FM三重『ウィークエンドカフェ』2023年11月18日放送

およそ200あるという能面に魅せられて、今から27年前、能面づくりを始めたのが今回のお客様、能面師の山田秀峯さんです。
出会いは一冊の本からでした。

店で見た能面の本が素晴らしくて自分でも作りたいと思った

たまたま四日市の書店に行ったときに、能面の本があったんです。
それを見て、自分でも作れないかなと思い、10年ほど試行錯誤しましたが、このあたりでも材料も売っていないんですね。
その時は商売も忙しくてなかなかできませんでしたが、今は時間ができていたので、能面教室に通うようになりました。
月に2回です。
2時間ほど。
でも教えてもらうのは10分ほどです。
材料は木曽のヒノキです。
ここに材料がありますが、木曽のヒノキは寒いところや条件の悪いところで育つので、1年でも対して大きくなりません。
その代わり、目が細かいです。
最初は1kgくらいありますが、女面だと彫り上がりが160gくらいになります。
85%くらいは捨てることになります。
色はきれいですが、悪いところはヤニが出るんですよ。
寒いとか雪が降るとか、条件の悪いところで育つでしょう。
だから強くなるためにヤニを出すんです。
ですからヤニを抜いてやらないといけないんです。
アルコールに3〜4日浸けて、それでまたお湯で抜いて、乾燥するのに3〜4週間かかります。

 

身体が元気でいることがとても重要。心が迷うと能面に影響する

私は教室で習って、帰ってきてからまた別の面を彫っていました。
それをノートに書きながら、一人で彫れるように。
正月と、どこかに出かけるとき以外は、毎日3時間ほど彫っています、今は。
以前は5時間くらい彫っていましたけど。
蝉丸って知っているでしょ。
あの人は盲目のために捨てられたんです。
滋賀県と京都の間の、逢坂山というところに捨てられたんです。
この人はそのお姉さんなんですけど、時々心が乱れて気が狂うことがあるんです。
放浪癖があって。
それがこの逢坂山で会って、喜び合うというストーリーがあるんです。
一応、色々な資料を読んで、どういうふうな目の形だとか、資料をみな詰め込んで頭に入れて、作るときに全部吐き出すと良いとか言われます。
心と表情を写さないといけないので。
みんな違うんです。
髪を一つ描くにも大変なんですわ。
心身ともに健康でないと。
だからイライラしたりするとダメなんです。
病気になってもダメですし、常に健康に気をつけています。

 

間ひまがかかるが、能面を作っている時間はいつも楽しい

日本画の本とかにいろいろ描いてあるので、能面を見たときに写真を見て、この能面はどんな色が入れてあるんだろうかと、自分で頭の中で考えるんですね。
それを胡粉の白と混ぜて塗ります。
さらに茶色の液をふわ〜っと掛けて、自分の思った色が出るようにしなければならない。
口で言ってもダメなんです。
みんな色が違うんです、配合が。
だから、簡単なようで難しいです。
手間がかかります。
般若でも赤般若・黒般若・白般若があります。
高貴な人は白般若。
演目によっていろいろ変えます。
大天神で菅原道真公が、福岡の太宰府天満宮に流されまして、その怒りの顔です。
陰の顔、陽の顔とあり、目玉の目線が違うんです。
向かって左は少し下を向けて、右は上を向けるんです。

 

7歳の3人で展示会を開く予定。77の面を披露!

私は鈴鹿市内で面神会という会の代表を務め、能面教室を開いています。
能面を通じて出会った人たちが、私の人生を豊かにしてくれました

展示会を見て入った人もいれば、一緒に教室に通っていた人も来てくれたりしています。
広がりますよ、盟友というか。
今までとは違う友だちができました。
面は190ほど作りました。
冬は塗ることができません。
膠(ニカワ)が固くなってしまうので。
だから夏はずっと彫っていて、20℃以上になったら塗り始めます。
一緒に3〜4種類の面を作っていて、多いときは年間12〜3面作っていました。
今はちょっと手が遅くなって5〜6面しか作れませんが。
でも本当に楽しいですよ。
能面と出会ってから人生が変わりました。
不思議なもんで。
心が豊かになるというか。
友だちとも一緒の話題があるでしょ。
楽しいですよ、毎日。
77歳にちなんで、77歳3人で来年、展示会しようかという話をしています。
あまり会場が広くないので、3人で合わせて77面展示しようという話が盛り上がっていて、いま、計画を立てています。

能面は幽玄です。
味わい深く微妙な趣があるのが『能面』です。