「ふれあい」vol45

ブリ漁など漁業の盛んな尾鷲市早田町は、過疎・高齢化に悩んでいました。
元気な町を取り戻すため、住民全員で課題を認識。
各人が得意分野でまちおこしに参加する独自の活動についてお話を伺いました。

haida1-1

haida1-4

会長 岩本芳和さん


早田_おもて2

組織図

■元気な町を取り戻したい 住民、行政、大学が連携

尾鷲市早田町は大敷網漁で栄えた漁業の町でしたが、過疎化、高齢化などの課題を抱えていました。
現状に危機感を感じた私たちは、三重県、尾鷲市、三重大学の力を借りて、早田地区活性化事業を平成21年より始め、その後、地区会役員、消防団、企業など町の主だった人に協力を求め、まちづくり活動の実働部隊としてビジョン早田実行委員会を設立しました。


haida1-2

■課題解決に向け、5つの部会が活動する

委員会では5つの部会を作り、まちづくりを進めています。
東日本大震災以降、地区の防災に力を入れるため設立されたのが防災部会です。これは消防団が中心となり、避難経路の確認、食料品など備蓄品の点検などを行っています。
町の基幹産業である漁業を盛り上げようと漁業者部会を設立。
ここでは漁師になりたい人のため、早田漁師塾を開講し、漁師の仕事や早田での生活を体験してもらっています。
おかげさまで初年度は2人、昨年度は1人が早田で漁師になりました。
ホームページ部会では、ブログなどを用いて、早田の現状や私たちの活動を知ってもらうための情報を発信。
早田に縁のある人に援助してもらうため、はいだサポーターの募集もここで行っています。
早田地区の女性パワーを結集し、地域を盛り上げる役割を担うのが地域づくり部会です。
この部会では、休耕地での野菜作りと野菜販売、地域内の花壇の手入れ、はいだサポーターへお送りする干物や漬物などの特産品作りを行っています。
笑顔食堂では、地区の女性たちが月に一度、高齢者のためにワンコインで食べられるお弁当を作っています。
この弁当は、県外からやってくる独身の漁業者にも好評です。
町の課題を解決し、まちづくりに必要なテーマ毎に部会が関わっています。
今後はもっと多くの人に参加してもらい、早田を活気のある町にしていきたいですね。


●防災部会
haida1-5
haida1-7

部会長 川口正道さん


早田町は前面を海に、背後を山に囲まれていますが、みんなで力を合わせれば、津波の被害も最小限に抑えられます。
防災部会は、女性にも協力してもらい、新たな視点で避難路の確認を行っています。
また、他町から早田町へは道が一本しかないので、災害時には1週間分の食料や生活用品の備蓄が必要と提案してもらいました。
住民同士のつながりが密で、寝たきりの人がどこにいるかを、みんながよく分かっているのが早田の良いところ。
そういった結びつきを大切にし、今後は防災地図作りや避難路の整備などを進めていきたいです。


●漁業者部会
haida1-8
haida1-9

部会長 東萬寿治さん


活動のメインは早田漁師塾の運営です。
この事業は、漁業に興味をもった都市生活者と漁業の担い手のいない早田を結びつけることを目的としています。
この塾では、4週間にわたって漁業や漁村での生活を学び、意欲のある希望者には漁師として働いてもらいます。
初年度は2人、昨年度は1人が早田で漁師になりました。
その内の1人は地元の女性と結婚して漁業を続けています。
この地で家庭を持ち、子育てや定住をしてくれれば、本当に嬉しいことです。みんな親切なので、塾生におかずを分けたり、家の掃除をしたりと面倒をみてくれるのもありがたいですね。


●ホームページ部会
haida1-10
haida1-11

部会長 湯浅光太さん


早田の『今』を他所に住む早田出身者に届けたい、地元では当たり前だけど、他所ではすごいことを知ってもらいたいと、数人の仲間がライターとなり情報発信しています。
最近ではフェイスブックにも力を入れるようになりました。
インターネットを通じて、早田の近況を知った地元出身者から応援したいという声があがり、「はいだサポーター」という制度が生まれました。
また、漁師塾の塾生もインターネットを見て、応募してくれた人がほとんどです。
今後もさらに情報発信を続けて、早田のファンを増やしていきたいです。


●地域作り部会「ひまわりの会」
haida1-12
haida1-13

部会長 東周子さん
早田に住む20歳以上の女性全員が会員となってもらっています。
現在は休耕地を整備し、野菜を育てたり、野菜を漬物に加工し、「はいだサポーター」へ送るとともに、住民のためにも販売したりしています。また、多気町の大豆と尾鷲市の塩を使ってみそ作りも行っています。
年2回の町そうじや、プランターの花の植え替えなども協力しているほか、今年3月には防災の勉強会を開きました。
今後も早田地区の女性のパワーを結集し、まちづくりを盛り上げていきたいです。


●笑顔食堂
haida1-14
haida1-15

部会長代理 岩本啓代さん


慶應義塾大学と共同で行った尾鷲元気プロジェクトで、早田には「食事のできる場所がない」という課題が浮き上がりました。
そこで月に一度、高齢者のためにお弁当を作り、ワンコインで食べられる場として笑顔食堂が始まりました。
一人暮らしのお年寄りが家にこもるのではなく、一緒にお弁当を食べて笑顔になってもらうのが目的です。
お弁当には、地域でとれる魚、ひまわりの会の野菜などできるだけ手作りにこだわっています。
独身男性がお弁当を買いに来たり、予想外のつながりもできたりしました。今後はお惣菜の販売も増やしていきたいです。