「ふれあい」VOL.20 2010年3月号

深い山々に囲まれた大台町栗谷地域。
高齢者を中心とする地元住民グループが手がける美しいチューリップ畑。
チューリップを通して地域外から人を集め、地域外の方々とともに連携を深めながらまちを元気にする活動を続けています。

右/会長 中村 明夫さん
左/会長夫人 中村 敏子さん

栗谷神楽の上演を通して
様々なまちおこしを学ぶ

年々、過疎化・高齢化するふるさとに対して何かできないかと常々思っていた私たちは平成元年からこの地域の有志を集め郷土芸能の「栗谷神楽」の上演を始めました。
獅子頭や小道具は自ら製作したり、調達したり。
やがて栗谷地区だけでなく遠くは東京や名古屋へも公演に出かけるほどになっていきました。

しかし、平成17年まで続いた神楽は、後継者不足で上演存続できなくなりました。
ですが様々な地域を訪れるなかから、私たちはまちおこし活動について学び、自分たちが地元に対してできることに気づいていったのです。

そして、私たちは、今から7年前、地元住民によるまちおこしグループ「栗実会」を結成しました。

休耕田にチューリップを!
多くの人が訪れる名所にしたい

栗実会では会員が「楽しみながら学ぶ」をモットーに、月2回ほどみんなで集まり、おしゃべりに花を咲かせながら活動しています。
しかし、まちを元気にするには、よそから訪れる人の存在も欠かせません。

そこで私たちが注目したのが、休耕田に花を植えることでした。
住民の高齢化や獣害の拡大などから、このあたりには荒廃した休耕田がどんどん増えており、私たちも心を痛めていました。
その休耕田にチューリップの球根を植え、会員みんなで世話をすれば、土地の荒廃を防げ、花を見によそから人が訪れるきっかけとなるのではと思ったのです。

おかげさまで、今では1万本ものチューリップが咲く「ふれあい花畑」ができ、たくさんの方々に訪れていただけるようになりました。

3年前(2007年)からは、この花畑で「チューリップ祭り」も開催するようになりました。
色鮮やかなチューリップを愛でながら、手打ちそばの実演やふるまい、カラオケ大会、キーボードとギターのコンサートなどを楽しんでいただく会員手作りの温かいイベントです。

今年(2010年)も4月18日(日曜日)の開催を目指し、我が子の成長を見守る思い(笑)で花畑の手入れを行っています。

伝統食のそばを通じて
他団体との連携を深める

以前から栗谷地区でのそば作りが行政より提案されており、そば打ちの講師として招かれたのが「関西蕎麦塾」の皆さんでした。
都会で暮らす方々には自分たちの田舎がないこともあり、昔ながらの農村の風情が残る栗谷地域に対して非常に親しみを感じていただけたんですね。
それ以来、地元住民(栗実会)と地域外の方々(関西蕎麦塾)との交流が始まり約5年が過ぎました。

こうした交流がきっかけとなり、栗実会と関西蕎麦塾が手を取り合い、栗谷地域を盛り上げていくためのまちおこしグループ「栗谷地域振興協議会」は誕生しました。

私は「三重県農村女性アドバイザー」に認定されていることから、この地域で昔から食されてきたそばにも注目しており、チューリップが作付けされていない時期に花畑でそばを栽培するようになりました。
チューリップ祭りではそば打ちの実演も行っているんですよ。

また、関西蕎麦塾の皆さんにも気軽にくつろいでいただける場所を作ろうと、古民家を活用し、「栗谷山荘」という名で活動の拠点としてもらっています。

都会に住む方の知恵と田舎で育まれてきた知恵が重なることで、より良いものが生まれるのではないかと、関西蕎麦塾との連携には手応えを感じています。

この他にも、紀北町の「下河内の里山を守る会」の皆さんともそば打ちを通してお付き合いをさせていただき、チューリップ祭りではそば打ちを手伝っていただいています。

こうした皆さんとの連携が私たちの活動を支え、元気の源となり、さらには交流の輪を拡げているのだと、大変感謝しています。

郷土を守るのは住民自身
若者にも影響を与えたい

栗谷在住の会員は現在10名で、56歳から88歳までと高齢者が中心の会です。高齢者の豊かな知恵や経験を活かし、それぞれができることをやりながら、会員同士で助け合っています。
みんなが思ったことを遠慮なく話し合える仲なので、こうして続けられるのかなぁと感じています。

郷土の魅力は自分たちで守り、伝えていくことが大切ですね。
こうして年寄りが頑張っている様子を見た地元の若い人たちに、ふるさとのことを少しでも気にしてもらえるきっかけとなればと気長に活動しています。

昨年(2009年)、チューリップ祭りの手伝いを頼んだ若い人から「来年は声をかけてもらわなくても、手伝いに行くからね!」と言ってもらえたことは、続けて行くことの大切さを私たちに気づかせてくれました。

これからも健康に気をつけ、みんなで和気あいあいと細く長く活動を続けていきたいですね。