第119回『サルシカ隊長レポート』2015年2月

トロッコ列車に乗って秘湯温泉へいく!
三重県熊野市紀和町を写真師マツバラと訪ねます!

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トロッコ列車を降りると、そこは「つげ義春」的なセピア感漂う、ひなびた温泉であった。
つげ義春なんて今の人にわかるかい、というツッコミがあったけれど、わかる人にわかればいいの!!
時間と好奇心を持てあましてる人はぜひともGoogleさんにでも聞いてください。
淀んだ世界観をお楽しみいただけます(笑)。

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改めて言っておくけれど、ここには車でも来ることができます。
でも秘湯気分を味わうにはやはりトロッコ。
騒音で耳が痒くなりますが、それも旅の醍醐味(笑)。

トロッコの線路とトンネルはこの駅のあとも続きますが現在は閉鎖中。
トンネルの中をのぞくと、キノコが栽培されていた。
どこかで食すことができるのであろうか。

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川をはさんで建物が並ぶ。
左手は湯治客が泊まるバンガロー。
右手をあがった見晴らしのいい場所にはロッジが建っている。
湯治の人も、家族でのんびり過ごしたい人も対応している。

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掃除を終えたばかりのバンガローを覗かせてもらう。
1部屋6300円で3人まで宿泊可能。
食事は自分で用意しなくてならぬがお安く泊まることができる。
しまったなあ、いまの温泉があるうちに家族で泊まりにくればよかった。
しかしもう悔やんでも遅い。

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ここがバンガローに併設された自炊場。
ガスは有料。
コインを入れると使用可能になる。

自分でメシをつくるのが面倒だなあという人はお弁当の注文もできるそうだ。

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こちらがロッジ。
若干高くなるけれど、若いグループや家族連れにはいいだろう。
温泉ではないが部屋にお風呂もついている。

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写真師とあっちへふらふら、こっちへふらふら歩いていたら、身体が思い切り冷えてしまった。
足の指先が痛い。
山あいの温泉なので熊野といえどかなり寒い。
さあ、いよいよ温泉だ!!
いそいそと手ぬぐいを取り出して入浴の準備をはじめるが、写真師は外観やら雰囲気を撮るという。
なかなか中に入れてくれない(笑)。

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どうです?
建物もなかなか味わい深いでしょ?
かなり古く見えるけれど、実は35年前につくられたもの。
ワタクシより若いのであるな(笑)。

ここが2月28日を持って閉鎖され、取り壊される。
ちなみに原稿を書いている本日が27日。
つまり明日。

「えええええええ! じゃあ明日いかないともうこの温泉に入れないのか〜!!!」

何やらパソコンの向こうからみなさんの怒号が聞こえてきそうです。
すんません。
その通りです。
3月の下旬に新館がオープンし、また再開されるのですが、これからワタクシが入る温泉は明日までです。
最終日はかなりの混雑が予想されますので、いかれる方はご注意を。

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さて。
暖簾をくぐって中へ入ろう。
脱衣場の雰囲気もいい感じです。
床が少しベコベコするけれど、それはご愛嬌(笑)。

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「ふひ〜〜〜!!!」

お約束のあえぎ声を出して湯船に浸るワタクシ。

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三重県の消えゆく村の郷愁を撮りつづける写真師マツバラは、いつも以上に燃えて撮影している。
ワタクシなんぞほったらかしだ(笑)。

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川に面した外には露天風呂もある。

こちらの湯は源泉掛け流し。
加温も加水も一切していないそうだ。

泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉。
お湯を舐めると少ししょっぱい。
硫黄っぽい匂いが少し立ち込める。

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ちなみにこちらの湯ノ口温泉の歴史に少し触れておこう。

Wikiによると、
「開湯は約700年前、後醍醐天皇の指示でこの周辺の金山を開発した際に発見されたとされる。
南北朝時代には既に温泉地として開かれていた。
その後の鉱山開発などで昭和初期には温泉は枯れてしまった。
しかし、1978年(昭和53年)に鉱山が閉山後にボーリング調査を行った際、地下1300mに源泉を発見し1979年(昭和54年)に湯元が営業を始めて湯ノ口温泉は復活した」
とある。

うーむ。
古くて新しい、なんだか伊勢神宮でいう「常若(とこわか)」の温泉なのだ。

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湯治場だけあってここの湯はキく。
ガツンと身体にくる感じ。
朝早く津を出たこともあるだろうが、湯から出るとぐったりとした疲労感に襲われた。
それでいて気持ちがいい。

売店周辺に、湯治客の感謝のメッセージが貼り付けられていた。
さまざまな人がここの湯を求めてやってきて救われてきたのであるなあ。

火照る身体を冷まそうと写真師と再び外へ出た。
すぐ隣で重機の音がした。
きれいな新館を建設中であった。

味わいのある古い施設がなくなるのは残念だけれど、新しい施設に期待しよう。
ここは何度も生まれ変わり、受け継がれてきた温泉なのだから。

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トロッコの運転手のお父さんに笑顔で迎えられ再びトロッコに乗った。
行きと帰り。
騒音は同じだが、写真師もワタクシも気分は違った。
ガタピシとうるさくて会話できないのが幸いだった。
きょう、湯ノ口で温泉に身体を沈めたことをずっと記憶しておこうと思った。
今回のレポートの記録と共に。

写真/松原 豊

ご注意
建てなおされるのは温泉の施設のみで、バンガローやロッジ、そしてトロッコはそのまま残されます。
新館は3月下旬オープン予定。
詳細は基本情報から瀞流荘のホームページヘどうぞ。