばる本は、みなさん困ってしまっていて、どんどん手放されているんですよ。
するとどんどん市場にあふれてきて、買い手がつかない状態になります。
だいたい買い取りに行ったり持ち込みに来られても、当てが外れることが多くて、お客さんから「買取不可なんですか?」と言われたりします。
それと逆に、持ち主の方にとってはまったく価値がなくペラペラで汚れた本が、実はみなさんどんどん捨ててしまっているので、現物が存在しなくてそれをどうしても欲しいと言われる人がいます。
それがいわゆる『値打ちのある本』で、貴重な資料である可能性が高いです。
地元の郷土史家や大学の先生たちは、自分の研究のためにそういう本を探しているので、数が少ない分とても人気があるので、とても値段が上がったりします。
見た目は間逆なんです。
ボロボロのほうが貴重とか。
けれどパッと見ただけでは、普通の感覚ではわかりません。
面白い現象が起きてしまいます。

 

ンターネットでは限界がある。古本だからこそ知ることができるものがある

 子どもの頃から料理を作るのが好きで、料理の本には自信があると言ったら語弊があるかもしれませんが、これは良い本、これはイマイチ…みたいな嗅覚は利くと思います。

俊 僕は歴史民俗の分野が好きで、これは貴重だ!というのがわかってしまうので、ついつい買ってしまいます。
そうすると、そういう本ばかりが増えて、料理本と歴史本が多いのが特徴かな。
歴史の本は学説が20年周期くらいでだんだん変わっていくので、とても変化しています。
日本史だと、小さい頃習った『大化の改新』とかなくなっちゃったり。
そういった変化が楽しくて仕方ないので、ついつい買ってしまいますね。
今って、今のことが中心の本でしょ。
新刊も今について、今話題になっていることが、みなさん関心あることがどんどん出版されています。
それ以外のことが知りたいなとなったときに、本に頼るしかないんですよね。
インターネットで調べられる方もいますが、やはり限界があって、記述量が圧倒的に少ないです。
特定に時代の特定の人にしか興味ないときは、古本でしか探ることができないので、そこが魅力ですね。

 

書会を行っている。来年は演劇をする予定

 私は小学校の頃に、大阪から名張に越してきて、中学校のときに同級生から江戸川乱歩が名張生まれだと教わりました。
その友だちに生誕地に連れて行ってもらったんです。
名張と乱歩が関係あると、その時知りました。
それから時間が経って、こうして古本屋をはじめるにあたって、地元の乱歩に関することをしたいと思い、まず、乱歩の読書会をはじめました。
読書会をすることによって、乱歩好きの人が集まってきてくれて、こんなにいるんだということで、何かやりたいと思い、去年から、乱歩の演劇をするというプロジェクトを立ち上げました。
来年は乱歩生誕130年に当たるので、記念すべき年に乱歩の演劇をしたいと思っています。
ただ単に、エログロ・ナンセンスではなく、繊細な屈折した気持ちに共感して、今も愛されている作家なのだと思います。

 古本は今だではなく過去も知ることができるので、自分の知っている知識に幅というか奥行きが出ると思います。
そこが魅力ですね。