新年あけましておめでとうございます。
ウィークエンドカフェがオープンしてから、6回目のお正月です。
今日は、伊東将志さんと前田憲司さん、そしてオーナーの洋子さんでお送りします。
2014年はどんな年になるのでしょうか。
前田憲司さん(左)、伊東将司さん
■地域ごとの年越しや神事など
前田(以下、前) ここ数年は、私が暮らす鈴鹿の氏神さんで年越しをしています。
氏神さんでは、宮司が年越しに叩く太鼓と同時に、通常は秋祭りに出る獅子舞が拝殿で踊ります。
境内に降りて来た獅子舞に参拝客の頭を噛んでもらい、一年の厄を落としてもらうんですよ。
伊東(以下、伊) 尾鷲ではお正月明けに『船上神楽』を行います。
獅子舞を漁師さんが船の上でまわすので、足下が白い長靴なんですよ。
普通は白い足袋だけど、船の上だから。
いつもの長靴でないと、滑るから(笑)
■『ヤーヤ祭り』など、尾鷲ならではの行事
前 尾鷲の『ヤーヤ祭り』は2月の寒い時期でしょ?
伊東さんも、素っ裸で港から海に飛び込んだんですか?
伊 はい、25歳の時にやりましたよ。
もうトランス状態というか・・・1人じゃなくみんなで行くので、高揚していましたね。
前 飛び込んだ後は、船で引き上げてもらうの?
伊 いや、自分で戻ってくるんです。梯子がかかっているんですけど、それを上ってくる時が一番恥ずかしいですね(笑)
上がってくるとみんながおしくらまんじゅうみたいに囲んで、着替えの場所まで連れて行ってくれるんですけど。
飛び込むのは、自分の住んでいる町が『祷屋さん』の役の時。
なので、あれ以来飛んでないですね。
鈴木(以下、鈴) 今年は飛び込まないんですか? 若い人も少なくなっているし、年齢や組など、もう関係なくしちゃうとか。
伊 それも一理ありますね。
他の地域のお祭りは、どうしているのかな、と思います。
前 僕は四日市生まれで今は鈴鹿在住なので、三重県では都会の部類ですよね。
南の方・・・例えば尾鷲では節分の時にイワシと柊を軒先に飾ったり、長寿の方の手型を半紙に押して、家に貼ったりしていますね。
そういった風習は、やはり南の方に残っているように感じます。
鈴 長寿の方の手型の行事は、いつ行われるんですか?
伊 それは米寿で、88歳になったときですね。本当に軒先に貼るんですよ。
僕はどこもやっているのかと思ったら、違うことを知ってびっくりしました。
■『B−1グルメグランプリ』に『四日市とんてき』が10位入賞!
前 この番組で『四日市とんてき』を取り上げた関係で、先日、『四日市とんてき協会』の代表である、四日市大学の小林先生と話す機会がありましたした。
『B−1グルメグランプリ』は、実は食の祭典ではなく、地域おこしの祭典なんですね。
ところで、実は四日市市には昔から、かなりの数の獅子舞があるんですよ。
その数、20〜30くらい。
江戸時代の本に、四日市の阿倉川から全国に広まったと書かれているほどなんです。
これはまあ、はっきり言うとウソなんですが(笑)
でも、実際に獅子舞は多いので、去年豊川で『B−1グルメグランプリ』が開催されたとき、町をPRしようと獅子舞を持って行き、並んで待っている人の頭を獅子舞で噛んであげたんですね。
縁起が良いので。
そうしたら、それが広まって、とんてきではなく獅子舞に噛んでもらうために並ぶ人が出てきた(笑)。
伊 それはすごいですね。とんてきではなく御利益をいただきたいと(笑)
前 味もさることながら、印象の『おもてなし』という効果もあったのか、このとき初めて、『四日市とんてき』は10位に入賞できたんです。
ちょっと役に立てたなと思うと同時に、夢が広がりましたね。
全国いろんなところの獅子舞と連携したいなと。
去年の夏は、東北の女川の獅子舞に、四日市に来てもらい、一緒に演じました。
向こうの獅子舞は、山から下りてくる鹿をイメージしているらしいので、顔が真っ黒。こちらのとは全然違いました。
今度はウチが東北へ行きたいですね。
東北の獅子舞は地震や津波で流されてしまったところもありました。
そこで祭りや獅子舞を復活させるため、段ボールで獅子を作ったそうです。
祭りが復活した今でも、段ボールの獅子を大事に持っているんですよ。
そんな話を聞くと、祭りをはじめとする地域の行事は、地元が一つになれるパワーがあるんだな、と感じました。
普段、祭りで遊んでいる身としては、とても感動する出来事でしたね。
■尾鷲のおかあちゃんたちのバイキングは故郷の味を守る
前 祭りが盛んな地域は、それを通して、世代や老若男女を越えて集まっているので、防災のことを含めて、地域の結束が強いですよね。
みんなで炊き出しをしたり、飲み物の係がいたり、交通整理の人がいたり。
ある意味、防災などで、役目がそのまま使えますね。
伊 まさにその通りです。
僕が携わってきた『夢古道おわせ』のランチバイキングのテーマがそこだったんです。
お母ちゃんたちは、地域の冠婚葬祭などで炊き出しをしてきたのですが、だんだんそういうのがなくなってしまっていた。
「あの人の炊き込み御飯」「あの人が作る白和え」みたいなのが伝承しなくては・・・というのがテーマだったんです。
地域のお祭りや行事などで出されてきた料理を、ランチバイキングで食べられたら良いな、と考えたのが始まりでした。
しかしどの地域でも、そこだけの料理ってありますよね。
前 僕たちが子供の頃、不幸があった際は、お寺さんの休み所、炊き出しをして食事をする『非時宿』などの役割があって、みんなで精進料理を作ったりしていましたね。
他にも、お経をあげ坊さんの説教を聞く『ほんこさん(報恩講)』なども組の単位でしていましたが、今はもうないですね。
伊 そうですね、ああいうのこそ町の良さであり、その時の光景や味が、子どもの頃からの脳裏と舌に焼き付いてきた、代え難いものだと思いますね。
前 最近では、祭りの食べ物でも買ってきて済ませることが多いですが、子どもの頃は家で押し寿司を作ったりしましたよね。
海老のそぼろを作るときに、すり鉢を押さえるのが僕の役目でした。
押し寿司は色合いも奇麗だし、やはりめでたい日のものでしたね。
今、食べたいなと思っても、すでにどこにも売っていないし、食べられなくなっていることに気づかされます。
伊 そうなんですよね。
そんなに派手ではありませんが、尾鷲にも押し寿司があります。なんか時々、むしょうに食べたくなるんですよね。
しかし、すでにその機会を失っているんです。
鈴 おせち料理もその地域地域、家々の味がありますが、それも最近では、買う人が多くなっていますしね。
前 尾鷲ではおせちに伊勢エビが入っていたりするんですか?
伊 いやいや、ウチはそんなことはありませんでした(笑)
飾りでも入っていて欲しいですけどね。
鈴 ウチは伊勢エビの身を食べて、殻を鏡餅の上に飾っていました。
■訪れたい町・見たい場所が増えた
伊 『ウィークエンドカフェ』という番組を通し、神社などを含め、その土地土地に行ったときに、訪れたい場所が増えましたね。
前 いろいろな方と会い、けっこうディープな話を聞かせてもらうので、とても知識が増えますよね。
伊 僕、小倉先生に『古事記』について教わったのに、昔から知っているような顔して、いろいろなところで話しています(笑)
鈴 私も「熊野古道に行ったら、各町々にあるお地蔵さんを見やないかんよ」とか、すごい知ったようなことを言っています(笑)
前 その町の意外な面を教えていただいたり。
先日は津市のガイドさんから、津市の面積が琵琶湖の面積とほぼ同じだと教えてもらい、びっくりしました。
鈴 朝日町は中部セントレア空港と同じくらいの広さとか。
前 御在所から、太平洋と日本海と富士山と琵琶湖が見られるとか。
琵琶湖と富士山が見られるのは、御在所だけらしいんですね。
日本海は見えるはずなんだけど、どうしても裸眼では見えないとか。
・・・そんな風にすぐに思い出せるほど、たくさんの興味深い話を教えていただきました。
「ここに来なければわからない」というお話がたくさんありますね。
鈴 町の人も田舎の人も、みんなそれぞれに大切な場所があります。
それは、生まれ育った場所かもしれないし、若いころ、一生懸命に働いて
汗を流した場所かもしれません。
『ウィークエンドカフェ』は、そんな地域のすばらしさ、そこでがんばっている人たちのお話を、今年も皆さんにお届けしていきます。
→『太古からの歴史に触れる、祈りの道・熊野古道』