「ふれあい」VOL.6 2008年3月号

大平つつじ山のヤマツツジや山野草を守るために、10年以上も活動を続けてきた奥伊勢山野草の会。
長い時間をかけて育み、守ってきた自然の大切さを皆さんに気づいてもらいたい

「一つ、一つ、できることを続けてきただけなんです」そう、気さくにお話をしてくださる
小倉 康正さんに、生き活きとした活動内容について語っていただきました。

私たちは、ヤマツツジの名所として知られる大平つつじ山の自然を守り、そこに生息するササユリなどの山野草を保全し、増やすことを目的として活動しています。

大平つつじ山は、約6ヘクタールに及ぶ大きな山。
初めは私たち自身、どこから、また何を始めたらいいのか分かりませんでした。
そこで、ササユリの種を拾ってきてはハウスで球根まで育てて山に返したり、草刈りをするなど、できることから始めていく、それが私たちの活動のやり方になりました。
結成当時50名いたメンバーも現在では、高齢化などにより18名と減ってしまいましたが、コツコツ活動を続けていくうちに、結成から18年目を迎えました。

自分たちにできるのは、若い芽が育つ手助けをすること

かつては山から薪を取ってくるなど、暮らしの一部であった人と山とのつながりがなくなっています。
人が入らなくなった山は荒れ、今では、ヤマツツジは苔むした老木ばかりが残っています。

また、私たちが保全のために植えたササユリの球根は猪に食べられ、せっかく育った山野草の新芽も鹿に食べられ、植物の世代交代がなされないという大きな問題を抱えています。
自然の循環サイクルが正常に行われていれば、花が咲き、種が実り、その種が芽吹き、自然に生えてくるのですが…。
今では減り続けていくヤマツツジや、ササユリを何とかしなければいけません。

ヤマツツジの挿し木やササユリを育てるには高度な技術が必要で、人の手ではなかなかうまく育ちません。自然に生えてくる山の環境を、どう守っていくのかが大事です。

そこで、私たちは、町が大平つつじ山の雑草の刈り込みなどの手入れをする際に、種が落ちる前の枝を誤って刈らないように時期をずらしてもらったり、若い芽が誤って切られることのないように目印をつけて注意を促しています。
せっかく山の手入れをしてもらっても、雑草と間違って若い芽を切ってしまっては意味がありません。

急な斜面にも関わらず、ヤマツツジの若い芽を守るために、雑草を刈り、若い芽に目印をつける活動をしています。
長い時間をかけて育み、守ってきた自然の大切さを皆さんに気づいてもらいたい。

ヤマツツジでも、ササユリでも、種から育てて、山に戻して花を咲かせるまで、5年という長い時間が必要です。
また、多くの費用がかかります。
私たちは、こうして育まれてきた自然がいかに大切であるかを皆さんにも知ってもらいたいと思っています。

今年は、2年かけて山に戻したササユリの球根が花を咲かせるのではないかと楽しみにしています。
 このような取り組みを通して、地元の方にも故郷の景色に注目してもらえるようになれば…。このままでは故郷の美しい自然がなくなってしまう危機が迫っていることを知ってもらえればと考えています。

まもなく完成する直売所を地元の方とのふれあいの場にしたい

現在の主な活動のひとつに、山歩きによる観察後の勉強会があります。
どんな山野草が自生しているのか調査をしながら、私たち自身の知識を高めています。

もう一つは、つつじ山の山開きにあわせた山野草の展示会(年1回)の開催です。
メンバーは、それぞれが育てている自慢の山野草を当日の展示会に出展しようと自宅で我が子のように大事に育てています。
根気のいる作業ですが、自ら育てた山野草を会員同士あるいは、ご来場されたお客さまに評価していただくことも、活動を継続させるやり甲斐につながっていると思っています。

現在の活動資金は、メンバー一人ひとりから集めている年会費2,500円のみです。
自分たちで持ち出した道具や資材で活動しています。全員一人ひとりのおこづかいで、できることをしているのが現状です。

そこで、まもなく完成する直売所で苔玉などを作って売れないか。
それらの販売で得た収益を資金にできないかと考えています。
今後も活動を続けていくための元気づけにと、手弁当を持って隣町のサークルとの交流を図ったり、山野草を探すことを目的にハイキングに行ったりと楽しい行事も取り入れながらやっています。

いつまでもみんなの心に残るふるさとへ

今後も、一人でも多くの皆さんに故郷の自然の美しさに興味を持ってもらえるようにしたいです。
その景色を見て、お年寄りや定年された方が元気に、ここで暮らしたいと思えるようになればいいなと思っています。

また、故郷を出て行った若者たちが、いつか子どもの頃に遊んだ野山の美しさを思い出し、また戻ってきたいなと思える故郷にしたいとも思います。

そんな夢の実現に向け、今の活動を地道に続けていくことが大切であり、次の世代の人たちにも是非、この活動を引き継いでもらいたいと願っています。