FM三重『ウィークエンドカフェ』2024年3月16日放送
桑名の鋳物の始まりは今から500年ほど前。
鉄砲が製造され、その後は灯ろう、鐘、農機具や鍋などが作られました。
今回は『三重県鋳物工業協同組合』理事長の三輪和弘さんがお客様です。

元前4000年から鋳物は作られている、東大寺の大仏が最古の鋳物

一番最初の始まりは紀元前4000年。
みなさん聞いたことのある『青銅器』とか、あるいは刀剣。
紀元前に青銅器が始まり、ヒッタイトとかあのへんで『鉄器』、鉄の刀が始まったと。
そして17世紀頃まで飛んで、中国で鉄鉱石を使った精錬というのが始まりました。
そのあたりから日本にも『鋳造』が入っていました。
青銅器だけでいうと、奈良の大仏が世界最古で最大の鋳造物になります。
日本ではそういう仏教関係だったり供物関係として発展してきました。
戦国時代に、鎧・兜・刀などが鋳造で作られ始ました。
その中で江戸時代のはじめに、本多忠勝が桑名城の藩主になり、桑名で『御鋳物師』という鋳物を推奨し、鋤や鍬や鍋などを作り始めました。
関東地方では川口が鋳物を推奨していたため、『西の桑名・東の川口』と呼ばれ、鋳物の産地として昭和の戦後くらいまで、ずっと続いているという形ですね。

 

物の原料のカーボンが油を染みこませるのに適している

鋳物は鉄とカーボンとシリコン、この3つが原材料として重要な材料になります。
そのうちのカーボンは、基本的には鉄の中でいうと穴というか気泡みたいになるんですね。
そこに油が染み込んだりとかするので、カーボンが入ることによって良くなるんです。
機械系のものの話になると、そのカーボンが振動吸収といって、いろいろなものの振動を吸収してくれる。
エンジンとか。
そういうのに鉄が使われる。
特に鉄の中の『鋳物』が使われます。
鉄を使った商品というのはいくつかありますが、一番リサイクル性がよくSDGsにあっているものが鋳物と言われています。
ほとんど100%リサイクルできるんですね。
ですから時代にも合っているのかな。
鋳物の欠点として言われるのが、重たさ、そして錆びるということ。
みなさんが勘違いしているのは、錆びると脆くなって壊れてしまうと思っていますよね。
これは鉄だとそうなんですが、鋳物になると表面に酸化鉄という被膜を作って、それ以上は中へ浸透しないという特性があります。
鉄柱が折れた、看板が折れたというのがありますが、最近、太陽光パネルの下の部分だけを鋳物で作りましょうと。
なんでかというと50年100年経っても腐らないから。
大きなビルの手すりのコンクリートと接する部分、そこだけを鋳物で作りましょうとか。
そういう話が業界からは来るのですが、一般の方はあまり知らない話ですね。

 

Iや人工知能を使って業種の大変なところをカバーしていく

私は人工知能の研究をしていて、「鋳物屋さんは継がなくていいよ」と父から言われていましたが、バブルが弾けてしまい、誰も後を継ぐ人がいないということで、お前継げという話になりました。
30年前から人工知能の研究をしていたので、どこでどう使うかということはわかっているので、今はそういうのを開発したりしています。
工場内にモニターを何十台と置いて、従業員が映像を見ながら製品を作ることができるように。
『こういうところは気をつけなさい』、というのを映像で出てくるようなのをやったり。
更にカメラを使って鋳物の検査をしたり。
いちばん大変なのが、砂の中で液体を個体に固めていますから、いらない部分『バリ』と呼ばれる、尖った必要ないところができたりするんですよ。
それをグラインダー、サンダーというカッティングする機械を使って擦っていくんです。
それはもう、何百年も前から同じ作業をしているので、人工知能を使ってできないかと。
AIにバリをバリとして認識させ、そこをレーザーでカッティングしていく。
そうすると擦るという作業がなくなるので、粉塵が出なくなるんです。
鋳物工場で発生する粉塵を止めることができます。
他の部分、溶解する部分とか造型する部分とかはもう8割9割は自動化をしているのですが、後処理工程と呼ばれるところが人間による作業でしかできなかったんです。
すべての液体を個体にするものには使える技術になるので、日本の人手不足問題には非常に良いのかなと思い、やり始めています。

 

Dプリンターを使って自分がデザインした商品がすぐできるようになる

最近は3Dプリンタが出てきたりしているので、頭の中でイメージしたものを3Dプリンタで作って、それを今度は鋳物やアルミに置き換えることができます。
つまり、自分のアイデアをすぐ商品にできるという環境がどんどんできあがってきています。
大量生産で同じものを作るというのも一つの産業なんですが、自分のオリジナルのものを作るというのも、人間の求めているところだと思います。
両方に対応できる鋳物というのは貴重なものだと思います。
多分、今後どんなに進歩していこうがなくなりません。
なぜかというと半導体を作る装置にも使われているし、車や加工機、家庭用の鍋、フライパン、ほとんどのものに使われています。
産業用にも使われていますしね。
今までは『厚さ』に制限がありました。
5mmか3mmまでしか作ることができなかったんですけど、ウチでやってみたら1mmのものも作ることができたんです。
そこにあるフライパンが1mm。
そういうものも簡単に作れるし、モーターみたいなものも作れる。
電子レンジに入れられるご飯釜は、1〜2合のご飯を7分で炊くことができます。
これは私が遊びで作っているので、商品ではないのですが、そういうこともできる、ということです。

同じものをずっとやるのも大切ですが、新しいことを考える、新しいやり方を考えることも大切です。