FM三重『ウィークエンドカフェ』2014年6月7日放送

今回のお客様は、大台町で絵本の読み聞かせを行っている『おはなしプーさん』代表、小野清美さんです。

『おはなしプーさん』は、今から12年前に活動をスタートしました。
みんなに親しみをもってもらえるようにと名付けられた『プーさん』という名前。
図書館での読み聞かせをはじめ、大台町の小学校や幼稚園にも出かけて活動を行っています。
絵本と子供が大好きな21名のメンバーは、小野さんにとって心強い仲間たち。絵本の楽しさを知っているみなさんです。

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■絵本との出会い

私が幼かった頃はまだ、「絵本の読み聞かせ」という概念があまりなく、親に読んでもらったことはありませんでした。
けれど9つ下の妹の時代になり、親が子どもに絵本を読んであげるということが増え、母親が妹に読んでいるのを横で聞いていたんです。
耳だけで聞いている私も、とても心地よかった記憶があります。

その後はまたずっと絵本から離れていましたが、自分が親になり、子どもに読み聞かせをするようになりました。
そのとき、絵本が絵から得られるものも多く、聞いていて心地よいことを思い出したんです。
そこで他の図書館の読み聞かせを聞きにいったら、子どもだけでなく自分も心地よくなって・・・これなら自分もやってみたいなと思い、始めたました。

一番最初に出会った本は『だってだってのおばあさん』『そらいろのたね』・・・全部親が妹に読んでいた本なんですけど(笑)

新しい絵本も毎年何千冊も出ていますが、昔から読み継がれている絵本もあります。
これらは絵も地味で昔風のため、今のお子さんが手に取りにくいのですが、時代を超えて残っているということは、それだけ優れた内容なんです。
お子さんたちが手に取りにくい分、私たちが読み聞かせをすることで紹介したいですね。


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■淡々と読むことを心がけている『プーさん』の読み聞かせ

できるだけ淡々と読むことが基本。
自分の個人的な思い入れを、表に出さないようにしています。
以前、ある絵本作家の講演会で聞いたのですが、絵本を作ると言うのは本当に産みの苦しみだと。
一字一句を。ああでもないこうでもないと苦しみながら作るとお聞きしたことがあって。
そこまでして1冊の本を生み出すからには、絵本を通して伝えたいことが必ずあると思うんです。
だから、作者が伝えたいことを、読み手が自分自身で解釈するのではなくて、子どもたちに淡々と読むことで、聞き手の子どもたちに、作者の思いをゆだねます。
音響もないし、声色も使いません。
子どもによって面白いと思う部分、怖いと思う部分・・・子どもが40人いたら、40通りの感じ方があると思うし、頭の中に描く主人公も40人いると思うんですよ。
絵本を通じて想像する力を育んでほしい。
そのために子どもに託す、という読み聞かせ方を心がけています。
もちろん、本を選んだ時点では思い入れはありますが、それは見せないようにしているんです。


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■はじめのころは子供の前で読むのが怖かった

読み聞かせをする前は、もちろん自分の子どもにしか読んだことがありませんでした。
しかも専業主婦だったため、人前で話をしたり立ったりすることも、ほとんど経験がなく。

相手が子どもとは言え、3〜40人の前で声を出したりすること自体がまったくなかったので、ある意味新鮮なんですが、一回一回がとても怖かったです。
ドキドキで、手は震えるし。

読んでいる最中に『この本で良かったのかな』と思うこともしばしばです。
「ガハハハ!!!」と笑ってくれる時は、一目瞭然で楽しんでいるんだな、とわかりますが、物語にすーっと入ってく時の絵本の喜びは、表に出て来ません。
頭の中で想像をめぐらせていると言うことが、今では経験でわかるようになってきましたが、最初は楽しくないから反応してくれないのかな、と余計な心配がありました。

今となっては「ガハハハ!!!!」と笑って、その場で終わっていく絵本よりも、子どもの心の中に浸透していく絵本が、いつまでも心の中に温まっているんだな、とわかります。
絵本を読んでいて、供たちがすーっと絵本の世界に入っていく瞬間を見ると、こちらも、何ともいえない心地よさを感じるんですよ。


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■民話や、その家や地域で語り継がれるお話もおもしろい!

海外の絵本は、翻訳家が間に入っているので、翻訳の仕方で大きくイメージ変わってくると思います。
同じ絵本でも、翻訳の言葉の選び方によって、面白さが違ったり。

ところで、海外のものだけではなく、日本の民話にや昔話にも『再話』を集めた本がたくさんあるんです。
作者が現地に向かい、昔から伝わってきた話を村の人たちから聞き、わかりやすくしたものが『再話』。
絵本になっているものも、いっぱいあります。
例えば『桃太郎』。
同じ桃太郎でも、こちらの地方の桃太郎、別の地方の桃太郎、いろいろあるんですよね。
再話の仕方で、同じ話でも変わってくる面白さがあります。
小学校へ行くと、「自分の知っている昔話と違う!」などの声が上がったりして。
同じような話でも伝わり方が違っていたりとか。
私たちも発掘する楽しみがありますし、奥が深いですね。

私たちも読み聞かせをしていますが、やはりしてもらいたいのは、家庭での読み聞かせ。
お父さんやお母さんが子どもに読み聞かせるのが、一番良い形だと思います。