FM三重『ウィークエンドカフェ』2014年7月26日放送

三重県の文化財にも指定されている『大入道』。
四日市の中納屋町の皆さんが現在まで大切に守り続けられています。
その中心で活動されているのが今回のお客様。
大入道山車保存会の家城宏光さんです。
夏の『大四日市まつり』と秋の『四日市祭』にこの大入道が登場します。
今年の『大四日市まつり』は8月2日、3日ですよ。

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■『大入道』は日本一のからくり人形

『大入道』は、からくり人形としての大きさが日本一です。
人形の部分だけでも4m50cm、乗っている台が1m80cm、首が2m70cmほど伸びるので、合計すると9m近くなります。
他のからくりは1mくらい。
『大入道』の大きさがわかるかと思います。
地元の人はこの『大入道』を親しみを込めて、『おにゅうどうさん』と呼んでいます。
それくらい地域の人に愛されているんですね。

『大入道』が出来上がったのは文化2年、1805年です。
『桶之町』という町の持ち物でした。
そして町の統合によって、現在は『中納屋町』の物となっています。

秋の『四日市祭』はわかっているだけで350年ほどの歴史があるのですが、毎年、それぞれ氏子の町が、趣向を凝らしていろんなものを奉納。
一番多い時で26町が町自慢の品を出しました。

『大入道』についてですが。
かつての桶之町は味噌屋さんが多く、蔵があったため、狸が住みつき人を化かすようになったそうです。
その狸を退治するために人形を作って化かし合いをするようになり、それがだんだんエスカレートして今の大入道の大きさになり、恐れた狸が出なくなった・・・という言い伝えで、この『大入道』が生まれたと言われています。
しかも『大入道』の道具が入っている箱には『大化町』と書いて『おけのまち』と読ませている。
駄洒落ですね。
これが書かれたのは明治8年だそうです。


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■保存会のメンバーがセミクジラのひげを使って『大入道』を操作

保存会の人数は20名ほど。
『大四日市まつり』が近づいてくると、大入道の修理などを行います。
からくり人形は一回動かせるとどこかが傷んでしまうので、毎回修理しないとなりません。
人形を修理するとき、首の直し方、紐の結び方などをきっちりと伝えていきます。
みんなで直すことで、保存会が継承されていくんです。

現在の『大入道』は首が伸びるだけでなく曲がるのですが、そうなったのは150年ほど前。最初はまっすぐだったんです。
明治の初めに人形師の浅野寿三郎親子で修復した時に、セミクジラのヒゲを使って曲がるようにしたそうです。
セミクジラのヒゲは伸ばしたり縮めたりするのに向いていて、さまざまなからくりにも使われています。
倒す時はくじらのヒゲを無理矢理引っぱり、中のピンを抜くことによって頭の重みで倒れていく。
起こす時はまた引っぱる。
引っぱると穴があいているので、そこに自動的にピンが入るようになっています。
セミクジラのヒゲがバネの役目を負っているんですね。
セミクジラのヒゲではないと伸びず、変わるものがありません。
一度鉄で作ったことがありましたが、伸びずに使えませんでした。

首を起こすのは、体力仕事でもあるしテクニックも必要です。
大きいので、起こす時は二人がかり。
しかし、このからくり細工の技術は素晴らしいです。
200年以上昔の人たちが、よくこんな仕掛けを考えられたものだ、と感心しますよ。


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■『大入道』の中に入っているのは8人

首がびゅーっと揚がっていて急に倒れる。
その時に歓声があがるんです。
上げ下げするタイミングは1人の合図。
中にいると見えないので、目の役目をしている人の合図で、すべてを動かしています。
首の上げ下げは2人ですが、大入道を動かすために、全部で8人入っているんですよ。
手を動かすのは右と左で2人。
それと胴体を動かす人、目を動かす人、太鼓をたたく人、銅鑼を鳴らす人、それと、さきほどの2人・・・合計8名。

一番大変なのは、手を動かす人です。
手の中は布団のようになっていて、その中に入って操作するので真夏は暑いですし、ずっと動かしていますし・・・。
次に大変なのが首の上げ下ろしをする人。

他の部分は簡単と言えば簡単ですが、一番重要なのは目を動かす人です。
その人の合図で、全部のパーツを動かすので。

実は、実際に『大入道』を使ってのからくりの練習はできません。
普通のからくりだと公民館などに持ってきて、室内で練習できますが、『大入道』は大きすぎるため、練習のためだけに外に出すことが難しいのです。
それがネックですね。
練習なしで、いきなり本番なんです。


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■18歳から人形師として活動

僕は高校卒業の18歳から人形に入る人・・・いわゆる『人形師』として活動してきました。
昔は、体力的な理由などから活動できなくなった1人がやめると、1人入れていたんです。
構成される人数が昔から8人と決まっていわけです。

しかし僕が保存会の会長になり、8年ほど前にこの人数では足りないと思い、募集し、20名ほどになりました。

8人に入れるということはある、意味ヒーローであり名士。
しかしまつりの3日間は大変です。
昼ご飯以外は降りるなと言われているくらい。
そうすると、昔の人は、生卵を入れてくれるんです。
どうしろと言うのかと思っていたら、これをすすれと。
一番体力的に持つ、精力剤のひとつだったんでしょうね。
生卵を人形の中で、みんなですすりました(笑)
8人は『人形師』の他、『人形方』とも呼ばれていました。
対して、舵を取る人は『舵方』です。

今年の『大四日市まつり』は8月2日、3日です。
『大入道』は、中納屋町で組み立てられて、そこから大四日市祭りの会場へと
移動していきます。
首を倒した時の迫力を感じて欲しいですね。