FM三重『ウィークエンドカフェ』2013年11月2日放送

伊勢市大世古の住宅街の中に、昔から多くの伊勢の人たちに親しまれてきた『山村乳業』があります。
冷蔵庫を開けるとビンに入った牛乳がずらりとならび、その隣にはコーヒー牛乳、フルーツ牛乳、ヨーグルトやプリンがきれいに並べられています。
今回のお客様は『山村乳業』三代目の奥様、山村美佳さん。
『山村乳業』のこだわりをお聞きください。

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■『山村乳業』の牛乳ができるまで

まずは牧場で搾った原乳をミルクローリーで運んでもらいます。
それを、2℃くらいに冷却したストレージタンクに溜め、工場の中にパイプで送り、クラリファイヤーという機械でゴミなどを取り除き、またタンクに溜めて、今度はちょっと加温。
次にホモゲナイザーという均質械で乳脂肪を砕きます。
乳脂肪を砕かないと牛乳の上の方に乳脂肪が浮いてしまい、上の方が生クリーム状態、下の方が水っぽい牛乳になってしまうんです。
そのあとパスチャライザーというところに牛乳を溜めて、85℃で15分間かき混ぜ続ける『パスチャライズ殺菌』をして、素早く冷却して瓶詰めにしていきます。

ウチは殺菌の方法も大手さんとは違うし、瓶の牛乳なので、味は違うと思いますよ。
低温でぐるぐるかき混ぜながら殺菌することで、牛乳の味やコク、牛乳本来の味が残っています。

85℃の15分間が、コクや旨さが出るところなんですね。
大手さんの牛乳は、大量に作るために『プレート殺菌』という、120~130℃のプレートの中に2~3秒でさーっと流す感じの殺菌する方法を採るんです。
これだと短時間で殺菌ができ、大量に牛乳ができるので、大手さんのほとんどが、この殺菌方法。

でも、うちは昔ながらの殺菌方法しかできません。
一日に殺菌できる量が決まっているので、牛乳も大量には作れません。
先代であるおじいちゃんが、「味が大事やで」とその方法を貫いたんです。
だからこそ、今の『山村乳業』の味があるんですね。

そして配達も、私たちの仕事です。
深夜1時には牛乳を配達するみなさんが出勤してきます。
契約しているお家は全部で3500軒ほど。
伊勢市内を中心に明和町や玉城町まで配達をしているんですよ。


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■映画『テルマエ・ロマエ』に提供したフルーツ牛乳を『山村みるくがっこう』で味わう!!

今年、平成25年7月20日、『山村みるくがっこう』という山村乳業のショップを外宮前にオープンしました。
お客さんの反応がとても良くわかるので、楽しいですね。
甘い、美味しい、味が濃い・・・コーヒー牛乳やフルーツ牛乳も喜んでもらっています。
フルーツ牛乳は映画『テルマエ・ロマエ』でも取り上げていただいたので、珍しさもあり、みなさんびっくりされています。

『テルマエ・ロマエ』に登場することになったきっかけは、映画の制作会社さんが、古代ローマ人が飲む、レトロっぽいフルーツ牛乳を探していたことから。
そこで、山村乳業のホームページを見て、ピッタリだと連絡があったんです。
実際、使われたのは中身だけで、瓶は制作会社さんが作ったもの。
普段は小瓶で販売しているんですが、大瓶に詰めて、何リットルも送りました。

・・・ここだけの話、実は私、『テルマエ・ロマエ』をまだ観ていないんです。
社長(夫)はちゃんと観ましたよ(笑)


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■『山村みるくがっこう』で、観光客のお客さんと対面販売! 

外宮前の『山村みるくがっこう』では、山村乳業のさまざまな商品を販売しています。
パイナップル味で『マミー』のような乳酸菌飲料『エーデル』という商品も、お客様が美味しいと感激してくれるので、そういった反応を直に見られるのも面白いです。
瓶で飲むから美味しいと感じる部分もあるようですね。

他にも普通に販売する1合瓶の約半分の5尺瓶『ちびっ子牛乳』、これもみなさんけっこう飲まれますね。

一番注文が多いのは、コーヒー牛乳とフルーツ牛乳。
牛乳は『牛乳』と『濃厚牛乳』があり、やはり『濃厚牛乳』飲まれる方が多いですね。
心理として『濃厚』の方が心をつかむのか、10円だけ高いですけど人気です(笑)

あとはプリンやソフトクリームも製造販売しています。
季節のプリンの開発は、スーパープリンチームが行っているんですよ。
このチームは、私と同世代が多く、とっても心強いメンバーです。
旬のおいしいものを使って、この季節だけ味わえる期間限定プリンを作っています。

今販売している遷宮記念の『お白石プリン』は、この季節だけです!
抹茶味と紅茶味があり、見た目はどちらもまったく一緒。
これは米座、金座がある御敷地にたとえられています。

夏はソフトクリームがメインかと思ったのですが、けっこう牛乳を飲まれる方が多かったですね。
「牛乳も売れるんだ~・・・」と思いました。
今は給食の牛乳もパックになっているので、瓶の牛乳を『懐かしい』と感じる世代と『新しい』と思って飲む世代と、両方いらっしゃいます。
キャップを開けるキリみたいな栓抜きがあるんですけど、その使い方がわからないという若い方が、けっこう多いですね。
そこで世代がわかります(笑)
それから、「栓抜きを購入したい」と言われるお客さんも多いです。

今まで地元のお客さん相手の商売で、観光客の方が相手の商売はしたことがなかったので、とても新鮮で楽しいです。

それから、山村乳業の牛乳は、鳥羽市内のホテルでも味わうことができるんですよ。
大浴場に自動販売機を置き、風呂上りにビンに入った牛乳を楽しめるようにしたり、朝食のバイキングでお出ししています。
見かけたら、是非飲んでみてくださいね!


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■『山村乳業』の歴史

初代の山村定次郎さんが大正8年に創業して、今の社長で三代目となります。
山村乳業の裏に牛を飼っていて、あとは豚やら鶏やらウサギやらがいたそうです。
先代となる二代目の話では、牛の乳搾りもしたと言っていました。
けれど、まわりに家が建ち始めて、匂いなどの苦情が来て牛を飼えなくなったため、現在はミルクローリーで原乳を仕入れて、ウチで殺菌をしています。
昔は牛がいたので『山村牧場』という看板もあったそうですよ。
そして三代目の今の社長が子供の頃にも、まだ牛がいたと聞きました。
今のお店の回りの雰囲気を考えると、牛を飼っていたのが不思議なくらいですね。
まわりは全部、家が建っていますし。
空襲の時は可哀想だからと、牛を放して、でも逃げていかなかったと先代が言っていました。

私がこちらに嫁いで、もう27年。
プリンなどの商品開発をしたり、配達をしています。
先代であるおじいちゃんが伊勢病院内の、看護婦さんの詰め所を回っていたので、私もお手伝いで一緒に回っていたんです。
おじいちゃんが急に亡くなった時に、現社長と話し合い、これは続けないと、と。

お客さんとのやりとり、会話をしながら商売をすることが大好きなおじいちゃんで、これが生き甲斐だったので。
なので、それは今も続けています。