第75回『サルシカ隊長レポート』2014年3月

海辺の町をのんびりと訪ねる企画で三重県大紀町の錦に出かけたサルシカ隊長。
しかし、季節外れの嵐が、漁師さんも港も取材もはげしく翻弄する(笑)

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三重県度会郡大紀町。
三重の中南部に位置する大紀町で、唯一海に面し、海で生きる人たちがいる場所。
それが錦。

3月に入り、風が暖かくなった。
フキノトウやつくしが土から顔をのぞかせるようになった。

もうすぐ春がやってくる・・・!

というわけで、海辺を歩き、釣りなんぞ楽しんで、おいしい海の幸に舌鼓を打つ、そんな取材をしようではないか、という話になった。
そして3月吉日のその日、錦を訪ねたのである。

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が、その日の錦にはうららかな春はどこにもなかった。
いや、全国的に天候が荒れ、暴風雨状態。
当然、釣り堀は休み。
トロピカルガーデンというキレイな海水浴場もあるが、歩いているバカはいない(笑)。

そもそも車から降りることすらできない状態。
バチバチと雨が窓を叩き、風が車を揺らす。

が、しかし。
声がけしたところには行かねばならぬ。
しかも締め切りは迫っているので取材日を改める余裕もない。
ワタクシはコンビニで透明傘を買い込み、取材先に向かったのである。

tr075-03※魚々錦さんに提供していただいた写真です。

今回の取材のメインは、錦漁港内にある「魚々錦(とときん)」さんであった。
なんとこちらは、その日に水揚げされた新鮮な鮮魚を販売!
土曜日には、町内金輪地区より入荷した新鮮な野菜も販売してるし、そして錦で水揚げされた魚の刺身定食などもイートインでいただくことができるのだ。
漁業を盛り上げよう、地域をもりあげようと、錦の漁協のおっちゃんたちが中心になってやっている取り組みで、いまや地域外のお客さんがここを目当てにやってくるという。
店自体は小さいけれど、魚の鮮度、値段、おっさんたちの熱さはどこにも負けないのだ(笑)。

そんな錦で、ワタクシはのんびりと海をながめ、フッとため息のひとつでもついて、この魚々錦を訪ね、お刺身定食なんぞいただいて、ああ、いい旅ゆめ気分なんてつぶやいて取材を終えようと思っていたのだ。

が、この暴風雨では漁にも出られない。
当然、とれたて新鮮の魚もないわけで、おっさんたちは「きょうの昼飯はなし!」なんて言うのだ。

取材のワタクシも困ったが、漁協のおっさんたちも困っていたのだ。
なんたって海が荒れたらやることがない(笑)

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「仕方ない、じゃあヒロメの塩蔵でもやりますか」

大紀町漁業活性化推進協議会会長で、三重外湾漁協紀州北支所理事の谷口兄(ケイ)さんが他のおっさんたちに言った。

ヒロメとは、褐藻類コンブ目チガイソ科の海藻である。
みそ汁や酢の物にしていただく。
ワカメと同じように調理し、使うことができる。

食べられる時期は、今ぐらい。
若くて柔らかい部分のみ食用に適しているらしい。

地元ではよく食べられているが、収穫期間が短く、また保存できる期間も短いため、ほとんど流通していない。
それをなんとか商品化できないかと考え、思いついたのが「塩蔵」なのである。

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思いついたら、とりあえずやってみる。
これが錦のおっちゃんたちの姿勢である。
すばらしい!

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茹でたヒロメに塩をしてよく水分を抜いたものに、さらに塩をして撹拌機に投入する。

「塩はどれぐらいだ?」
「もうちょっとだ」
「もうちょっとって、どれぐらいだ」
「うーん、もうちょっとだ」

まじめに取り組むが、基本テキトーである。
これが錦のおっちゃんたちだ。
すばらしい(笑)。

しかし、これでちゃんとしたモノができあがるからスゴイ。
でも正直、すごいのは錦の自然であるとワタクシは思ったが、とりあえず黙っておいた(笑)。

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こうしてヒロメの塩蔵が完成!
最初に茹でてから水抜きをし、さらに塩してまぜて・・・かなりの手間ひまがかかるのだ。
しかも生と比べて3分の1ぐらいに縮んでいるので、生と同じ分量で販売すると大変なことになってしまう。

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とりあえず1袋に200グラムと決めて袋詰をする。
みんなで。
くだらないことを言いながら。
笑いが絶えない。
このおっちゃんたちは、何でも楽しんでやってしまえる。
考えずに突き進むことができる。
失敗しても笑って次へ進むことができる。
そしていつも笑っているから、まわりもどんどんゲンキになる。
まさにここは錦の中心だ。

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「生のヒロメも見たい」と言ったら、おっちゃんのひとりが、「ちょっと待っとれ〜」といって外へ出ていった。
港の中にもヒロメは生えているというので、長い棒を持って取りに行ってくれたのだ。

「ほれ、これがヒロメやで〜」

とうちゃん、ありがとう。
でも雨風が強いから店の中に入ろう(笑)。

ヒロメは海の中では茶色である。
それを茹でるとさっと緑になる。
なるほど、ワカメといっしょだなあ。

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「じゃあ、塩抜きして試食してみようか〜」

谷口兄さんは洗面器を用意してきて、そこに塩蔵ヒロメを入れる。
取材主旨はどんどんずれてきているが、もういいのだ。
きょうは塩蔵ヒロメの取材にきたのだ。
そうなのだ(笑)。

ぬるま湯に入れると、じわじわとヒロメは元の大きさに戻っていく。
3倍から4倍の大きさになる。
塩を出せば出すほど水を取り込むので大きくなるんだそうだ。
浸透圧とかいうやつやね。

塩抜きしたヒロメをそのままポン酢につけていただく。
表面がぬるっとしていて、シャキシャキとした歯ごたえがある。
磯臭さはまったくない。
うまい。

このヒロメは、3月29日に開催される「ぶり祭り」でテスト的に販売されるらしい。
ヒロメ汁のふるまいもあるので、それを味わってからぜひ購入してほしい。

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その夜、家に戻って妻にヒロメの料理をつくってもらった。
塩抜きをしてそのままザク切りし、キュウリと和えた酢の物。
ヒロメもキュウリも歯ごたえがあり、サラダのように食べられる。
しかもヒロメの風味がじんわりと口の中に広がる。
うんうん、これはいいんでないかい!
普段あまり酢の物を食べない娘もシャクシャク食べていた。

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そして定番のヒロメのお味噌汁。
ヒロメ汁といったほうがいいかもしれない。
あえて具はヒロメしか入れなかった。
その分たくさんヒロメを入れた。
かすかな磯の香りがあって風味が増す。
深みのある味わいになる。
しみじみとうまい。

このヒロメ汁。
ぜひ3月29日のぶり祭りで食してもらいたい。
そしてよければ、ぜひともヒロメの塩蔵を買ってみてほしい。
錦の海の豊かさ、そして錦のおとうちゃんたちの努力の結晶を味わってもらいたい。

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最後にぶり祭りの告知を。

■開催日時
3月29日(土)午前10時~13時

■開催場所
錦第二魚市場(築地)

■内容
・鮮魚販売・・・錦漁港で水揚げされた「ぶり」「あじ」「ひらめ」など
・水産物販売・・・ぶり切り身・手作りひもの・伊勢えびの海賊焼き・ぶりべっこうちらし など
・ぶりのお刺身のふるまい(先着300名)
・ひろめ汁(みそ汁)の振る舞い(先着300名)

※天候または漁の都合により商品の種類等を変更する場合があります。
※商品は十分ご用意しますが、売り切れになった場合はご容赦ください。

■その他
主催:錦ぶりまつり実行委員会
問い合わせ:実行委員会事務局(三重外湾漁協 錦事業所内)0598-73-2111
     

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昨年のぶり祭りの様子はこちら!! http://genki3.net/?p=22676
ぶり祭りを動画で見る場合はこちら!! http://genki3.net/?p=22174