FM三重『ウィークエンドカフェ』2014年4月19日放送

立花圭さんが、学生時代の長期インターンシップで初めて紀北町に来たのが2009年。
2013年、東さんの会社、ディーグリーンに入社して、今、田舎でもできることや田舎だからできることに取り組んでいます。
そんなディーグリーンが始めた新しい事業が、紀北の魚を使った離乳食材『モグック』。
子育て中のお母さん、お父さんを応援していきます。
商品開発のきっかけは、東さんのお友だちからの話でした。

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■離乳食材事業『モグック』に取り組むきっかけ

 一昨年くらいから(ディーグリーンの中心事業である)デザインだけではなく、自分たちで企画して、何か物を販売していきたいという話をしていたんです。
そんなとき、東京で暮らす僕の友だちが「美味しい魚を子どもに食べさせたい」と。
しかし、自分で魚を買おうとしても、美味しい魚や旬の魚の見分け方がわからないし、どこの産地かわからない魚を食べるより、三重県だったら三重県の魚を子どもに食べさせたい。
そして、これを事業化したいんだけど、どこか受け入れてくれる所はないか・・・いう相談が来たんです。
正直、最初は離乳食材がビジネスになると思っていませんでした。
『魚』なんてどこにでもあるし、ネットで旬の魚も買えるし、ましてや離乳食なんて小さなマーケットで・・・。
しかし話しているうちに、面白いなと、ピンと来るものがあって。

この事業を通じて、ずっと三重県の魚を食べ続けてもらうことができる・・・そんな思いから、ちょっと仕掛けてみようと始めたんです。


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■『モグック』は簡単にフレークになる食材だけれど、ひと手間加えてほしい


 よく「魚嫌い」と言いますが、実際は魚自体が嫌いのなのではなく、調理が面倒だったり、臭いだったり、全部食べられるわけじゃないのが理由だと思うんですね。
だから小包装にすることによって食べてもらえるのではと。


立花 離乳食用の小包装で一回分。一回分が約20gです。
これは冷凍している状態ですが、この前に骨と皮を取り、120℃のスチームで加熱・加圧してあるので、解凍するとフレーク状になります。
離乳食を作る時に、とても便利です。
これならば時間がないときでも作れるし、お父さんでもできますよね。
箸でほぐしておかゆに入れるだけで、完成します。


 離乳食の瓶詰めなどはすでに浸透していますよね。
リサーチによると、都会のお父さんお母さんは忙しく、子どもにすぐ食べさせたいものを食べさせてあげられていない。
結果、瓶詰めなどに頼るんですけど、やはり罪悪感があるそうなんです。
この『モグック』は一手間加えることで『手作り感』が出るらしく、そこが喜ばれているんです。
さらに『旬の魚』というコンセプトもあるので、それも「ちゃんと作っている」というイメージにつながるようですね。

また、今回事業化するにあたって、食材を売るだけではなく、サービスについても考えました。
小包装ではどうしても単価が高くなるので、その単価に見合うサービスをしなきゃならないと。
例えば『お魚カード』を付けるとか。
「ひらめはかくれんぼする魚」など、魚の特徴を書いたカードを子どもさんに読み聞かせしてもらったり。
他にも、この食材を使えば10分でこの料理ができる『時短レシピ』などを付けようか・・・など考えています。


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■空いた時間は子どもとのコミュニケーションに


立花 今年の1〜2月に行ったモニタリングでは、最終的に300名ほど集まりました。
地域的には東京が36%、その次が大阪で、その後、三重。
東京が多かったのは、東さんの話にあったように、もともとの発案者のネットワークが大きかったのです。
それ以外にもFacebookなどで広報したところ反応してくれた人や、口コミなどで来た人も多かったですね。その2つで6〜7割くらいのモニター数になりました。
今後はもちろん、その声も反映していきます。


 もともとベンチャーという形でデザインの仕事をしていて、お客さんの希望のものを作ってきたんですが、今回はモニタリングが面白かったですね。
「私もお手伝いできることがあればさせてほしい」
「ぜひ事業を続けてほしいので、お手伝いできることがあったら言ってください」

今まで仕事して、こんなに「お手伝いしたい」なんて言われたことはありませんでしたから(笑)
すごいなと思いました。


立花 パッケージに関しては、紀北町で雇用した方の1人が、デザイナーでお子さんのいるお母さんだったので、母親の目線を入れて、優しい感じのデザインをお願いしました。
だいぶ時間をかけましたし、その分こだわりが詰まっています。
本当にネーミングから何から、ゼロから全部作っていったので、彼女たちにとっても大変な作業だったと思います。


 『モグック』という名前は、『もぐもぐ』『クック』する。
覚えやすいでしょう。
キャッチフレーズは、「ママを応援おさかな便」です。


立花 やはり気持ちはそこにあります。
忙しいお母さんとお父さんを、少しでも時短ができる食材やレシピで我々がサポートするので、そこで生まれた時間を子どもたちと一緒に過ごしてほしいですね。
食材をただ単に送るのではなく、空いた時間を家族とのコミュニケーションで埋める商品にしたいですね。

まだまだ、いろいろな面で田舎を変える要素があると思います。
今まではできたものを売っていきたいという話が多かったのですが、商品開発からいくとまだまだ技術の向上で面白いものができるような気がします。
地元にいながら、まだまだ僕にも見えていないものがあったようですね。


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■豚・アルコールがNGのイスラム教徒の国に日本の食べ物を売り込む


立花 モグックの事業のほかにも新しく取り組んでいることがあります。
それは『ハラル認証』。
『ハラル』というのは、イスラム教の人でも宗教上、食べることが許されている食材です。
豚やアルコールなどが禁止されているのは有名ですね。
今、その『ハラル認証』が日本のマーケットでも、非常に注目されているんです。
我々の会社でも地域のお客さんたちとお話しして、ハラル認証を取って、海外展開に使ってみてはという提案をしています。
なぜハラル認証が良いかというと、2020年に開催される東京オリンピックには世界中からお客さんが来ます。
イスラム教徒もとても多いので、その方々に向けてのアピールになるでしょう。
それから、そもそも東南アジアはイスラム教徒がとても多いんですよ。


 全世界では16億人。
さらに2030年までに、人類の2/3がイスラム教徒になると言われています。
なので今、『30兆円産業』とも言われています。
そういうマーケットが存在するよ、そういうビジネスがあるということを、まずお客さんに勉強していただく。
そして、ここが重要なんですが、魚はすべて『ハラル』、食べることが許されている食材なんです。
ということは、ここはとてもビジネスチャンスのある町なんです。その部分からアプローチできないかな、と思っているところです。

実際、東南アジアに地元の食材を持っていき展示会をしたところ、一番人気だったのが意外にも『あられ』と『せんべい』
東南アジアは、朝昼晩、食事と一緒にせんべいを食べる文化があるんですね。
ナシゴレンなどに付いている海老せんべいをイメージしてもらえるとわかると思いますが、ああいう感じでせんべいを食べています。
枚数も1枚2枚ではなく、家族みんなでバリバリ食べるらしいです。
そういう背景があって、せんべいやあられが売れたのかな、と。

あとはやはり『made in Japan』が強いですね。
スイーツにしても日本のスイーツは強い。
シンガポールには高島屋があるんですが、やはりデパ地下のスイーツのゾーンは行列なんですよ。
そういうアプローチの仕方も面白いのかな、とも思っています。

地元にいながら、僕にも見えていないものがまだ、たくさんあるようです。