「ふれあい」VOL.24 2010年11月号

「限界」集落ではない! 静かな山里が立ち上がる!
第三者の目でふるさとを見つめ直し、住民みんなで村おこし!


区長 佐今 幸司さん (さこんゆきし)

「限界」集落ではない!
静かな山里が立ち上がる

私たちの住む浦谷地区は地図上に「浦谷」という地名の表記はなく、大台町の住民にも知られていないような場所でした。

そして、過疎化・高齢化が進んだことで「限界集落」などと言われるようになりましたが、私はこの言葉にとても抵抗があったのです。

ここには、小さいながらも山があって、里があって、家があって、人がいて、川がある。こんな素敵な場所をもっと知ってもらい、住民にも元気になってもらいたいと、6年前からイベント等を通じ、村おこしを始めました。

ふるさとを見つめ直し
住民みんなで村おこし

当時、9世帯19名が住んでおり、住民の多くが参加して会議を重ねました。
最初は皆さん、不安が大きかったようですが、話し合いを進めるうちに、みんなで力を合わせる大切さを確認することができました。

同じ頃、JICAから外国人研修生を受け入れることになり、住民総出でお迎えすることになりました。そこでは「在るもの(宝物)探し」として、第三者から見た浦谷の良いモノを見つけ出す活動が行われました。

これをきっかけにふるさとを見直そうと、住民みんなで浦谷の良い点や問題点を洗い出す作業を行いました。その結果、まずはできることからやろうと、沿道に花の咲く木を植え、地区内の案内看板を設置することになりました。

成長が待ち遠しい柚子畑

それと同時に、6年前に開催し、台風災害で中断していた「山里の春を味わう」イベントも復活させました。
また、新しい特産品を作ろうと、地区内にある柚子と唐辛子で「柚子こしょう」作りが提案され、柚子の植樹も行われました。さらに、お茶の先生からの薦めもあり、地区内に生える在来種のお茶の販売も始めました。


オリジナルのお茶も販売を始めた

濃密な人間関係が
強い力を生み出す

村おこしでは新しいものを作るのではなく、もともとあったものを使って、住民みんなが参加することが大切だと思っております。

現在は他地域から移り住まれた方を迎え、13世帯27名になりました。
住民同士の温かく密接な関係がこの地区の良い点で、お年寄りから移住者まで、みんなが力を合わせて頑張っていますよ。

11月からは「柚子こしょう」も販売される予定で、柚子が新しい名物になってくれればと願っています。


座談会 大台町浦谷地区の住民の皆さん

住民みんなで話し合い
地域の魅力や問題を共有

6年前、区長さんから村おこしの提案を受けた時は、人が少なく、年寄りばかりで何ができるのかと不安が大きかったのが事実です。
それでもみんなで何度も話し合い、行政からも助言をいただきながら、できることを探ってきました。

そこで、山菜でおもてなしする「山里の春を味わう」など、3回のイベントを企画し実行しました。
遠くから訪れた方からも好評で嬉しかったですね。

また、JICAから20名ほどの外国人研修生を受け入れ、一緒に歩きながら昔からの暮らしを身振り手振りで説明して周りました。
そうすることで、私たちは日頃気にも留めなかったことが、実はこの地区の魅力であることに気付いたのです。

そして、住民自身がふるさとを見直そうと、地区の良い点や問題点、将来について考えていきました。
一人一人がカメラを持ち、いろんなものを見つめ直すことで、地区の魅力を再発見し、現在の課題とそれをふまえた将来像を共有することができました。


「柚子こしょう」作りに取り組むみなさん

案内看板や特産品作りなど
まずはできることから

この結果から自分たちは何ができるのかと考えたとき、沿道への植樹や、地区の名所旧跡を盛り込んだ案内看板作りを思いつきました。

また、昨年から「柚子こしょう」作りにも取り組んでいます。
柚子は獣害に強く、もともとこの地区にもあったので、「特産品として良いのではないか」との提案を、ある住民から受けたことがきっかけでした。

昨年は試作品でしたが、今年11月からはいよいよ本格的に商品化します。それに伴い、柚子の植樹も行いました。各家庭に柚子の苗木を植え、世話をしています。柚子が地区の新しい名物になっていって欲しいですね。

村おこしを頑張ることで
ふるさとに誇りを持てた

これまでは「浦谷」と言っても誰も知らないので、「浦谷出身だ」というのが正直嫌でした。
でも、村おこしに取り組むようになってから「浦谷はまとまりがあってすごいなぁ」という声を聞き、嬉しく、むしろ誇りに思えるようになりました。

住民のつながりが強い地区なので、誰もがこの地区に愛着を持ちながら村おこしに励んでいます。
一人暮らしのお年寄りも、みんなにパワーをもらいながら頑張っていますよ。

5年後、植樹した柚子に実がなるのを心まちにしながら、これからも全員で力を合わせて、この浦谷をますます元気にしていきたいな、と思います。