「ふれあい」VOL.4 2007年9月号

故郷、大紀町大内山米ヶ谷地区の活性化のために立ち上がった、小倉公守さん。
2001年4月に米ヶ谷地区活性化グループ「膳」を設立し、農業を通じた町の活性化に取り組む!

まず『膳』代表の小倉さんにお話をうかがいました。

もともと私は電化製品会社に勤めるサラリーマンでした。
農業をしながら悠悠自適な暮らしがしたいという夢があり、57歳で早期退職し、退職2年後に農業の道へ転進しました。

しかし、高度経済成長時代に名古屋や大阪などの都市部へ移り住む人が増え、地域内では過疎化、高齢化が進み、農地が休耕となっているところが多くありました。

私が子どもの頃から馴染み深かった農業の風景がなくなりつつあり、故郷の荒れた田畑を何とかしたい。
もう一度、農地として使える土地に取り戻したい。
そんな思いから仲間4人とともに結成したのが米ヶ谷地区活性化グループ『膳』です。

この『膳』には禅(人の心)、善、繕というたくさんの意味が込められています。
そのなかで『膳』は食膳を整えることを現し、故郷の農地で安心して食べられるものを作っていきたい。
そのために安心して作物を育てる場所を再生させることを目指して活動しています。

小さなことから一歩ずつ『今、私たちにできること』をキャッチフレーズに、最初は耕作されていない土地を借りて、荒地を耕すことからはじめ、そば作りをはじめました。
何年も放棄された田んぼでは米作りができないため、米の代替作物が必要だったのです。
しかし、この地域は昔から雨量が多く、水分が多いとうまく育たないそば作りでは満足な収穫ができないという問題がありました。

マコモとの出会いが新たな一歩に!

天候に左右されやすいそば作りを続けていた私たちに新しい一歩を踏み出させてくれたのが、三重県中央農業改良普及センターの西嶋政和さんから教えてもらったイネ科の植物『マコモ』の存在でした。

皆さんはマコモをご存知ですか。
はじめて聞く方もみえると思いますが、高さ2mにも成長する植物で、茎の部分が食用として利用されています。
中華料理の中では高級食材として使われています。食物繊維などが豊富で健康面への効果も期待されており、血液をキレイにしたり、美肌効果があるといわれています。
また、無農薬で栽培するのも特徴です。

マコモは稲を作るよりも作業が容易で、水を切らさなければ今の土地でも十分に栽培が可能で、もともとこの地域は雨量が多く、マコモの栽培に適しています。
私たちの活動には最適なものです。農業から離れていた高齢者の方が、もう一度、農地を使って育てるのにも適しています。

毎年秋には、皆さんにもマコモの魅力をもっと知って頂けるように、マコモの収穫祭を行っています。収穫体験をはじめ、料理家の北村光弘先生をゲストにマコモ料理の試食などを行っています。

自分たちの思いつくままに

私たちの活動は毎日の日課にしていることの延長線上です。
例えば、かつて林業で栄えた頃の遺産である人工林が、時代の移り変わりとともに放置されたままになって残っています。
今では民家の目前にまで人工林が広がってきており、山から下りてきた猿などによる農作物への獣害も多く出ています。
そこで県の環境部とともに猿の群れの生態を調査したり、「猿落君」という猿害防止柵を試験的に運用するなどの取り組みにも携わりました。

その他にも、世界遺産「熊野古道ツヅラト峠」を訪れてくださる皆さんに地区の魅力を伝える活動として、入口付近で人工林を伐採して桜・紅葉の植樹や、れんげ・ササユリ・そばなどの季節ごとの花を楽しんでいただけるよう遊歩道の保全・整備の取り組みを行っています。

また、「宮川流域ルネッサンス協議会」地域案内人の活動や東海自然遊歩道保全パトロール員などの活動もしています。小さなことですが、故郷のためにできることはたくさんあります。

 私たちの目標は、この米ヶ谷地区に住んでもらえる人を増やすことです。
人に住んでもらい、にぎやかな地域にしていきたい。
私たちが開拓している農地を生かして農業をしてもらいたい。
そして再生した農地を守り育てていってくれる後継者になってもらいたいという思いで活動しています。
そのために県や役場にも協力をお願いし、子どものみえる家族の人が、私たちの地区に住んでいただけるよう空き家を用意するなどの取り組みも行っています。