FM三重『ウィークエンドカフェ』2023年12月16日放送

伊賀の森のなかにツリーハウスが目印の素敵な場所があります。
今回はボタン職人の長瀬清美さんがお客様。
木や鹿の角、陶器や貝など様々な素材を使ってオリジナルのボタンが作られています。

学を卒業してボタンの会社で営業とボタンの試作品づくりをしていた

学校を出て何をしようかなと考えていたとき、紹介で、大阪船場にあるボタンの卸屋さんに縁があって就職しました。
それからなので、長いですね。
卸屋さんでしたが、アパレル向けのボタンを販売することになりました。
オーダーになるので、試作をできる人を雇いたいということで、小さい会社なので営業兼試作係として勤めていました。
デザイナーさんの要望を聞いて、また納品してくださる工場さん…金属やプラスティックとかいろいろ得意な工場さんがありますので、どこでどう作ってもらうかというのを考えて試作して。
工場で作れないものを作ってもしょうがないので、試作して、工場にお願いして、納品してもらう、という仕事でした。
昭和40年代くらいまでは、みなさん洋裁をする人が多かったので、自分で洋服を作ってボタン屋さんにボタンを買いにいく人も多かったです。
しかし私が就職した頃から、既製服が主流になってきて、ボタンも既製服屋さんに卸すことが多くなり、町のボタン屋さんが寂れていきました。
ですから、たまたまそういう仕事をはじめたので、いろいろな工場に行かせてもらい、色々な素材を知る勉強になりました。

 

鹿

の角は硬くてボタンに適している。小ロットで受注している

近くでジビエを扱っている知り合いから、「鹿の角が余っていますけど、なにか使いますか?」と言われて、加工してみたらとても硬くて象牙のような色合いで、とても良い材料でした。
ただ、いつまでに100本揃えてくれというのは無理なんですよ、天然のものなので。
あるときにはあるという感じなので、小ロットで注文をくださるデザイナーさんに卸しています。
天然素材の良いニットをを作っているデザイナーさんだと、ボタンもプラスティックではなく質の良いものを使いたいという要望があります。
一番大変なのは納期が短いこと。
急いで作って欲しいと言われるのが、とにかく一番大変。
洋服の納期が決まっているので、本当は丁寧に作りたいのに『急いで!』と言われると、一番困りますね。
下請けの仕事以外に、アクセサリー展とかギャラリーさんの企画展で、なにか作って欲しいと誘われたりしますので、そういうときはオリジナルで自分で考えたりします。
伊賀は伊賀焼の産地で、近くにたくさん素晴らしい陶芸家がいらっしゃいます。
なかでも私が好きな陶芸家さんに、パーツを焼いてもらって、それで紫檀で枠を作ってボタンを作ったり…。
ときどきそういう遊びもやらせてもらっています。

 

ザインにあったボタンを作るのは楽しい。一緒に洋服を作っている

注文されるのは、そこに手彫りなどの『手加工』をしてほしいということが多いです。
機械で作るボタンだったら大手が作ったものがありますので、それ以外のちょっと凝ったボタンという注文が多いので、けっこう手彫りをやっています。
デザイナーさんの作られる洋服もわかって、お互い提案できる関係になるととてもスムーズですし、そこの洋服ができるのも楽しみですし。
いるときに、「こんな感じでできますか?」って連絡いただいて、じゃあこんなのはどう?という感じで試作を作って、もうちょっと薄くとか大きくとか、手掘りを入れてとかやりとりして、決まってから本生産という流れになりますね。
実際やってみたら、こういう細かい作業が好きだったみたいです、私。
それまでは絵を¥が好きで描いていて、立体を作ろうとはそんなに考えたことありませんでした。
が、けっこうハマりました。
問屋に8年おりましたが、自分でペースを作って、自分で仕事を決めて選んでやっていくのが性に合っているのかなと思います。
ほぼ機械で作るものだし、安いボタンはみんな中国になってしまったので、ボタンの工場自体も減っているし、職人さんも高齢化で減っているし…個人でボタンを作っているところは、私以外、聞いたことないですね。

 

賀米を作っている若い人たちのために米の販売以外にできることはないかと考えた。米粉のピザを作っている

地元の伊賀米を生産しようという若い人がいて、米を直接年間契約で販売したり、道の駅で販売したりする以外に何かできないかを考え、米粉にしてお菓子やパンができないかなと。
米粉入りピザを作ることはできないかなと企画書を出したところ、補助が出るのでやりましょうということになりました。
土日だけオープンするピザ屋さんをはじめて9年目になります。
『イガピザ』というお店です。
どっちも丸いですねと言われます。
ボタンもピザも。
まさかピザ屋をやると思いませんでした。
この近所でも小学校が廃校になってしまい、どんどん人が減って寂しくなっているから、若い人が楽しんでもらえるような…あわよくば帰って来て事業をしてくれるような雰囲気ができたら良いなと思って。
賑やかしで土日営業しています。
ピザ屋さんに来るお客さんが、これをどうしても5個ほしいと言うので、手が空いたら作ろうと思っています。
上等な舶来のコートがクリーニングでボタンが割れてしまって、でも、お客さんに弁償するのにどうしてもこのボタンが良い、どうしてもこれを作ってくれと見本を手に持ってくるお客さんが、たま〜にいます。
名古屋の方のクリーニング屋さんで。
小さなパーツですが、お洒落の中では縁の下の力持ちという感じですね。
ボタンとピザで忙しいですけど、オリジナルのボタンをデザインしているので、ボタンから洋服を考えてもらえるような、そういう楽しいボタンを作りたいなと、ずっと思っています。

部品の一つとしてボタンを作って、お洋服になって完成します。
その『部品』というところが、とても可愛いと思うんですよ。