FM三重『ウィークエンドカフェ』2013年8月24日放送

今回のお客様は、紀北町海山区で『中井木工』を営んでいる、木工家具作家の中井智章さん。

中井さんは、小さな頃から木工が大好きな子供でした。
幼稚園の頃には、すでにのこぎりと金づちを持ち、何かを作る毎日。
今でも家で使っている郵便受けは、中学2年生の時の作品です。

尾鷲ひのきの香り、そしてやわらかい肌ざわり。
あたたかさが感じられるこの木を使って、中井さんの作品が生まれていきます。
素材のよさを最大限に使い、1つ1つ心を込めて作っていきます。

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■元教え子から木工作品の発注が!

僕はもともと名古屋で、10年ほど金属加工の仕事をしてまして、こっちに帰って来てから7年ほど、高専の機械課の実習の講師をしていました。
教えるというのは、以前から好きだったので、苦にはならなかったですね。
卒業した教え子たちに、今も会うこともあります。

最近では僕が木工屋をしていると知られてきまして、元教え子から注文が来ました。
嬉しいですね。
テーブルや椅子ではなく、注文されたのは『自転車のスタンド』。
このところ流行っているロードバイク用のスタンドなんですが、高価だったりデザインが優れているため、部屋の中に飾ることが多いんだそうで、それ用の格好良いスタンドをと。

市販のものだと縦置きだけ、横置きだけ、整備するだけ、と、用途が限られているそうなんですね。
その教え子から、木工ならば、縦・横置き、整備用の3通りで使えるスタンドができるのではないか、と。
そう言われたら、こちらも引けませんよね。
「よっしゃ、ちょっと考えてみるわ」と(笑)
かなり悩みましたけど、なんとか納得行くものが完成しました。

卒業してからもこういった形でつながりができるのは嬉しいですし、今となっては良い仕事をさせてもらいました。


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■木製のスピーカー作り!

半分趣味なんですが、木製のスピーカー作りにハマっています。
いい音を鳴らそうと試行錯誤中ながら、かなりいい線行っていると思います。
木の組み合わせによって、音が変わってくるんですね。
自分でも聴いてみてびっくりしたんですけど、尾鷲ひのきはスピーカーと相性が良いんです。

しかしもちろん、使う木材は尾鷲ひのきだけということではなく。
今、作っているのは、尾鷲ひのきと桜の組み合わせたものなんですが、ちょうど良い響きで、一日聴いていても耳が疲れないんです。

木の材質の組み合わせを考えるのは楽しいです。
スピーカーのテストでよくやるのが、木琴のバチで実際に叩いてみること。
ゴンゴン、キンキン、コンコン・・・木によって、いろいろ音があるんです。
組み合わせて、実際にマイクで集音して、周波数のピークがどこに来るかとか・・・マニアックなんですけど(笑)
取り付けるスピーカーユニットの特性を、良い方に持っていく響きを組み合わせていくんです。

ただ音が出るではなく、音の質にこだわるプロフェッショナルな方に扱ってもらえると嬉しいですね。
僕もまだ趣味でやっている状態なので、そういう世界の人達からの厳しい意見を聞きたいっていうのもあります。

また、まだ計画の段階なんですが、木製スピーカー作りのワークショップの開催を考えています。
1日か2日くらいで、簡単な木工工作をしてもらって、USBでパソコンに接続するタイプのスピーカーを使って。
音の違いを感じて欲しいですね。


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■国産の木、地元の木を使って家具作り!

今、木工業界は外材が多いですね。
僕らは材料を仕入れに岐阜の方の市場に行きますが、そこも年々外材が多くなってきています。
その理由として「安く仕入れられる」というのがあるんですが、僕としてはやっぱり、安いから使うってのもちょっと・・・という気持ちがあります。
できれば国産材、あるんだったら地元の木材を使っていきたいな、という思いから『尾鷲ひのき』を使った家具作りを行っています。

家具は、僕の家族で持っている山の木を使っているものもあります。
植樹をしてから60年くらい経って、ようやく使える木になるんですよ。
今は祖父が植えた木を大切に使って家具を作っています。

2年ほど前に、父親と山の際目(土地の境界)を見て回りました。
その時新たに、自分の屋号を木に墨で書いていくんですけど、父親とはいえ、『先代』と山を回るというのは、なかなかあることではないですね。
世代を繋いでく・・・という感覚。
僕も、もしも息子が木工を継ぎたいというのなら、やはり残してあげたいという気持ちがありますし。
僕で三代目、なんとか繋いでいきたいですね。

しかし山は手入れが大変です。
しても赤字になってしまうのでほったらかしなところが多い。
道に近いところは手入れをしやすいので、そういうところだけでもちゃんとやっていきたいですね。
木は手間暇かけて60年育て、それから切って寝かせて10年・・・70年の月日をかけて、ようやく使えるんです。
大切にしていきたいです。


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■木との対話の時間

僕は木が大好きなので、買ってきた木材の年輪を見るのが、とっても楽しみです。
「この木は100年生きてきたんだな。こっちは300年かあ」と。
だから、できる限り1本の木を残すことなく使いたいんです。
そんな僕が、凝っているものが『おが』と呼ばれる大きなのこぎり。

直径1m、長さが2mくらいの木を真っ二つに割るとしますよね。
製材所だったら、ものの数分で切れると思うんですけど、『おが』を使うと、朝スタートして、夕方までかかっちゃうんですよ。
はっきり行って非効率です。
でも楽しいんですよ。
なんでこんなことを始めたのかというと、家に『おが』があったから。
あったというか、木挽きをしていていた親戚が引退されるということで、たまたまその『おが』がウチに来たんですね。使ってくれみたいな感じで。

これが来たってことは、僕が使わないといけないのでは。
それで使ってみたら、これは楽しいぞ、と(笑)

いろいろ目立てやら調整やらをして、今はようやくまっすぐ引けるようになりました。
やっぱりこういう作業が好きなんですね。
とことん追求するのも好きだし。
でもCADとかも使いますし、アナログとデジタルな部分を融合しているのかな。
木を『おが』で切っていると、時間が経つごとに木に『おが』が締め付けられたり、切っている最中に木が動いてきたり・・・ゆっくりした時間で木の動きが感じられるので、そのへんが良いのかな。

丸太を半分に割って一日が終わって、じゃあ翌日続きからしようとすると、また木が動いていて・・・そういう微妙な変化に、じっくり対峙するのが好きなんですよ。