FM三重『ウィークエンドカフェ』2013年9月28日放送

今回のお客様は、大台町のNPO法人『みやがわ森選組』の局長、岡本雄大さん。
山と向き合い、暮らすことのおもしろさ、楽しさ、そして大変さを教えてくれる人です。

5人でスタートした『みやがわ森選組』は、現在12名の仲間で活動しています。
大阪で生まれ育った岡本さんが、宮川村の自然に魅せられたのが34歳のとき。
家族を呼び寄せ、田舎暮らしが始まりました。
その1年後にみやがわ森選組を結成。メンバーはIターンの人が多いそうですよ。

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■一次産業は生命維持産業!

『みやがわ森選組』は平成15年に結成で、最初は法人格もなく仲間内で集まって飲み会をしていました。
でもせっかく集まっているんだから名前を付けようよと。
その年はNHKの大河ドラマが新撰組でブームになっていたことと、すぐに物事を行動に移せるようにとの思い、森への思いを込めて『森選組』と。
そして活動場所がどこかわからないと困るので『みやがわ』を上に乗っけました。

初期は『奥伊勢フォレストピア』の植樹イベントや、村のイベントで木のPRをしていましたが、2004年9月、台風21号による豪雨で宮川村が被害を受けてからは地域に役立つ活動を行なうようになりました。
災害跡地には8400本の木を植えています。

林業は一次産業。
一次産業が一番面白いと思いますよ。
『一次産業』と考えるからダメで、『生命維持産業』と考えたら良いんです。
だって、一次産業がなかったら、誰一人生きていけません。
どんな偉いことを言っても、米を食べなかったら生きていけないんです。
一次産業は生命維持のために必要なのでなくなることはありませんが、これまで発展・展開の部分がうまくいっていなかった。
工夫すれば、いろんなやり方があると思うんですよね。
ほとんどのメンバーが林業を主流に働いていますが、山というフィールド、農地というフィールド・・・田舎全体を見たら、これだけ空間を使える産業はそうないので、これを全部使えばいろいろなことができるのではないかと思います。

大台ケ原~大杉谷渓谷は、森林が占める割合が97%で、ほとんどが山です。
しかし大台町は旧宮川村の中では平地が多い地域。
僕がここを選んだのは、山があって谷があって、農地もちゃんとあるから。
自然が多様なので、いろんなことをするのが一番楽しいところです。
おそらく日本人が里山・山村風景として、思い描きやすい景色なのではないでしょうか。
川があって田んぼが会って、山があって。

ただし山間地なので、日が沈むのも早いです。
そのかわり一日の寒暖の差が大きいことと、山から綺麗な水が湧いてくることもあり、米が本当に美味しいです!
僕も作っていますが、米の質が本当に高い!
地元の米を検査に出したところ、いわゆる『ブランド米』に勝ったこともあるんですよ。
旨みが高い、糖度が高い。食味が高いということですね。


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■インターンシップで大学生を受け入れ!

大学生を迎えてのインターンシップ事業は今年で4年目です。
米のことを知ってもらうため、都会の大学生を対象に農業のインターンシップを迎えています。
彼らは大変ですよ。
半年間、2泊3日で何回も何回も来て、こき使われて。
僕は容赦なく使うので、本当にしんどいと思います。
でも、都会の子たちが、土や水に触れ、だんだん成長していくのがよくわかりますよ。
先日、一部の稲刈りをした夜、これまでの振り返りをした時に、全員が米に対する思いや見方が変わっていました。
一粒たりとも無駄にできないと。
その言葉を聴くと、やっていて良かったなと思いますね。
こういう活動していないと、自分自身も味わえない喜びですからね。

学生が一番しんどいと感じるところは、おそらく夏場の草刈り。
もちろん学生たちはまだ田んぼに水が入っていない状態の時から来て、水を入れて、植えて、草刈りし稲刈り、そして脱穀・・・全部やります!
その場限りの『◯◯体験』のようなものではなく、すべてに携わっていきます。

一番最初の年の子は、遊休農地を使ったので、耕すのも大変だったし、獣害対策の金網づくりもしました。
インターンだからといってお客さん扱いはしません。容赦なし。
地元の子のつもりでやるんで。

去年の子たちは、あるコンペに自分たちで作ったビジネスモデルを提出して、賞を取ったそうです。
また、後輩が田植えの時には先輩が集団で来て手伝ったりとか・・・嬉しい繋がりですよね。


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■どんどん広がる夢! 露天風呂づくりやアマゴの養殖!

最近では田舎の方も炭焼きをしなくなり、その技術が途切れかけています。
そこで知っている方と作って、自分たちで覚えました。
覚えた技術を忘れないようにしようと頑張っています。

何をやっても楽しいです!

炭焼窯もそうですが、以前はパン窯も作りました!。
先日はインターン生と一緒にパン窯でパンを焼いて遊んだりしてね。
田舎はやれることがたくさんある。
今、しいたけ栽培も行っていますが、地元のおじいちゃんが、「あんたら、今、こうせないかんよ」
と、タイミングを教えてくれるので、それで今度は自分たちが覚えれば良い。

田舎はできることがたくさんあります。

いろいろな山に木の苗作りをしたり、露天風呂を作ってみよう、アマゴの養殖をしてみようかな・・・どんどん夢が広がります。
アマゴは低い水温で綺麗な水じゃないと飼えないのですが、ここはそんな水がたくさん湧いています。
過去に一度小規模な養殖を試してみて、目処は付いているので、もうちょっとたくさんの数のアマゴに挑戦したいですね。
よく「作ったものをどうするの?」と聞かれるんですが、自分たちがやりたいからやっているんです。
自分たちが炭を使いたいから作るし、米を食べたいから作るし、アマゴも食べたいから養殖するし、露地物の原木シイタケは美味しいから、じゃあ自分で作ろうと。
基本は自分たちのためにやる。
さらに、みんなで一緒にやらない?と。
人数が増えれば、できることの数も規模も大きくなりますよね。
いっぱいできたら、みんなで山分けして食べたらええやんと。
基本は山分けです(笑)
しんどいことはイヤでも、楽しいことはみんな一生懸命やるじゃないですか。
そして楽しいのためにだったらしんどいのも、みんな我慢できるでしょ。

楽しくないとダメですよ、何でも。


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■『手間をかける』ことを楽しいと思うことが必要!

生活していて、本当に楽なのは、やはり都会です。
田舎は何をするにしてもたくさんの手間がかかるので、それが大変だと思う人は田舎には向いていません。

こちらで暮らしていると、身体を動かしている時間が圧倒的に多いので、一服している暇もありませんよ。
夕方の4時とか5時に仕事から帰ってきますよね。
夏なら7時くらいまで明るいので、暗くなるまで、畑や田圃の世話や草刈りをします。
それが出来ない人、昼間の仕事で手一杯という人は、田舎は無理ですね。
でも楽しめる人は、とことん楽しめる場所です。
土地も全部含めて、僕らが使っている空間にかけている経費・・・これを都会でやろうとしたら途轍もない金額でしょ。
それを払ったと思えば、とても贅沢な遊びをしているんですよ。
炭窯を作った場所、借りている家、パン窯・・・これ全部都会だったさらにらコストがかかっていますよ。

田舎に憧れて来る人も、たまにいます。
しかし本当の田舎暮らしに憧れている人は、辞めていっちゃいますね。
身体が持たないんですよ。

例えば、夏の炎天下、一週間ごとに田んぼのあぜを片っ端から草を刈るとこと。
こっちの人たちは普段は仕事をしているので、休みの日にそれをしているんです。
これをしんどいと言って楽しめない人は、米作りは無理ですね。

林業は農業とは逆に、先が見えないのが大変ですね。

山は100年先の姿を描けないといけないと言われていますが、僕らは研究者じゃないので、よくわかりません。
しかし普段山を歩いて見ていると、ここは何年経っている、こちらは何年くらい・・・そんなことを見ていくと、何十年後の姿も見えてくるんです。

自分がやったことの100年先を想像するのはなかなか楽しいですし、その姿を想像できる仕事って他にないですよね。
農業はだいたい、翌年には結果が出せます。
けれど林業は、自分が生きているうちに結果が出ません。
無責任といえば無責任(笑)。
ヘタなことして、100年を台無しにしてしまう可能性もあります。
でも、今やっておかないと100年先、良いものになるかどうかわからない。
だから林業に携わる人はみんな、100年先、200年先を信じてやっているんです。

今現在、いろんな人がいろんな挑戦をしているのだから100年先、宮川の、日本の山は良くなっていると思いますよ。
現状ではない、良い状態になっていると信じています。
また、信じていないと、山の中の急な坂をエッチラオッチラ登ったり出来やしません。
夢がないと、できないない仕事ですね。