FM三重『ウィークエンドカフェ』2013年5月18日放送

今回のお客様は、紀伊長島の駅前にある創業70年のお寿司屋さん『万両寿し』の三代目、今田信弘さん。

『万両寿し』のサンマ寿司は、普通のサンマ寿司の他、焼きサンマを使った『焼きサンマ寿司』もあるんですよ。
これを食べるために、遠方からわざわざ足を運んでくるお客さんもいるそうです。

お店は年中無休。
朝は、6時に開店。
創業以来ずっと変わらず、伝統の味を受け継いでいます。

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■『万両寿し』の一代目は、大阪で修行したお祖父さん!

一代目の祖父は、大阪でお寿司の修行をし、戦争が起きたために長島に流れてきた人なんです。
最初は長島の市場で仕入れた魚を、列車で大阪などに列車で運んでいた・・・つまり、魚のブローカー的なことから始まったんです。
昔の担ぎ屋さんの始まりですね。

そして祖父が作った寿司を、魚の行商のおばちゃんたちが売りたいと言ったことが、お寿司を行商でいろいろな場所で売るようになったきっかけです。

おばちゃんが、干物や引本の天麩羅や尾鷲のものを風呂敷に包んで、汽車に乗り。
そして大内山で降り、柏崎で降り、松阪まで行って、それを駅に置いてあるリヤカーに乗せて引き売りしたのが、『万両寿し』の最初の始まり。

今でこそパックに入ったお寿司というのは当たり前だけど、それをあの辺りで初めて取り入れたのが、ウチの祖父です。
サンマ寿司を売るようになったのは35年ほど前からだそうです。

今はだいぶ行商さんも減りましたが、それまでずっと、松阪から尾鷲まで、各街の行商さんが長島に魚を仕入れに来た時に移動販売するために『サンマ寿司』を持って帰っていました。

だから今でも、松阪やら大台町にウチの商品を持って行くと、行商さんから買っていた人が多かったため、ウチの商品を知っている方が多い。
「誰々さんから買ったことあるよ~」みたいな。
店が出向かずとも、たくさんの行商さんたちに、既に宣伝していただいていたんですね。
ありがたいです。


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■最初の普通列車は、紀伊長島で30分停車。待ち時間にサンマ寿司!

最近、JRの『青春18きっぷ』を使って熊野古道に行かれる年配の方が多いんですが、紀伊長島駅に11時に到着する普通列車は、ここに30分間停車するんです。

駅から『万両寿し』までは徒歩1分なので、停車時間の間にサンマ寿司を買いに来られる方がけっこういらっしゃいますね。
で、熊野古道で食べて、17時とか18時に紀伊長島に停まる汽車で帰ってくると、今度は停車時間が5分ほどしかない。
すると店に「ホームまで配達してください」と電話がかかってくる。
サンマ寿司を持ってホームに行くと、気車の中から、「こっちこっち」と手招きされるんです(笑)

季節ごとに来られるお客さんは、ウチのサンマ寿司を駅弁代わりに買ってくださっているようです。
『青春18きっぷ』だと各駅停車の列車にしか乗れないので、帰りにまた夕飯を調達して帰ると。

ホームで売っていないのにホームまで配達しているので、中には「幻の駅弁やな」と言う人もいます(笑)


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■毎朝ごはんを炊いてくれるおばちゃんは勤続何年!?

店でご飯を炊いてくれているおばちゃんは、僕が生まれる前からずっといるんです。
もう78歳くらい。
僕の母が73歳なので、母が嫁いで来る前から、その人がいたんですね。
だから母じゃなくて、その人が会長なんですよ(笑)
そのおばちゃんは毎朝4:30には店に来ています。
僕が降りていくのが5:00。
昔からずっと変わらないサイクルです。

昔、コンビニがなかった時代には、釣り人が紀伊長島まで来ても、早朝から開いているのは『万両寿し』しかありませんでした。
なので国道からわざわざ中に入って、ウチで弁当を調達して魚釣りに行く人が多かったんですね。

それからもう一つ。
旦那さんが魚釣りにばかり行っていたら奥さんが怒るでしょ。
でもウチのサンマ寿司を買って帰ったら、次も喜んで送り出してくれるそうなんです(笑)
釣った魚は喜ばないけど、こっちは喜んでくれている・・・嬉しいですね。
そういう形で、釣り客にはお土産として『サンマ寿司』を活用してもらっています。
島勝や熊野から・・・「今、◯◯を出たから作っておいて」ということが多いです。


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■こだわりの味!

すし飯は大阪の寿司の流れを汲んでいるので、しっかり酢を効かせて味を付けています。
だから次の日に食べても酢ッ気が止まらない。
関東の方の酢加減は、握ってすぐに食べるようの味付けになっているので、日持ちする味付けではないんですね。

サンマは北海道のものを使っています。
昔はこの辺りで揚がるサンマを使っていたんですが、食べた時に硬いと言われ、色々な場所のサンマを使ってみた結果です。

今は北海道の鮮度の良いサンマを、1年分魚屋さんに仕入れてもらって預けてあります。
それを一から手開きで開いて。
塩の量も冬場と夏場では違うんですよ。
魚を見て、汁気の量を目で判断して、塩をします。

一般家庭だと塩を落とすのは水ですよね。
でもウチは、開くところから漬け込むところまで、水は一切使わないんです。
塩をした後、特殊な酢で漬け込む前に、一匹ずつ骨のチェックをして、塩を酢で洗い流して本漬けする。
丸一日漬けて、翌日にようやく食べられるんです。
けっこう手間が掛かっているんですよ。

でもその分、食べてもらった時に、まったく生臭みがありません。
水気を使っていないので、純粋な旨味だけが残っているんです。

これはぜひ、実際に食べていただきたいですね。

それから『サンマ寿司マップ』って知ってますか?
東紀州地域でサンマ寿司を扱っているお店が掲載されているんです。
マップの3番に、ウチの『万両寿し』が載っています。
このマップを持って、本当に朝6時に開店しているか確かめにくるお客さんもたくさんいるんですよ!
ここをスタートに、色々な味のサンマ寿司を食べてくださいね!