FM三重「ウィークエンドカフェ」2010年07月31日放送

今日のお客様はは馬明窯の畑中伊紀さん。
陶芸作家さんです。
みかん畑のまんなかに畑中さんの窯はあります。
東紀州のすばらしい景色の中で畑中さんの作品がつぎつぎと出来上がってくるんです。
そんな畑中さんがいま凝っているのが急須。
急須をつくるのがとってもおもしろいんですって!
畑中さんの作品のカップでこれからコーヒータイムにしようかな?

■陶芸家を目指したきっかけは?

高校時代までは全く興味はありませんでした(笑)
そのまま何も考えずに漠然と大学に進んだとき、ふと、「大学を出たらどうするんだ?」と思ったんです。
できることなら生涯続けられる仕事をしたい・・・と考えていて、浮かんだのが『陶芸』。
何というか、一生続ける仕事の中で、一番日本的なものを、と。
特に日本の陶芸は、工芸の中でも一番特色があると思ったんですよ
海外は磁器だけだったり、陶器だけなのに、日本のにはその両方があるじゃないですか。
『陶芸』に関して言えば日本は世界の最先端をいっているんじゃないかと。
まあ、これも後からいろいろ調べて気づいたんですけど(笑)

■いつから修行をはじめられたんですか?

22歳で思い立って、津市白山の『白山窯』の高山光先生のところに行って、
「どうしたら陶芸家になれますか?」っていきなり聞いたんです。
だって本当に何も知らなかったから(笑)
その時ちょうど、お弟子さんが独り立ちされた時だったこともあって、そのまま弟子にさせてもらいました。
修行の最初は、庭の草むしりから。
けれどすぐに土に触らせてもらえて・・・ありがたかったですね。

それで3年間修行した時点で、「もう独り立ちしてもいいよ」って言われたんですけど、もうちょっと居させてもらおうと。
でもやはりだんだんと『自分の作品』が作りたくなって来るんですよ。
結局5年目で独立・・・29歳で、この工房を作りました。

■ご自分の作品へのこだわりは?

ざらっとした優しい土の感じ・・・焼いたままの土の質感が好きですね。
焼き物の釉薬には、灰、長石、鉄などの金属を使うんですけど、一番こだわっているのは、灰、木の灰です。
雑木や松やミカン・・・灰によって発色が全然違うんです。
ミカンの木の灰を使ったは釉薬は、焼くと意外なことに青っぽくなるんですよ。

焼き物は火が作り出すものなので、窯の口を開けるまでは、いつも期待半分です。
使う素材や方法が初めてのときは、結果がどうなるかわかりませんから。

納得できない作品ができることもありますが、なるべく壊さずとっておくことにしています。
失敗も参考になるというか、見ると思い出す・・・言わば『記憶のかけら』ですね。
こういうのを繰り返して、徐々に自分独自の作風が出来ていくんじゃないでしょうか。
なので窯焼きのたびに考察し、データとまでは行かなくても毎回気づいたことを書き留めておくようにしています。

■作品について思うこと・・・

焼き物は、釉薬・・・つまり普通なら捨ててしまう灰を、使うところがエコ。
捨てるものを生活に使えるものに変えて、生まれ変わる。
割れてしまうこともありますが、生活の一部として使ってもらえると嬉しいですね。
誰かが僕の作った器を手にとって、お気に入りとなって一生使ってもらえたら・・・それが一番の喜びかな。