FM三重『ウィークエンドカフェ』2013年3月2日放送

今回のお客様は『四日市とんてき協会』の代表理事であり、四日市大学総合政策学部の准教授でもある小林慶太郎さん。
物事が決まっていくプロセスを研究したり、町づくりへのアドバイスなども行っています。
その経験から、自分自身がわかったことを学生たちに活きた言葉で伝えます。
物事を決めるってとっても難しいんですね。

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■住民と一体となる地方自治体の取り組み方

自治体でも、住民の方と一緒に取り組みましょう、みたいのが多いじゃないですか。
でもそうは言っても、実際にどうするのかわからないんですね。
そういう時に僕が呼ばれて、「小林、座長をしろ」となり、僕が取り仕切ることになるんです。

最初はみんな、言いたいことを言うわけです。
市民の方を呼べば「役所不信」みたいなことを言うだろうし、役所の側も、「好き勝手言う市民なんか使えないぞ」と思っている人がいる。
まったく立場の違う人たちが、みんな同じテーブルにつくわけですから、最初はお互い不信感丸出しでケンカ腰。
お互いに言いたいことだけ言って、全然聞く耳持たないんですね。

そこで僕が、

「この人の言っていることもわかるじゃん」
「この人は言葉はキツイけど、実はこういうこをと言ってるんじゃない?」

など、ガス抜きをしながら進めることに。
結局、この会議の中で目指しているものはあるのだから、共通項を拾いだして、まとめていこうよ・・・と、何回も会議を重ねながらやっていく。
そんな仕事も最近よくさせてもらています。

決めるということは民主主義のコスト。
時間もかかるし、手間もかかるし、面倒といえば面倒なんだけど、それを丁寧にすることで、大方の人が納得できる。

「私の考えとは違うところもあるけど、みんなで考えたことだし」
「自分の意見ばかり通そうではなく、あの人の意見も入れないとかわいそうやな」

最終的に、結果としてこう思ってもらえたら、成功だな、と思っています。


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■学生たちの気づき、島での体験

僕は『四日市とんてき』にも取り組んでいますが、四日市大学の准教授としての取組も行なっています。
ゼミが取り組んでいるものの一つに、に志摩市にある渡鹿野島の活性化があります。
島の振興を学生とともに考えていることで、地域に密着した活性化ができればな、と。

例えば、島の人には当たり前すぎて気づかなかったことに、学生たちが「これ面白いですよ」と言うことで気づいてもらったり。

面白い話といえば、島の人たちと島探検をした時に、斜面を通る道があったんです。
そこにサワガニのようなカニがいたんですが、そのカニは水の中ではなく土で、しかもかなり切り立った斜面を登ってくるんですよ。
僕らの概念としてはカニは水の近くにいるものなので、学生たちが驚いたんですね。
そうしたら島の区長さんが、
「こんなものが面白いのか、君等は。こんなんいつでもどこでもおるぞ」と。

本当に、島の人たちからしたらなんてことのない日常の光景が、街の学生が行くと「わあっ!」という驚きであったり。
そういうものを丹念に拾っていくと、いいんじゃないかなと、


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■外から来たからこそ気づいた『とんてき』!

僕はもともと四日市の人間ではなく外から来た者です。
だからこそ気づいたと思うのですが、車で街を走っていた時に、ふと気づいた。

『四日市名物大とんてき』。

プラっと入った喫茶店で、『今日のランチ/とんてき』とか書いてあったりする。
中華屋、ラーメン屋、洋食屋、居酒屋・・・いろんな業種で『とんてき』を見るな、と。
でも名古屋とかに飲みに行っても見たことがないし、県内でも津ではまず見ない。

そこで、この辺にしかない『とんてき』を使ったら何かできるのではないか、と。

みんなに提案したところ、最初は半信半疑で、「そんなもん」と言う人もいたし、中には四日市市民でも食べたことがない人もいました。
そんな状態だったんですが、他にアイデアもないし、ちょっと調べたところ、『ご当地グルメ』がブームだと。

ところで名古屋も、万博までは週末ほとんどお客さんがいなかった街なんです。
『観光客が来ない街』と言われていたほどだったんですね。
でも万博以降は、万博に来たお客さんがどうせ泊まるなら、と名古屋に泊まって、『名古屋めし』というのがあるのを知り、それがブームになって、現在では週末にホテルを取るのが大変になっているんです。

そうした成功例もあることだし、これでやってみるかとなったわけです。
最初はまず『とんてきマップ』の試作版を作りました。
最初のマップを作ったのが、2008年の2月29日。
『肉(29)の日』であり『ニンニク(2/29)の日』でもあった。4年に1度しかない。
まさに『四日市とんてき』の日。
この日に出さなあかんといって頑張ったんですよ。

それで、ようやく目に見える形にたどり着いたので、これで終わろうかな、と思っていた矢先に、メディアが取り上げてくれたんです。
そうすると「関連商品を開発したい」という人も来るじゃないですか。
終われなくなっちゃった(笑)。

そこで新たな問題が。
例えば「とんてきソースを作りましょう」となった時に「~~料」みたいのが入ってくるような仕掛けになりますよね。
その時に組織として法人格がないと、取引の相手として企業さんも困るじゃないですか。
なんか団体にしなくちゃ、とみんながいうので僕は「そうだね!」と。
あくまでも僕はアドバイザーですから(笑)

「そうだね!みんなで組織を作ったほうがいいんじゃない?」。

と言っていたら、

「そもそも『とんてき』に最初に気づいたのは先生じゃないですか。いつまでも『そうだね』じゃなくて、ここまで来たら仲間として、いつまでも高みにいるんじゃなくて、こっちに降りてきて下さい」

と言われてしまった。
そりゃそうかと、僕も1メンバーとして参加させてもらうことになった。

ところで組織にするからには代表が必要ですよね。
誰を代表にするかとなった時に、メンバーに言われたのが、

「もともとは『四日市とんてき』は市職員のグループってことで始めたけど、市は一銭も援助してくれていません。
最初は『職員研修を受けた人たち頑張ってくれ!』なんて言ってましたけど、ハシゴ外されて、僕たちはまったく孤立無援でやってきました。
なのにここで市の職員が代表になると、結局『あんなの市役所別動隊だろ』と市民の方たちから見られてしまう。
僕たちはあくまでももう、仕事から離れて、まったくの時間外のボランティアでやっているんです。
『街を良くしたい』という思いだけでやっているのに、市役所別動隊みたいに思われるの、悔しいでしょ、先生」

ま、それは確かに悔しいですよね。
で、誰が代表やるかってなった時に、メンバーがみんな市の職員だったので、

「え!? 俺!?」

ってことに(笑)


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■三重県で初めてB1グランプリに出店!『四日市』という街を知ってもらう!

『四日市とんてき』は県内からは初めて、ご当地グルメで町おこしをしている団体の祭典『B-1グランプリ』に出展しました。
その後、それを見ていた『亀山みそ焼きうどん』や『津ぎょうざ』名張の『牛汁』、今度は松阪の『鳥焼き』も入ってくるんですけど、互いに刺激を受けて波及していって、県内みんなで三重県の魅力を発信していこう、みたいになってきたのは、僕らとしても嬉しいですね。

『B-1グランプリ』は味とか食べやすさはもちろんあるんですけど、根底に流れているのは、地域づくりや地域のために、ということなんです。

『B-1グランプリ』は正式には『B級ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会』。
町おこしをしている団体の連絡協議会ということで、実は『食』がメインでないんです。
よく『食の祭典』みたいに放送されるんですけど、本当はそうではなく、『食を使った町おこしをしている団体の祭典』なんです。

イベント時には、こにゅうどうくんに来てもらうこともありますし、四日市を拠点にしているミュージシャンの方にステージを取り仕切ってもらい、ものまねや歌などの他、ステージで四日市を宣伝してもらったり。
歌歌ったりとか踊ったりとか、僕はできないので、その辺りはお任せしています(笑)

ステージで四日市をPRしている間も、僕たちはブースにいて必死でお客さんに、四日市と『四日市とんてき』をPRしているので、ステージを見ることが出来ないんです。
なので遠くから「がんばってくれよ~」と応援しているワケです(笑)

『B-1グランプリ』には大行列ができます。
その待ち時間、並んでいるお客さまには水沢のお茶を飲んでもらい、とんてきの最終仕上げは万古焼の陶板で焼き上げます。
「四日市っていい所なんですよ、一度来てくださいね」と声をかけながら。
イベントを通して、四日市のファンを増やしていきたいですからね。

僕が四日市に住むようになって12年になるんですが、本当に住みやすい街ですよ。
『四日市とんてき』力だけでは難しいかもしれませんが、四日市がいい街だという認識を、もっとたくさんの人に持ってもらえると嬉しいですね。

四日市という街の素晴らしさや暮らしやすさをわかってくれると、僕の職場である四日市大学にも全国から学生を集めやすくなるかもしれないし、街にもいっぱいお客様が来るようになるかもしれない。
街のイメージが良くなるということは、暮らしているみんなにとっても良いことだと思います。

中には「しょせん四日市はこんな街やでな」と諦めに似た声を聞くことがあるんですけど、そうではなくて、みんなで四日市の魅力を伝えていくことで、もっともっと四日市を見てもらえる。
潜在的な能力はたくさんあるので、それを知ってもらうことで、四日市をもっと盛り上げていこうよ・・・抽象的ですけど、そんな風に思っています。