「ふれあい」Vol.43 2013年10月号

毎年10月第3日曜日に行われる「関船祭」、この日は引本浦が活気づきます。
伝統の祭りを継承し、盛り上がりを復活させるため、20代~40代の若者たちが立ち上がりました。
ふるさとを思う力が原動力となる活動と、それを支える地域の人々をご紹介します。

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関船衆代表 奥村亮太さん


■勇壮な男の祭り「関船祭」を元気に

紀北町海山区引本浦地区では、毎年10月の第3日曜日に「関船祭」が開催されます。
これは地元にある引本神社の秋の例大祭で、200年の歴史ある祭りです。
見所は、長さ8m、重さ1tにもなる「関船」と呼ばれる檜造りの舟形山車を、男衆が担いで地区内を練り歩くこと。
唄子が唄う「船唄」に合わせ、担ぎ手が威勢良く関船を担いで練り歩く様は、まさに壮観。

しかし近年では高齢化が進み、地区の住民だけでは担ぎ手を確保するのが難しくなってきました。また、住民であっても、祭りに関心を持つ人が少なくなっていました。
幼い頃から親しんできた関船祭をもっと盛り上げたい、そんな思いから、祭りに関わる人達に声をかけ、引本浦在住の人を中心に10名が集い、昨年5月に『関船衆』を結成しました。


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■地域住民の理解を得て、初心者にも優しい祭に

この会の目的は「関船祭をPRし、多くの人に祭りを見に来てもらうこと」、「祭りをきっかけに、引本浦の地域の絆を強くしていくこと」。

まず始めに、引本小学校の子供達に、近所のお年寄りから関船祭について聞き取りをしてもらい、それを祭り当日に発表することでした。
祭りは、私達も不明な点が多いので、子供達と一緒に歴史などを学べて良かったです。
来客を増やすため、地区外に向けてPRするためのポスターも制作しました。

また、担ぎ手として参加してくれる地区外の人や、初めて祭りに参加する人でも分かりやすいよう、かけ声のかけ方や担ぐタイミングなど祭りのルールを統一。
経験者も一緒に参加してもらい、練習会を設けました。
今年はさらに氏子さんと話し合いを進め、より明確なルール作りを進めています。

子供達からは「関船を担ぎたい」という声が多く上がるようになり、本当に嬉しいですね。

■子供関船を通じてあこがれられる存在に

昨年の経験を踏まえ、今年はより多くの子供達に参加してもらおうと、1/2サイズの「子供関船」の制作を進めています。
本物の関船は大人の男性しか担ぐことができないので、この子供関船を曳くことで、子供達が本物の関船にあこがれを持ってもらい、将来、関船の担ぎ手になってほしいですね。
今回の試みは、三重県、紀北町、引本小学校の全面協力の下、船大工さんや年配の方にも力を貸していただいています。

■引本浦の魅力を見つける町歩きマップを制作

子供達が調べた引本浦や関船祭の内容が好評だったので、引本浦の町歩きマップ「引本ひもときマップ」も制作しました。
これは、町歩きをする中で引本浦の魅力を見つけ、自分だけのオリジナルなマップを作ってもらおうというものです。

今年の祭り当日には、この日限定の「関船ルートマップ」を配布する予定です。関船祭の歴史紹介や見所ポイント、引本クイズなどで、引本浦を楽しんでもらえるような内容を目指しています。

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鰹節博物館


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引本浦町歩き

■幅広い年代の人々と協力しながら祭りを継承

祭りを盛り上げるため年配の方とも話し合いを重ねています。
その中で、徐々に協力していただくことも増え、理解の輪が広がってきました。
これまで、年の離れた人と話し合うことがなかったので、祭りをきっかけに意見をぶつけ合える機会が持てたことは大切。

幅広い世代に祭りに親しんでもらい、いずれは関船祭が「引本浦の祭り」から「紀北町の祭り」になってほしいと思います。
ぜひ、今年の関船祭を見に、引本浦へ遊びに来て下さい。

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メンバーインタビュー

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担ぎ手指導員の加藤益洋さん

●様々な人の協力を得て引本浦を元気にしたい

まちおこしに興味を持っていた時に奥村代表から誘われ、『関船衆』に参加しました。
かつて祖父は関船祭を仕切り、父も担ぐのが大好きな「祭り一家」だったことから、私も幼い頃よりこの祭りに親しんできました。
昨年、初めて祭りのルール作りや練習会を行ったことで、未経験者でも楽しく参加してもらうことができ、担ぎ手として充実感を感じることができました。

今はまだ手探り状態ですが、改善点は翌年に反映させ、地区外の人や新しく入ってきてくれた人の協力を得て、関船祭へ来てくれたお客さんをおもてなししたい。
そして、地域を元気にしたいという若い世代の声を盛り上げるお手伝いをしていきたいですね。

氏子総代インタビュー

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引本神社氏子総代責任役員の奥村照一さん

●祭りの魅力を次世代へ伝え 賑わいを復活させたい

私は10代の頃から担ぎ手として関船祭に参加してきたので、今でも太鼓やホラ貝の音を聞くとワクワクします。
かつては引本浦も若者が多く、担ぎ手は持ち場が取り合いになるほどの賑わいだったですね。
私達は子供の頃から祭りを見て、担ぐタイミングなども身体で覚えてきました。
そういう経験から、子供に祭りを見せることが祭りの魅力を伝えることにつながると思っています。

今では引本浦も住民が少なくなり、今後、どのように祭りを存続させていくのかが課題になっています。
海山区内の各地区から担ぎ手として参加してくれる人が増えているので、本来の関船祭の魅力をきちんと伝え、かつての賑わいを復活させたいですね。

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紀北町企画課より

私たちのまち紀北町も人口が減少しており、数多くの伝統行事や風習について、次世代への継承が危惧されています。
そのなかで“関船祭”の継承を目的に『関船衆』が、次の世代に祭りを“繋げる”方法として、子どもたちが担ぐ“リトル関船”を制作!!

子どもたちが担ぐことで、次代の“関船祭”の担い手を育て、地域を明るくさせる皆さんの取り組みは、地域への熱い思いをもつ世代を超えた多くの人々を巻き込み、新たな伝統を生み出していくパワーを感じます。

これから続くであろう“リトル関船”の門出に大いに期待しています。