FM三重「ウィークエンドカフェ」2012年12月1日放送

今回のお客様は、『ODAWA創林』の代表、小田和人さん。
「森から海へのつなぎ人」・・・これが『ODAWA創林』のキャッチフレーズ。
豊かな海であった故郷、鳥羽の海は、海草がだんだん減ってきていました。
原因の1つは荒れてしまった伊勢志摩の山。
この山を何とかしなくては・・と、4年前に立ち上がりました。

■山が限界にきていると感じ、間伐の仕事をスタート!

僕の仕事は林業が中心です。
山を良くしよう、海を良くしようということで、山を間伐するのが主ですね。
林業というと山を持っていて、代々続いていく・・・というイメージがありますが、僕は山など何にも持っていません。
ただ単に、「山を良くしたい」という思いから、この仕事を始めたんです。
林業が衰退して辞めていく人が多い中で「よくやるな~」「アホちゃうか~」と言われます(笑)

この仕事を始めたのはおよそ4年前。
それまでは色々やっていまして、20年ほど前に『伊勢志摩備長炭』というブランドを作ろうとしたことがあります。
風呂用炭とか、ご飯用、枕、マットを作り、三重物産展の時に、東京などで売ってもらって。
しかし当時はまだ、備長炭が健康に良いなどの効能がクローズアップされるはるか前だったので、「黒い炭と備長炭とどう違うの?」というくらいの認識。
時代が早すぎました。
備長炭の粉で油が落ちるとか、備長炭で蒸した水でミネラルが濃いとか・・・提案はあったんですがね。

その頃から山に入って、木を切って、地元の炭屋さんに焼いてもらっていた関係で、山の勉強をしていた時に、「山の木が限界や」という話を聞いたんです。

昔は山の木を薪や炭にすることで、常に整備していたのが、もうほとんどしなくなって。
炭にするのでも、これで太さが限界にまで来ていると言われて。

鳥羽から志摩にかけては、備長炭の原木がいっぱいあるんですが、木が太くなりすぎると、自然の法則で枯らすために虫がついてくるんです。
ウバメガシにも虫がついて腐らせていく。
そうして腐りかけた木は薪にもならないんですね。
せいぜい燻ぶるだけで燃えないんです。

炭を辞めても山を見続けていると、木がどんどん大きくなっていくのがわかるんですよ。
何とか切る仕事がないかなあ・・・と考えていた時に、たまたま、間伐の仕事があると聞き、取り組みを始めたんです。


■大変だけど自分の夢だから負けられない

間伐の仕事を紹介してもらって、初めての作業のことは忘れられません。
現場まで2時間くらい山を登って行くので、最初はものすごい辛くて、こんな仕事続けられるのかなあ、と。

仕事は国有林の事業の下請けでした。
素人ばっかり。
大変で、仕事は進まないし、みんなも仕事ができないし、人の分までしようと思ってもでないし、従業員の日当もどんどんかかってくるし、自分も一人前にできないし・・・。
雨の日なんかは涙が出てきたこともありましたよ。

だけど自分の夢やで負けたらいかんと思い、現在に至ります。
最初はド赤字でしたよ。
今もやけど(笑)

今でもちょくちょく辞めたくなる時はありますよ。
やはり利益を出さなきゃならない時に、なかなか難しい部分があってね。
僕は、一体何をしているんだろう、と思うがあります。
だけど、
「自分で何とかしていかなあかん。オレがやめたら誰がするんや」
と、勝手に思い込み、自分で自分をけしかけてやている状態です(笑)

それから、林業といえば尾鷲や大台町などが多くて、この伊勢志摩を拠点にしているのは珍しいんです。
なので「そんなとこで利益がでないだろう」と言われることも多いですね。
木を切って切る、売る木も少ない・・・だけどここで『業』として成していくことが、日本の林業に繋がっていくのと違うかな、と。
お金に変わるものがないところで、いかにそれを『業』に変えていくか、ということを考えながら進めていかなきゃいけないのかな、と。
その辺りを切磋琢磨しているところです。


■山はタンク・木はポンプ

木を切るという事を『悪』だと考えている人が、けっこう多いですね。
植林しなければ、木を植えなければと。
しかし、木を切らないで7年10年ほっといたら、崩れてきたりして、もっと山がひどくなる。
腐葉土も少なくなってペラペラになっていたら、木を植えたくても植えられなくなる。
それをもっとわかってほしいですね。
木を切っていると「自然破壊だ」と言って怒る人がいるけど、違うんですよ。

山の荒廃が進み、鹿やイノシシ、サルたちが山里に下りてくるようになりました。
木が大きくなりすぎてしまったのです。
昔は20年から25年のサイクルで木が切られてたのに、伊勢志摩の山は、人の手が入ることなく何十年もそのままになっているところがたくさんあるんですす。

自然を放っておくわけにはいきません。
竹なんかでも竹林から侵出して山の方に行ってしまっている。
今、全国的に、山の水が減っているんですよ。
水にとって、山はタンク、木はポンプの役目をしているんですが、ポンプが増えすぎて、全部吸い上げていくため、谷や川に帰っていく水が減ってしまっています。
だから栄養が豊富な水も少なくなっているんです。

地球上の水の量は、循環していながら決して変わりません。
海水から蒸発していく水の量と、吸い上げてから蒸散していく水の量では、吸い上げて蒸散の方がスピードが早いそうなんです。
それから、大学の先生が言うには、「水は人につく」と。
人が生活している場所には水があり、生活しだすと木を切って使うので、どんどん水が出てくるようになるんです。
木をもっと切って、水を出さないと、2030年には世界中が水不足になると言われています。
水で戦争が起きる、ということも言われています。
日本のように水が出てくる国というのは、実は世界でも数少ないんですよ。

木をもっと多くの人達につかってもらうために僕が考えたのが、薪を使う人を増やすこと。
まずは、薪ストーブのお店をオープン。
そして今年の11月、古民家を改装して田舎暮らしが体験できる『いせしま自然村』を伊勢、横輪町に作りました。
ここではバーベキューやピザ作り、薪割り体験などができるんですよ。
1人でも多くの人に、楽しみながら山の大切さを知ってもらいたいですね。


■夢とロマンで山を守る!

実際に山に入って行くとわかりますけど、腐葉土がなくなって赤土になっているところがたくさんあります。
雨が降ったらどんどんと流れていくので、根っこがむき出しになっているところもあり、けっこうひどい状況になっているんです。

これ以上木が大きくなると、山が飛んでいくんじゃないか、というところもあるし、実際、山に入って見て欲しいです!

僕らが小さいな頃・・・昔の山というのは、こんなに木がボウボウしていなかった。
もっと木が細くて、たまに大きい木を切るために山に入っても、探すのが大変だったほどだったんです。
それが今では、どこ行ってもでっかい木ばっかり。
良くないことです。

植林・人工林でもそうだけど、土がもう減ってきている状況なので、木を切ったら横に倒して、土の流れを防ぐという作業をしていかないといけない。
木を切ったら全部出すのではなく、『土留(どどめ)』をして土を留め、そこにまた草木を生えさせる・・・そんな作業も大切なんです。

ところで三重県の『三重』って『3つを重ねる』と書きますよね。
林業、農業、水産業を重んじてこその三重。
重んじることによって三重が活性化していくと思うんですね。
さらに三重県というのは、日本の縮図に見えませんか。
森林面積や、北は雪が降るし、南は温かいし。
この三重県が一次産業で活性化して立ち直る事が出来れば、日本も立ち直ることができるんかな、と思って。
だから一次産業を頑張っていこうと思っております。

こういう考えに共感してくださる人もいますが、基本は夢とロマンを追い求める、男一匹ガキ大将なので、なかなか一緒にやっていくのは難しいかなあ、と思うんですね(笑)
僕の発想が極端であったり、夢の方に行き過ぎてて、現実はどうなんだという話もあって。

自分の思いで続けながら、大学の先生の話を吸収しながら、自分はやっぱり間違っていないよなと。
何とか多くの人に賛同してもらい、関わってほしいなあ、という思いでやっています。