FM三重『ウィークエンドカフェ』2014年11月29日放送

今回のお客様は、尾鷲市九鬼町で『地域おこし協力隊』として活動する豊田宙也さんです
東京生まれ、東京育ちの彼が、三重県にやってきたのが今年の9月24日。
豊田さんが九鬼の町に住んで、ようやく2ヶ月。
毎日、海を見ながらの生活って本当に素敵です・・・と笑顔で答えていただきました。
魚はおいしいし、人は優しい。
番組アシスタントであり、尾鷲の地域コーディネーターの伊東将志さんとは、尾鷲であがったいろんな魚をさばいて食べる会、『魚会(さかなかい)』などで楽しい時間を共に過ごしているそうです。

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■九鬼町に食堂をつくることがミッション

今、僕がいるのは、九鬼水軍発祥の地と言われる尾鷲市九鬼。
入江があるので、沖からの波があまり入ってこないような地形になっているため、海がすごい穏やか。
住まいが海の目の前なので、毎朝、海を眺めています。
だいたい水も澄んでいるので魚も見えるし、人もよく通る場所です。

この地で僕がやっていこうと思うのは、飲食店を作ること。
10年前に喫茶店が閉店して以来、九鬼には食堂が今、1軒もないんですね。
なので、その閉店した喫茶店を借りて、新しく食堂を始めようと、町の人と協力して少しずつ進めているところです。


伊東将志
都市部の若者を田舎に連れてくるという仕事が増えまして。
というか、田舎で働きたいと考えている若者が実は多い。
尾鷲は若者が少ないので、面白い人材を連れて行くという仕事をしています。

豊田くんもそうなんですけど、『地域おこし協力隊』とうう制度があり、いろんな町が活用しているんですけど、尾鷲市の場合は、ここ九鬼とか、以前紹介した早田とか、集落に入ってもらって、その町が困っている課題に取り組んでもらう、という仕事をしてもらっています。
いろいろ募集かけたところ、宙也くんが選ばれて、9月から来てもらっているという感じです。



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■尾鷲とフランスのマルセイユは似ている?

大学在学中、フランスのリヨンに1年ほど留学した経験があります。
これを言うと、ちょっと言いすぎかなと思う時もあるんですけど、尾鷲ってマルセイユに似ているんです(笑)
ブイヤベースがないのが不思議なくらい(笑)
どーんと大きな港町があって、その脇に小さな港町が点々とあるというのと、地形も不思議と似ているんですよね。
実は僕もマルセイユには一回しか行ったことがないので、マルセイユ好きに言わせるとぜんぜん違うのかもしれませんけど(笑)
でも、初めて訪れた時に、最初の印象で思ったんです。



伊東
履歴書を見た時にフランス語ができると書いてあったので、どんな人なのか、とても興味があり、会いたいなと思っていたんです。
東京で開催したイベントに宙也くんが来てくれて、その時、「シュッとしている人だな」と思ったんですけど、意外と話すと面白くて。
フランス語云々よりも、宙也くん本人の魅力が、選考における得点になったのかな、と。



さらわれてきた側から言わせていただくと(笑)、伊東さんはもちろん、尾鷲市役所での面接の方にも九鬼の町の方にもお話させていただいたんですけど、こちらの人は、なんというかカッコいいですね。
この地域はかつて人口が3000人ほどいて、今もしていますがその頃からブリ漁も盛んで町も賑やかだっだらしく、パチンコ、映画館、お好み焼き、銭湯もあったりして、一つの歓楽街を形成していたらしく。
今もその名残があるというか、町の人がかっこいいというか、派手好きというか、やんちゃ。
面白い人たちが多いですよね。

また、人の繋がりがとても強いです。
人が人を呼ぶということができそうだし、もっと言うと、自分にできることは、今のところ人が人を呼ぶしか、まだない・・・それくらい強いと思います。


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■哲学と映画を学んだ留学生活を活かし、映像でも九鬼を発信したい

フランスに行った理由は、もともと哲学と映画を勉強していたのと、リヨンが映画発祥の街だということもあって行きたかったんですね。
僕が通っていたのは英語がメインの大学だったのですが、2〜3年学んだ後、イヤになってしまった(笑)
英語はイヤだから英語を絶対使わない国・・・フランスに行ったんです。

九鬼には、映画的に絵になる場所がたくさんありますね。
山や路地、海・・・山から海まですべて、本当に面白くて。
そのままドキュメンタリー映画になるような感じですよね。
先日、定置網漁の船に乗せてもらったんですけど、本当に面白くて、漁師さんがカッコよくって。
網を寄せるまでは縁に寄りかかってタバコを吸っているような人たちが、ひとたび魚が網にかかると、ガッと目つきが真剣になって。
で、終わるとまた、ゲラゲラ笑いながらイカをさばいて刺身食べて、みたいな(笑)
なんて良い暮らしをしているんだろうと思いました。
釣り船はもちろん、漁師の船に乗るなんて初めてでしたし。
そんな漁の光景なども残していきたいですね。
カメラをやっている知り合いもいるので、撮ってもらおうと思っています。

伊東
尾鷲の町からちょっと離れた集落って、そもそも県内の人も行ったことない人がほとんどなので、映像で紹介できたら良いですよね。
今までこういう話をあまりしてこなかったけど、意外といいかも・・・。


写真だけじゃなくて、映像だとかなり伝わるような気がしますね。
九鬼の静かな感じ・・・波の音だけがチャプチャプいっているのも、またいいんですよね。


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■レトロモダンな食堂を地域の人の『つどい』の場に

九鬼はブリの季節ではない時も、多様な品種の魚が揚がります。
見たことも聞いたこともない魚が、毎朝港にバンバン揚がっているんですよ。
これなんですか、っていうような魚が。
いっぱい揚がるときもあれば、2匹3匹だけとか。
でも本当に、図鑑では足りないというのでは、と思うほどに種類が豊富です。
どの魚を見ても、それが何かわかるようになりたいですね。
ただ難しいのが、魚を知っていても、「九鬼ではそう呼ばない」と言われたりとか(笑)
地域での名前がありますから。

食堂を立ち上げるプロジェクト、具体的なところは町の人とこれから詰めていきますが、九鬼は多品種のいろいろな食材が入ってくるところなので、それを使った料理を出していきたいですね。
こちらに来て、びっくりしたのは魚がとてもおいしいこと。
メイチダイのお刺身やその頭が入ったお味噌汁、アジの姿寿司はとにかく感動しました。
九鬼の食材を使った料理をメインにしたいと思っています。
料理が上手なのは女性は方はもちろん、漁師さんもみなさん刺し身を作るくらい、上手ですよね。
そんなこと、東京では考えられませんでした。

先日どなたかが映画『かもめ食堂』の話をされて、「そういえば九鬼ってフィンランドに似てるよね」って。
それはどうかなと思ったんですけど(笑)
でも確かに、穏やかでのんびりとした空気っていうのは似ているかもしれないですね。

今、復活させようとしている喫茶店はかつて『つどい』という名だったので、それを継承しようかなと思っています。
その建物の正面に角丸窓が3つ並んでいて、レトロモダンというか・・・やはり『かもめ食堂』寄りの、柔らかい雰囲気。
昔でいう、スナックもしくは純喫茶的な。
お昼には純喫茶で、一定の時間からスナック化するお店というか。
『つどい』の中には、ステージやミラーボールもあるんですよ。
まさしく昔ながらの純喫茶兼スナックですよね(笑)

まず喫茶店に関しては、モーニングをしてくれという声があるので、そこから。
それから、お惣菜やお弁当があるととても便利だ、という声も挙がっているので、町の人の便利を優先的に考えて・・・それから町の人が楽しくつどえる場を作っていきたいですね。
そしてさらに、今度は町の人と一緒に、外の人を呼べるような形にしていきたいなと思っています。