FM三重「ウィークエンドカフェ」2010年07月03日放送

今回のお客様は、伊賀市にある和菓子屋さん 桔梗屋織居の中村伊英さんです。
中村さんの修業時代のお話、お菓子の名前の付け方、町づくりのことなどいろいろと聞かせて頂きました。

創業は慶長年間という、400年以上も続く老舗和菓子店。
現在のご主人はなんと18代目だそう。
まぎれもなく、伊賀の文化の一端を担ってきたお店です。

■創業400年というと、江戸時代のはじめですね

ええ。
藤堂高虎公が出城として伊賀上野城を建設したころから続いております。
高虎公は文武両道で、武術だけでなくお茶にも親しんでいたので、そういった文化が伝統的に根付いていたんですね。
今の城下町も高虎公が築いたもので、三筋町といいまして本町・二ノ町・三の町にお城の御用商人を住まわせ、保護していたそうです。
桔梗屋は創業当時から、この場所で商売させてもらっています。

■お店の名前の下に付いている『織居』とは?

最初の屋号は、家紋から付けた『桔梗屋』だけだったんですが、当時は屋号の下に、お得意様から名前を頂戴する慣習があったんですよ。
「うちの御用を務めろ、ついてはこの名前を授ける」みたいな(笑)
伊賀の城代家老様から戴いた名前だと伝わっております。
意味は名前であったり、何かの理由であったり・・・。

■和菓子について思うことは?

大学を出てから専門学校へ・・・そこから金沢の老舗の和菓子屋さんで修行させていただきました。
一子相伝で自分の跡継ぎだけに教える和菓子屋さんもありますが、長い目・広い目で見ると、やはり人に伝えるのが必要では。
もしそのお店が残らなくても、そのお菓子は日本のどこかに、また和菓子の歴史として残ることになると思うんです。
例えば、伊賀の名物の『固焼き』。
伊賀の和菓子屋さんだったらどこでも扱っています。
これは、小麦粉と砂糖を練って固く焼きしめたお菓子で、おそらく原型は穀物を固めた兵糧だったんじゃないかな。
それがこうして今に残り、たくさんのお店で売られているんです。
伝えることの重要や、モノ自体の歴史を感じますね。

■創作和菓子に意欲的ですが・・・

だいたい、1つの創作和菓子を完成させるのに、3年くらいかかります。
使える素材・お菓子・・・今、美味しいといわれてるものを、エッセンスとして取り入れて。
私みたいな職人は、思いついたらすぐ、自分の手先を使っていろいろできるから楽しいですよ!
牛乳やクリーム、コーヒーや紅茶の香り・・・試して食べてもらった結果として、洋風なものもラインナップに載るようになってきました。

10個試作して、店頭に並ぶのは3~4割。
けれど残りも諦めるのではなく「美味しい」と言われるまで工夫を続けていて・・・言わばレギュラー入りを待っている状態です(笑)。

■伊賀で和菓子をつくるということ・・・

和菓子は食べて美味しい、見て綺麗・・・で、自分に絵心があるかというと、おそらく全然ないんですね(笑)。
でも、ふっと思いついて生まれた商品なんかは、自分でパッケージのデザインを作ります。
ここ伊賀上野は、芭蕉さんの生まれ育った土地・・・短い言葉で風景や感性を切り取るお手本がいるんですよ。
それが伊賀が培ってきた文化なんですね。
だからお菓子の名前なども悩んだことがないです。
お城があって、歴史があって、芭蕉の感性があって・・・名前となる要素がいっぱいあるんですよ、ここには。

和菓子は、その土地の文化や歴史を表現する商品だと思っています。
和菓子の商いは街づくり。
これからも、伊賀の顔となるような和菓子を生み出し、作り続けます!