「ふれあい」Vol.43 2013年10月号

清流・宮川沿いにある大台町高奈地区。
稲作が盛んなこの土地に増える休耕田で住民たちがもち米を栽培することに。
それを加工し、地域活性化に繋げる女性達の活動にかける思いやふるさとへの感謝をたっぷりとお伺いしました。

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『高奈一福亭』代表の小笠原 利津子さん


■荒廃する休耕田で住民がもち米を栽培

大台町高奈地区は、綺麗な水に恵まれていたことから、稲作が盛んで、周辺地域の中でも田んぼが多くある土地でした。
しかし、高齢化が進むにつれ稲作を行う人が少なくなり、休耕田が増えていきました。

そんな中、農地・水・環境保全向上対策活動の一環として、荒れた田んぼを増やさないよう、自治会の有志により休耕田でもち米を栽培することになりました。

そこで地域のみんなで育てたもち米ですから、地域のために活用していけるよう、もち米を加工する団体として『高奈一福亭』を高奈地区の女性有志で結成しました。
高奈地区では祭りやイベントで年8回ほど餅まきを行っており、その餅の加工を請け負ったのが活動の始まりです。


■女性有志が集まりもち米を加工

この地域も高齢化が進み、自分たちの将来について考えた時、地域みんなで集える場所が必要だと思い立ち、地区内の空いている民家を借り受け、加工所として利用することになりました。
自分の足で歩いて行けて、みんなが集まって楽しめる憩いの場所にしたい、そんな思いを持っています。

現在では、週に3日ほどこの民家に集まり、ふところもち作りをしています。
他の日にも作業のために集まるので、メンバーとは毎日のように顔を合わせています。もともと近所の顔見知りが集まってできた会なので、こういった作業も仕事という意識は一切無く、楽しみとして続けています。
 一人ではできないことなので、みんなで集まって作業するのがとても楽しい。また、日頃からグループとして活動することで、災害時など緊急の場合でも、すぐにまとまっての活動も可能です。


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■様々な加工品を開発し、道の駅などで販売

餅まき用の餅だけではなく、「ふところもち」と「あられ」も作ることになりました。
自分たちで摘んだよもぎや柚子、お茶など、できるだけ高奈のものを使っています。
2年間かけて開発した「ふところもち」は、県内の高校でデザインを学ぶ大台町在住の学生にパッケージを考案してもらいました。

「あられ」も、メンバーの畑で採れた梅や生姜、伊賀産醤油など、全て国産の環境に優しい素材のみ。
冬の寒い中、2ヶ月かけて乾燥させます。これらの商品は「道の駅奥伊勢おおだい」などで販売しています。

大台町の特産品であるお茶を使った「大台スイーツプロジェクト」のために「生茶キャラメル」も新たに販売を開始し、好評を得ています。


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          鈴木惠子さん 大喜多惠子さん 西山和美さん

■自然を守るため山野草部会を設立

もち米を加工する「加工部会」と平行して活動しているのが「山野草部会」です。
自然の恵みをほんの少しだけ分けてもらい、鉢植えを作っています。
「ほたる祭り」では、好きな山野草を選び、鉢植え作りにチャレンジ。
目を輝かせながら2個3個と鉢植え作りに没頭する子供もいて、とても好評です。
「彼岸花祭り」では、子供達による様々な作品づくりも行っています。

小さな頃から自然に親しむことで、大人になった時、里山を大切にし、自然環境を保護する活動を引き継いでもらえればと思っています。

最近では山野草に詳しい若い男性がメンバーになってくれたので、活動の幅が広がっています。


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彼岸花祭り


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           鈴木聡子さん 出口まり子さん 小池洋也さん

■地域住民が協力し、手作り品のお店を開店

今年5月3日には、国道42号線沿いに『手づくりの里 福来(ふく)』をオープン。
ガレージを利用した店舗は土曜日と日曜日のみ営業で、一福亭のふところもちやあられ、山野草、地域の人が育てた野菜、ミニ盆栽、大台町の障がい者福祉施設で作られる花や野菜の苗、天然酵母パン、手芸品など、様々な手作り品を販売しています。

ここで商品を販売することが生活の励みになれば、荒れた田畑が少なくなることにもつながるのでは、と思っています。
将来的には、地域の人々がゆっくり集える場所にしていきたいですね。

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『手作りの里 福来』外観と、大喜多和子さん


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■住民同士が助け合う家族の様な地域作り

現在、高奈地区は60数世帯しかありません。
私達の会も60歳代の女性が中心となり、将来を考えた時、住民みんなで助け合い、地域がひとつの家族のような集まりになるのが理想だと思うようになりました。
その為には、みんなが仲良く集える場所が必要なので、楽しめる場をこれからも作っていきたいです。
地域全体が元気になるよう、地道に活動を続けていきたいですね。これまでの活動で得た様々な経験などを、いずれは地域へ還元したいと考えています。