三重テレビ『ゲンキみえ生き活きリポート』2014年3月16日放送

江戸時代、伊勢参りのおしゃれな土産品として人気だった、紙を使った煙草入れなど動物の皮革を模した『擬革紙』を復興!
三重県指定伝統工芸品に認定されました!

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みなさん、『擬革紙』をご存知ですか?
擬革紙とは、まるで動物の革のような見た目と手触りを持つ和紙のことで、江戸時代に誕生。
当時、伊勢神宮へと向かう参宮街道では、擬革紙を扱うお店が100軒ほど軒を連ねたと言われています。
中でも、煙草入れは、参宮土産として人気を集めました。
しかし、その後は、新しい素材の台頭などによって衰退。
昭和初期には、製造技術も失われてしまいました。


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そんな擬革紙を再現しようと頑張っているのが、玉城町の『参宮ブランド「擬革紙」の会』のみなさん。

会長の小嶋正雄さんに、擬革紙についてお聞きしました。

「江戸時代はあまり肉の文化がなかったため、和紙で動物の革に似せて加工したものが、擬革紙です。この伝統の技術を再現しようと、私たちは活動しています」

『参宮ブランド「擬革紙」の会』は、平成21年に結成。
『擬革紙』の復元・復興と地域活性を目的に、玉城町を拠点に、町内外のメンバー約20名で活動しています。


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こちらが擬革紙を作っている作業場。

中では、『参宮ブランド「擬革紙」の会』のみなさんが、すでに作業中。
みなさんは、プロの職人ではなく、物づくりに興味があり、創作活動を通じて
地域に貢献したいという方々が集まっています。

月曜日と水曜日の週2回、こちらで作業をしています。


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こちらで行っているのは、和紙に型紙で革の風合いを出す作業。
白い紙が、擬革紙となる和紙。
濃い茶色のものは型紙で、和紙を数枚貼りあわせ、等間隔の筋を作り、柿渋で塗り固めてあります。
この型紙に和紙を挟み込んで力をかけると、和紙にシワが付き、動物の革のような表情になるのです。


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シワの付け方は、型紙と和紙を交互に重ねたものを、棒に巻き、足で踏み、棒にしっかりと締め付けます。

その後、上下から機械で強い力をかけることによって、シワをしっかりと和紙に刻み込みます。

一連の作業を、多いときは10回以上繰り返すことで、本物の革のような風合いを持つ紙、擬革紙が出来上がるのです。


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ちなみに、昔はこうした器具を使ってすべて人の力でやっていました。
擬革紙は、手間と時間をかけて作られた素材だったのです。


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擬革紙の質感が完成したら、次は色染め。
特殊な塗料に擬革紙を浸すと、毛細管の作用で、すぐに染まっていきます。

最初はスプレーで色を吹き付けたりしたそうですがうまくいかず、濃度を調節するなど、試行錯誤を繰り返し、ようやくこの染め方に辿り着いたのだそう。

最盛期、擬革紙を作る店は数多くあったと言われています。
当時は、それぞれが独特の技法を持ち、他に漏れないようにと、技法は口伝えでのみ受け継がれていました。
なので、記録もほとんど残っておらず、擬革紙の復元は、まさに、試行錯誤の連続でした。

擬革紙の会のみなさんは、わずかに残された記録を元に、和紙の分析施設を訪ねたり職人に教えを請いながら、4年の歳月をかけて自分たちなりの擬革紙をよみがえらせたのです。


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長い年月を経て、現代によみがえった擬革紙は、昨年東京にオープンした三重県の営業拠点『三重テラス』でも展示され、好評を得ました。
そして、昨年9月には、三重県の伝統工芸品に認定。

擬革紙の製造の道筋は、しっかりと敷かれ、伝統技法の再生はなされました。
しかし残念ながら、商品化には、まだ至っていません。


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上から、中村和美さん、蒲千賀さん、堀木茂さん。

中村「まだ強度面や色などにも問題があるため、商品化はされていません。これが出発点ですね」

蒲「みんなで試行錯誤しつつも、和気あいあいと楽しんでいます。この会に入って良かったですね」

堀木「擬革紙としては出来上がりましたが、商品化するためにはお客さんに対する責任が生じます。問題なく商品をお渡しするまでには、もう少し時間がかかりそうです」


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この日は『美し国おこし三重』の総合プロデューサーの宮本倫明さんの姿も。
実は、『参宮ブランド「擬革紙」の会』は、地域づくりを支援する県の事業『美し国おこし三重』の座談会をきっかけに活動を開始。
パートナーグループに登録し、専門家派遣や資金的な援助を受けて活動を続けてきました。

宮本「4年の歳月がかかった、長丁場のプロジェクトです。昔の技術をもう一度再現するのは、とてもすごいことだと思います。これからは世界的なメーカーに素材の良さを知ってもらい、新しい商品に取り入れてもらうなど、世界に羽ばたいて欲しいですね」

大きな希望をもって世界へ。
かつては、海外へも輸出され、1900年に開催されたパリ万博では金賞を受賞した日本の伝統の技、『擬革紙』。


今、改めて、世界へと羽ばたきます。